2018年の春、公立の小中高から東大に現役合格した長女。教育熱心な子育てをしてきたというよりも、いつの間にか娘の努力で……というのが本音ですが、わが家の子育てや教育を振り返る連載をはじめました。第一回目は、苦手はさておき得意を伸ばした筆者の子育て体験談です。
算数嫌いの娘を何とかしようと大奮闘!でも……
「娘が東大に現役合格した」と聞くと、大抵の方は筆者のことを子どもの教育に熱心な母親なんだろうなと思うかもしれません。でも、実は筆者自身はそれほど教育熱心だったわけでもなく、ずっとフルタイムで働いていて忙しかったので、どちらかといえばほったらかしの育児でした。
早期教育に関しても「そんなに早くから勉強しなくても……」と思っていたし、自宅で英語を学習できる某英語セットも、興味はありましたが高額すぎて手が出せない!
小学生になった頃、たまたま『賢くなるパズル』で有名な宮本哲也氏の『強育パズル』を見つけ、これは面白い、ぜひ娘にやらせたいと買い込みました。ところが、娘は全然のってきません。何とか興味を持たせようと、1日1題ずつと決めて取り組ませたりしましたが、結局、大部分が白紙のまま、積読状態に。
その後、算数で文章問題が出てくるようになると、早速つまずいてしまった娘。小学校低学年で算数嫌いになるのはさすがにマズイと焦った筆者は、あれこれ教材を買ったり、百マス計算を毎日させてみたりと奮闘したのですが、どれもこれも中途半端に終わってしまいました。そして、結局娘は、高校卒業までずっと算数の苦手意識は変わりませんでした。
大好きなお絵かきで養われた、集中力と右脳型暗記力
そんな娘が好きだったのは、ぬり絵です。引っ込み思案で外遊びもあまり好きではなく、地味~にぬり絵をしている娘を見ると、「もっと外で活発に走り回ってほしい!」とじれったくなることもしばしば。
でも、そこはぐっと我慢して、好きなことを思いっきりできるよう、色鉛筆や絵の具などをたくさん揃えたりして環境を整えました。すると娘は、自分から進んでいろんな絵を描くように。「うわあ、上手!すごい!」と褒めるとどんどん描き続けるので、うちではいつでも好きなだけ絵を描けるように大量の裏紙をストックしていました。
そうやってお絵かきに熱中することで、自然と集中力が養われていったようです。
また、中学生になると、授業で習った内容を4コマ漫画で描くようになり、娘なりに楽しみながら歴史などを覚えていました。
さらには絵を描くことで右脳が鍛えられたのか、教科書を音読すると、その部分が写真のように頭に残るようになったそうです。テスト中に「あのページの右上のほうに出てた……」と考えていたら、ぱっと答えが浮かんだなんて話をしてくれたこともありました。
左脳派人間の筆者にはとても信じられませんが、おかげで娘は暗記科目が得意になりました。
英語力を伸ばしてくれた『DORK diaries』
娘は本を読むのも好きだったので、語学系が向いているのかなと思い、5年生になった頃、近所の英語塾に通わせてみました。すると、宿題の英語音読を毎日やるうちに、少しずつ長いストーリーが読めるようになっていきました。
そこで筆者は、もっと娘が喜んで読めるような子ども向けの英語の本がないか探しました。書店の洋書コーナーやインターネットの評判を見て、『DORK diaries』という本が娘にはあっていそうと思ったので購入。中学生女子の日記形式で書かれたこの本は、内容も見た目もカジュアルで、筆者の狙い通りちょうど同じ年頃だった娘はすぐに気にいってくれました。かなりボリュームのある本でしたが、娘は楽しく読み進められたようで、おかげで長文読解が得意になりました。
そして高校受験の際に、この英語力が大いに役立ったのです!
高校受験では英語の勉強にあまり時間をかけずに済んだので、その分、苦手の数学対策に取り組むことができました。大学受験では、数学の点数はあまり伸びませんでしたが、そのマイナス分を英語で埋め合わせ、無事、合格ラインを越えられたのです。
Dork Diaries
子どもの興味を見極めよう
娘の好きなことはお絵かきと英語でしたが、その子によって興味のあるものはそれぞれでしょう。
筆者の周りの話を聞いてみると、宇宙に興味を示したので図鑑を買ってあげたら夢中になり、理科が大得意になったとか、ピアノに熱中することで集中力が身について、長時間勉強できるようになったというお子さまもいました。
では、どうやって子どもの得意なことを見つければいいのでしょうか?
まずは、お子さまをよく観察して、何が好きかを見極めましょう。お子さまが1人でも自然に熱中していることがあれば、そこに「得意」のタネがあるはずです。
また、いろいろなタイプのおもちゃを与えてみて、飽きずに遊ぶものを見つけてみてもいいでしょう。筆者の娘は、数字や図形で遊ぶタイプのおもちゃにはあまり興味を示しませんでしたが、ひらがな積み木は大好きで、よく一人遊びをしていました。
いろいろな本を読み聞かせするのもおすすめです!好きな本ばかりでなく、あまり手を出さないような分野の本を図書館で借りてみると、意外な興味のタネを発見できるかもしれません。親が選ぶとどうしても偏りが出てしまうので、雑誌やインターネットで評価の高い本を片っ端から借りてみるというのも手ですよ。
「すごいね!」の一言で子どもは伸びる!
お子さまの好きなことを見つけられたら、それにハマれるような環境をぜひつくってください。道具を揃えたり本を買ったり、博物館やイベントに連れて行ってもいいでしょう。親がアンテナを伸ばして情報を集め、その子に合った機会や教材を与えれば、子どもはどんどん伸びていきます。
また、小さなことでも「すごい!」「よくできたね~」とすかさず褒めることも大切です。褒められると、子どもも得意になって、ますます頑張るようになる……という好循環が生まれるのです。
得意をその子の強みに!それが自信にもつながる
ちなみに、現在中学生の次女は理数系が大好きです。次女が小さい頃、長女が放り出した『強育パズル』を勝手に解いているのを見て、「あれ?長女の反応と全然違う!」と驚きましたが、理数系の片鱗がその頃から現れていたようです。
そこで、当時話題になっていた立体パズルの『ロンポス』を買ってみたら夢中になって遊び、どんどん上級問題にチャレンジするように。最近は、次女が興味を持ちそうな科学本や数学本を探すのが、筆者の課題でもあり趣味(笑)にもなっています。
こんなふうに、同じ親の子どもでもタイプはまったく違います。親が「これがいい!」と思っても、子どもの興味に合わなければ結局長続きしないということを、二人の子育てを通して痛感しました。
世の中には子育てや子どもの学習に関する情報があふれています。でも、すべての子に当てはまる共通の方法論はありません。
まずはお子さまをよく観察し、何が好きで何が得意なのか、ぜひ探してみてください。それをのばしてあげることは、きっとお子さまの自信や自己肯定感を養うことにもつながっていくでしょう。
東大合格はゴールではないにしろ、正直な気持ちとして、ひとつの達成感のようなものは感じています。小学生の頃、無理に苦手な算数の勉強ばかりさせていたら、この結果にはつながらなかったかもしれません。
「子どもの得意を伸ばす!」という気持ちでお子さまと向き合ってみることを、ぜひおすすめします。