学生時代に文系だったパパママにとっては「物理なんて自分とは縁遠い世界の話」と思っているかもしれませんね。でも日々の食事が物理法則に支えられているとしたら?子どもと一緒に不思議な物理の力を学んでみませんか?
圧力鍋の不思議1~物理学における「熱」とは
暑い・寒い、熱い・冷たいといった「熱」は、物理学では「熱運動」のこと。
熱運動の正体は「分子の運動」です。
この世のすべてを構成する分子は、年中無休で常に動いています。
固体の分子は一定の場所を中心にしてふるえるように動いていますし、液体の分子は水のなかを自由に動いています。
気体の分子は、どこかの壁にぶつかるまでノンストップで飛び続けます。
この無秩序な分子の動きを「熱運動」と呼び、熱運動の激しさを表す物理用語が「熱」なのです。
熱(温度の高さ)は熱運動の量に比例します。
たとえば木炭の場合、加熱前は分子の動きはおとなしいですが、真っ赤に加熱されたときは炭のなかでたくさんの分子が激しく動き回っているわけです。
圧力鍋の不思議2~なぜ調理時間を短縮できるのか
この物理法則から圧力鍋の不思議をひもとくと以下のようになります。
加熱によって圧力鍋の中が高温になると、空気に含まれる分子の運動が激しくなります。
分子運動が激しいと空気が膨張するので、圧力鍋の中の気圧が高くなります。
沸点(水が沸騰する温度)は気圧に比例するので、圧力鍋内部の沸点も上昇します。
気圧の低い富士山の頂上では、90度ほどで水が沸騰してしまうことはよく知られていますよね。
反対に圧力鍋の中は高圧なので、沸点が上昇して110~120度になっています。
だから普通の鍋を使うよりも食材が早く加熱されるわけです。
子どもから「どうしてこのおなべでカレーをつくるの?」と聞かれたら、「これは空気を閉じ込めちゃうお鍋だよ。中の空気は熱くなるとふくらむんだけど、閉じ込めておくとふくらむことが出来なくて、もっと熱くなろうとするから、鍋の中はどんどん熱くなる。だから普通の鍋より早く野菜や肉が煮えるんだよ。」と教えてあげましょう。
「炭火で焼いた魚」がうますぎる2つの理由
理由は2つあります。
1つ目は、「遠火の強火」。
炭火は表面温度が600度にもなるため、食材から離しても十分に火力を保てます。
だから食材を焦がさずに、焼きムラのない仕上がりになるわけです。
2つ目は「遠赤外線」。
ガスと比べると、炭火は大量の遠赤外線を放出します。
遠赤外線は遠いところまで熱が到達するため、食材の中心まですばやく加熱でき、短時間で調理が終わります。
長時間加熱を続けると食材からうま味成分が抜けてしまいますが、炭火を使えばそんなこともありません。
子どもには「炭火は太陽みたいなもの。火が直接あたらなくても見えない光で温めることがでるんだよ」と教えてあげましょう。
冷蔵庫の不思議~なぜ中は冷たく外は温かいの?
冷蔵庫には「蒸発器」が設置されていて、冷却液が蒸発器の中を通ると気化します。
液体が気化するには、ほかのものから熱をもらう必要があります。
蒸発器の中の冷却液が気化する際、冷蔵・冷凍室内の空気から熱を奪うことで冷えるわけです。
蒸発器の中で気化した冷却液は、冷蔵庫の中の「圧縮器」を通過して液体に戻されます。
ただ、そのままだと高温なので、冷蔵庫の外に熱を放出して温度を下げます。
冷蔵庫の側面や背面が温かいのはそのためです。
子どもには「プールのあと体についた水をふかないでいると、なんだか涼しくなるでしょ?あれと同じように、冷蔵庫の中でも水分が蒸発して冷やされているんだよ」と教えてあげましょう。
「物理は人間の生活を支えている」ことを伝えよう
子どもにわかりやすく説明するのはむずかしいかもしれませんが、身の回りに学校で勉強する内容が生かされていることが伝われば、まずは十分ですよ!