国際化が進み、インターネットなどでも国外からの情報に触れやすくなった現代。将来は海外の大学に留学したい、海外で働きたい!という夢を持つ子どもたちが増えてきました。
今回はイギリスの大学受験と、その受験に必要な通称Aレベルと呼ばれる学力試験についてご説明します。
このAレベルは、イギリスに留学するときだけ必要になるものでもなく、実は海外のさまざま大学入学において学力の証明として認められる試験です。また、その試験結果は国家資格としても認められるほどです。通常、日本の高校を卒業しただけでは、このAレベルを取得することはできませんが、日本からでも履修・受験可能な方法があります。
将来、世界を視野に入れて進路を考えるのであれば、知っておきたい情報と言えるでしょう。
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イギリスの教育システムの特徴とは
イギリスの教育システムの基本は以下の通りです。
(ただし、私立は学校により異なる場合があります。)
初等教育
・4歳になった9月からYear R(レセプションと呼ばれる準備学年)が始まります。
・翌年からのYear 1(5歳)からYear 6 (10歳~11歳)までが小学校になります。
中等教育
・Year 7(11歳~12歳)から Year 11までセカンダリースクール(日本の中学校と高校の年齢の一部)に通います。
・進学してセカンダリースクールに入学するわけですが、学年の数え方は小学校からの継続になり、セカンダリースクールの1年目でもYear 7 (7年生)という呼び方をします。
イギリスの義務教育はこのYear 1からYear 11まで(5歳から16歳まで)の11年間です。
全国統一テスト
イギリスの教育において、全国統一テストというものが節目で行われます。
SATs:小学校のYear 2とYear 6でSATsという学力達成度を見るテストがあります。これは、近年どちらかといえば個人の成績として影響するよりも、学校レベルの判定として使われることが増えています。
GCSE:Year 10(14歳)でGCSEと呼ばれる全国統一テストのための勉強が始まります。テストに向けての授業は2年間で、試験はYear 11の終わり(16歳)で行われます。次の進学(Aレベルに進めるかどうか)にも影響する試験ですし、学生がアルバイトを探すときなどにも、履歴書にこの成績を書きます。高等教育前の学力を証明する大切なテストです。
GCE-A level:通称Aレベルと呼ばれる試験。大学出願・入学に必要なテストです。詳しくは後述します。
高等教育
義務教育終了後は、就職をする・または就職のための専門的な学校に行く、大学を目指した進路へ進むという選択をします。大学進学への道を選んだ場合は、Aレベル取得のため、まずSix formコースへ進学、そしてその先の大学という高等教育へ進みます。
イギリスでは大学のための入学試験はない?
イギリスで大学を目指すための進路
大学進学を目指すコースとしては、2年間のGCE-Aレベル(General Certificate of Education, Advanced Level、通称Aレベル)取得コースが一般的です。
セカンダリースクール修了後、Six formという進学用のコース(セカンダリースクールの延長として同学校内に用意されている場合がある)または、Sixth Form Collegeと呼ばれる専門のカレッジへの進学を選びます。ここで、進学したい大学に必要な科目を選択し、2年間専門知識を勉強したのちに、大学で専攻する専門分野の基礎知識に関するAレベル(GCE-Aレベル)と呼ばれる統一試験を受験します。
このAレベルの試験結果が学力証明となり、大学出願の条件となります。大学ごとの入学試験や日本のようなセンター試験はありません。イギリスの大学へは、一度に5つのコースまで出願することができます。(医学部、歯学部、獣医学部等は異なる。)
イギリスの大学出願・受験
Aレベルには最高評価のA*からA、B、C~E(最低限必要)それ以下は落第とされるアルファベット式のスコアがつけられます。出願したい大学により、必要なスコアが決まっており、たとえばイギリスの大学の名門であるオックスフォード大学では、ビジネス系の学部でA*AA、エンジニア系の学部ではA*A*Aのスコアが必要です。
Aレベルは、日本ではまだあまり聞きなれない試験ですが、国際バカロレア(IB)と同じように国際的に認められている資格で、英国のみならず世界中の多くの大学が入学資格として採用しています。
イギリスの大学は3年間
イギリスの大学は、基本、日本より1年短い3年間*です。その理由は日本の大学のように1年目で一般教養課程を学ぶシステムになっておらず、すぐに専門的な勉強が始まるからです。Aレベルのコースで学ぶ間に一般教養課程を修了しておき、大学では即専門的な勉学に集中するというのは、さすが合理的なイギリスと言えるのではないでしょうか。
*建築学や医学など専門資格に結びつくコースでは、5年以上修了までにかかるものもあります。
イギリスには現在160校以上の大学があり、これらの大学は大きく2種類に分けることができます。その2種類とはアカデミック校とキャリア校で、アカデミック校は学術研究を中心としたカリキュラムを組んでおり、キャリア校は専門学校的な職業に直結する内容を学びます。
イギリスの教育は、そのレベルの高さでも定評があり、また日本よりもさらに数多くのカリキュラムが選べるため、個人の得意な分野や興味のある分野などを深く掘り下げて学ぶ事ができるのが特徴です。
イギリスは美しい街並みや景色など、長い歴史の中で培われてきたイギリスの魅力と、多くの留学生や移民が混ざり合う国際的な国としての魅力を持ち合わせています。イギリスで学ぶ事は、学業はもちろんのこと、日常生活の中からも国際的に広い視野を育てるのに必ず役立つでしょう。
日本からイギリスの大学に進学する方法
上記でご説明したように、大学1年生で一般教養課程がない事と、日本の高校卒業時点ではその内容を修了していないことから、1年間のギャップができてしまい、日本の高校卒業後そのままイギリスの大学へ進学することができません。
そのため、日本からイギリスの大学へ進学するには、
・日本国内からAレベルを学び、受験。そのスコアを使って出願する。
・高校からイギリスに留学して、現地でAレベルを取得する。
・まず日本の大学に入り、一般教養課程を修了してから英国の大学に出願する。
などの方法があります。
日本国内にもケンブリッジから認定されている学校が10校以上あり(※2024年1月現在20校)、Aレベルを導入しています。最近では、日本にいながらオンラインでAレベルを学ぶコースなども増えてきました。国際化の時代ですから、さまざまな可能性が開かれるのは嬉しい事ですね。
(参考URL→★)
ただし、どの方法も学力はもちろんのこと、現地での授業についていける英語力が必須です。留学を視野に入れた進路をえらぶのであれば、情報収集・学習ともに早めのスタートがおすすめです。