小学校に入学したら、筆箱に鉛筆を揃え、授業に備えて毎日きちんと削って……日本では普通のことですよね?お国が変わればそれもまた変わります。今回は、鉛筆ではなくペンを使うなど、フランスの学校における驚きの文房具事情についてご紹介します。
鉛筆は使わない?
文字を書くのに使うのは、基本的にペン。持ち物リストには、青・赤・緑のペンを持ってくるように記されています。
まだ文字を書き間違えてしまうことも多いであろう小学校入学したての子ども達も、ペンを使うのです。もちろん担任の先生の授業方針によって使用する文房具も変わることがありますし、鉛筆を使うように指導する先生や学校もあります。
ペンを使う場合、書き間違えたときは横線を引いたり、修正液を使います。修正液も買い物リストに入っていることが多いです。
消しゴムが使える鉛筆とは違い、ボールペンは子どもが書いたことをすべて可視化できるので、間違いも含めた子どもの思考のプロセスが記録できます。なので、学校の先生が的確な評価や指導をする上でも利点があるのです。
小学生なのに万年筆⁉
さすがに低学年用の文具の持ち物リストには載っていませんが、小学校高学年や中学校、高校では万年筆がリストに掲載されているのが普通です。
昔は今のようにカートリッジ式ではなく、学校の机にインクつぼがあって、インクつぼに筆先を浸しては書くというスタイルだったようです。中にはインクつぼに手を突っ込んでいたずらしている子どももいたそうです。
フランスの日常で使われている線の強弱がついた筆記体を書くのには、インクタイプの万年筆を使用した方が美しく、かつスムーズに書けるという意見もあります。ただ、学校の先生によっては古くさい万年筆を使うのをやめて、ボールペンを使用させる場合もあるようです。
フランスでのテストや試験は、日本と比べると驚くべきほど記述式の問題が多いです。そして問いに対する答えがたとえ間違っていたとしても、答案用紙上のデザイン性が美しければ、それだけで加点されることもあります。びっくりですよね。
日本では書道の授業で筆で美しい日本語を書く文化があるように、フランスでも美しいフランス語を万年筆を使って書くという文化があるのかもしれません。
大人になって万年筆を使う機会があるかというと、それは人によりけり。電子メールが普及し手紙を書くということも減ってきた時代の流れは日本と同じで、使う人は減ってきています。万年筆は、日本で例えてみると「筆ペン」に似たようなかたちで使用されている印象です。
教科書カバーが必需品
フランスでも日本と同じく、教科書は無料配布されますが、実は新しい教科書が配られることはごくまれ。教科書は学年の終わりに返却しなくてはならず、下の学年の子どもたちが、翌年使い回します。こうした理由から、長く綺麗に使えるように、カバーをつけるのが一般的なのです。
文房具売り場には、必ずといってよいほど、教科書専用のカバーが売られています。
教科書を使い回すので、教科書への書き込みや線引きは基本的にNG。ですが、長年使い回されている教科書には書き込みの痕跡があることもしばしば。
また、先生によっては書き込みが必要な内容に関しては、教科書はあまり使わずにプリントを使用し、プリントに書き込ませることもあるようです。
学用品を買うための補助金⁉ 新学期手当とは?
これは、新学期に子どもが学用品を購入するための手当金で、文房具を買うための費用として使うことがあります。
ただし、全員が対象というわけではありません。一定の年収を超えている家庭は受給資格がなく、受け取れない場合もあります。
〈2018年の新学期手当額〉
6〜10歳:367.73 ユーロ (約47,800円)
11〜14歳:388.02 ユーロ(約50,450円)
15〜18歳:401.46 ユーロ(約52,200円)
(※日本円については、2018年8月28日時点のレート、1ユーロ=約130円にて換算したもの)
最後に
フランスでは一般的に、日本より文房具の価格が高い印象ですが、「新学期手当」など政府の手厚い子育て支援政策で、家庭の負担が減らされています。これも「高い出生率を維持している1つの理由」ともいえるかもしれませんね。