高校には通わず遊び尽くし、大検ルートで京大へ進学した宝槻家の3兄弟をご存知ですか?一見突拍子もなく、数ある育児書のなかでひときわ異色を放つ1冊ですが、実はお父さまの方針による家庭教育のヒントが満載。「正しさ」よりも「楽しさ」で子どもが伸びていく、その秘訣とは?
子どもの知的探求心に火をつける、常識破りの学習法がこの1冊に集約!
著者:宝槻泰伸
出版社:徳間書店
子どもの教育、学校まかせにしていませんか?
「知的探求心」に火を付けることができれば、子どもは自ら学んでいきます。
そしてこれは、家庭でもできることなのです。
痛快で面白い!宝槻家の子育てを楽しく体感しよう!
育児書を読もうすると、どうしても肩に力が入るのは筆者だけでしょうか。学びが多い一方で、自分の至らなさへの反省もあり、さらにハードルの高さに落ち込んでしまう……なんてことも少なくありません。
その点、こちらの本は、あまりに常識ハズレで面白く、同じことは到底やれっこない!という安心感があるほど(笑)。お金で釣ったり、せこい手段がわんさか出てきたり、突然の移住ってどういうことー!?と驚かされたと思えば、自宅に見知らぬイスラエル人やギタリストがいる……。
そして、仰天するようなエピソードの数々が、動機付け、学びの仕組み化、人生観、圧倒的な体感、といった言葉で紐解かれ、笑ったり、驚いたりしながらも、深く心に沁みるのです。読後はなんとも清々しい気持ちに包まれ、子育てを楽しみたい気持ちでいっぱいになりました!
これは、まさに宝槻家の提唱する「楽しさが正解!」という考え方そのもののようです。勉強は「苦痛」で「ガンバル」ことではなく、「楽しくて」「夢中になること」。それをまずは、親自身がこの本で体験できるのも良い点だと思います。
理科と社会と人生の種まきが大事。そのためには……!?
思いつきやタイミングに任せ、漫画やビデオを見まくる、遊びまくる。キャンプで自然と対話をし、さまざまな人の生きざまから学ぶ。そして何より、主要3教科よりも理科と社会、そして人生の種まきを重視していた宝槻家の強みは、「ストーリー活用法」というものでした。
筆者が印象に残ったのは、公式ひとつをとっても、どんな時代背景で生まれ、どんな技術につながったのか、話を展開していくことです。単なる暗記教科にしておくにはもったいないほどの素材が、教科書には詰まっていたのですね!
もちろん、子どもでも興味を持てるようなしかけや段階を踏むため、前のめりになりますが、暗記科目と思いがちな歴史も、ストーリーとして落とし込んでいくことが、どれだけ大事かに気づかされます。
この本には、宝槻家の小学生時代以上の逸話しかありませんが、幼児期こそ時間もたくさんあり、身近な自然や宇宙に想いを馳せるきっかけも多いはず。主要3教科に目が向きがちですが、幼少期こそ森羅万象に触れ、子どもの感性や好奇心を大事にしたいものですね。
アクティブラーニングで、子どもに一生もののスキルを!
宝槻家では、お子さんたちが割り箸鉄砲やロボコン対決で切磋琢磨して遊び、相当なレベルに達します。自転車を自分で作ってしまう子もいれば、家族のキャンプが回を重ねるごとに、レベルアップしていく様子もいきいきと描かれています。
これらはまさに、自ら課題を設定し学ぶ、アクティブラーニングの姿。これからの時代を生き抜く子どもたちに大切なスキルのひとつではないでしょうか。家庭で取り入れるのは、少々難しい気がしますが、実際には子どもが夢中になっていることを、ちょっと大げさに学びの視点で捉えて、成長の機会を与えればよいというのが本から学んだことです。
「夢中になること」や、「試行錯誤すること」を遊びの場でも奨励することで、いつの間にか「学習の進め方を発見している」宝槻家。これは人生にも仕事にも応用できる、本当に大事なスキルですね。
子どもの不登校についても考えるきっかけに
実は、筆者の息子が幼稚園に行きたくないと言って1週間以上休んだとき、わが家は宝槻家のエピソードに救われました。
「休む」を代表とする「みんながしていることをしない」という選択は、親にとってはイヤなもの。なんとか正規ルートに乗るように、理由を聞いて、促すという考えしか、以前の筆者にはありませんでした。
ですが、この本を読んで、そもそも幼稚園とは何のためにある?と冷静に考えたり、行かないならば「行った1日より有意義な1日にすればよい」と思ったりできるようになりました。
宝槻家には高校に行かない息子さんが自宅に2人もいたと思えば、幼稚園をたった数日休むだけのこと……。そんな気持ちの余裕まで出てきたものです(笑)。
もちろん、不登校を奨励する本ではありませんが、我が子も将来的に何らかの理由で学校に行かないことはあるかもしれません。そんなことを考えるきっかけや、行かない選択肢をした際に参考になる情報も散りばめてありました。
もっと宝槻家のHow to を知りたければこの1冊
著者:宝槻泰伸《探究学舎代表》
出版社:PHP研究所
宝槻家の家庭教育は、博学で強烈すぎるお父様なしには成り立ちません。……しかし、こんな風に子どもとの関わり方をしたい!学びの探求をしたい!と思われた方は、具体的なツールがたくさん紹介されている、こちらの本をぜひ手に取ってみてください。
偉人の言葉や書籍紹介(漫画や映画も多数あり)が非常に充実していて、子どもの伸ばし方や、書籍のジャンル選定の参考になった1冊でした。
内容は小学校高学年~という印象ですが、背景や概要説明が載っていて、パパママが今からこっそり(?)予習するのにもってこいの1冊です!また、最後にはレゴや工作、ジグソーパズルといった小さなお子さんでも楽しめる教材を盛り込んであり、Chiik! 読者世代にも役立ちそうな内容ですよ。
家庭教育には無限の可能性がある!親子で「楽しい」ことからはじめよう!
お稽古事にワークショップ、塾に通信教育……。現代は、学びのツールが多岐にわたり、情報収集だけでも翻弄されるような感が否めません。
そんななか、まずはお子さまの興味のあることや、親子で楽しめる身近な手段で、思い切り心を躍らせてみませんか?「楽しいは正義!」そんな学びの本質に気づけたことが、この本からの何よりの収穫でした。
筆者は恥ずかしながら、理社系の科目が大変苦手です……。でも、子どもの興味関心と一緒に、もう一度、今度は「楽しく」学んで、自身の教養レベルも引き上げられたらと願っています。