世界中でパンデミックとなったコロナもようやく過去のものという認識が強くなり、また海外を自由に行き来できるようになってきました。旅行で訪れる海外も非日常を味わえる素晴らしい経験ですが、ぜひ未来を担う子どもたちには海外留学という道を選び、学力だけではなく文化的な視野を広げてほしい親御さんも多いのではないでしょうか?
今回はイギリス在住の筆者が子どもの留学先としてイギリスをおすすめする理由をイギリスの教育システムなどを交えながらご紹介します。
【ハウスシステムとは】イギリス学校教育の「縦割」グループ制度!
子どもには海外留学を!
昔は中学校に入ってから始まっていた英語の授業ですが、今では小学校の正式教科としても英語が導入されています。加速するグローバル化に伴い、国内にとどまらず海外に出て活躍したい!英語を第二言語として習得したい!という需要は年々増えていると感じます。
日本国内での学習でも十分に知識や学力をつけることはできますが、実際に海外で見たこと、聞いたこと、肌で感じる経験に勝るものはありませんよね。様々なSNSへのアクセスが子どもでもできる近年、親御さんだけでなく子どもたち本人の海外への興味関心も増えているのも事実です。
「英語圏の海外=アメリカ」という意識がまだまだ強い日本ですが、今回はイギリス在住の筆者から見てぜひおすすめ!日本から見て地球の裏側に位置する国イギリスでの海外留学を考えるきっかけになるような情報をお届けします。
そもそもイギリスの定義とは?
「イギリス」と日本で呼ばれている国ですがその正式名称は「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」で、実はスコットランド、イングランド、ウェールズ、北アイルランドの4つの国から成り立っています。北部のスコットランド、中部から南部のイングランド、西部のウェールズ、北アイルランドの4つを合わせてユナイテッドキングダム、俗にいうUKというわけです。見た目は一つの島国のようですが、それぞれ首都や国旗、違った文化があります。
イングランド
4つの国を統括し国の中心にあるのがイングランド。首都はご存じの通りロンドンです。イギリスといわれて思い浮かべるバッキンガム宮殿やビックベン、ロンドンアイなどがあるのがイングランドで48の州から成り立っており、北部にあるリバプールはビートルズの出身地であったり、南部にはタイタニック号が出港したサウサンプトンという町があります。イングランド出身の人やもののことをイングリッシュと呼びます。
スコットランド
国土の北部3分の一にあるのがスコットランド。首都はエディンバラでスコッチウイスキーや、バグパイプ、タータンやキルトなどが有名です。ゴルフ発祥の地としても知られています。ハリーポッターでハグリッド役を演じたロビー・コルトレーンや初代ジェイムスボンドのショーン・コネリーもスコットランド出身です。スコットランド出身の人や発祥のものはスコティッシュと呼ばれます。
ウェールズ
ロンドンから西へ約200kmのところに位置するウェールズ。住む人はウェルシュと呼ばれていて、伝統的な食べ物にはウェルシュケーキというスパイスのきいたカシスの入ったパンケーキのようなお菓子が有名です。南部にあるカーディフが首都で、北部にはスノードンと呼ばれる山があり、湖や岩場を通り抜けてたどり着くスノードンは本当に美しいですよ。人よりも羊が多いともいわれるウェールズはとてものどかで、緑と自然が広がる景色が印象的です。
北アイルランド
イギリス本土の西側にある島、アイルランド。その北東の一部が北アイルランドです。同じアイルランドでも長い歴史の中で南北に分かれ、内戦などを繰り返してきた結果、北部だけがイングランドと共に連合国として残ることになりました。首都はベルファストでアイリッシュダンスやアルスター・フライと呼ばれる朝食が有名です。
日本ではイギリスとひとくくりにされていたり、イギリスのスコットランドと言われたりしていますが、実は4つの違った国から成り立っていることを実感じていただけたでしょうか。
連合国としてはひとつですが実際には祝日や医療制度、政治などそれぞれ違っています。言葉も、イングランド内だけでも北部と南部でのアクセントに違いがありますし、スコットランドに行けばスコティッシュアクセント、ウェールズではウェールズ語という違う言語があり、同じ公用語の英語でも全く違ったように聞こえるんですよ(笑)。
日本では一つの国として捉えられがちですが、例えば自分はイングリッシュ(イングランド人)なのかスコティッシュ(スコットランド人)なのかなどはっきりと分けるようにそれぞれ自分の国に誇りを持っていて、別の国として認識されています。
イギリスの教育システムの特徴
さて、少しだけイギリスについて詳しくなったところで、教育システムについてご説明します。学校が始まる年齢や年度、呼び方なども日本とは大きく違っているイギリスのシステム。筆者も自身の子どもたちが学校に通い始めるまでは全くの無知で、今でも周りの先輩ママ達に教えてもらいながら子育てをしています。イギリスにも公立と私立の学校がありますが、今回は公立の一般的な学校について説明しますね。
年齢別ステージ
プレスクールと呼ばれる幼稚園や保育園の後、4歳を迎えた次の9月に小学校に行き始めます。最初の一年はYearR、レセプションイヤーと呼ばれ、学校生活に慣れながら少しづつ数字やアルファベットに慣れ親しんでいくようなカリキュラムが組まれます。日本で言うなれば0年生というような小学校を始める準備の学年といった感じです。そして二年目のYear1から本格的に読み書きや簡単な計算などを始めていきます。YearRからYear6までが日本でいう小学校、イギリスではプライマリーと呼ばれるステージです。ちなみに日本でよく聞くエレメンタリースクールも小学校という意味ですが違いはアメリカ英語かイギリス英語かという点です。
プライマリーと呼ばれる小学校が修了すると、今度はセカンダリーと呼ばれる学校へ入学します。セカンダリーまでがイギリスの義務教育です。入学の際に試験などは必要ありません。プライマリーの入学の時もそうですが、学校が始まる前の年に住むエリアの学区内の希望校を第一希望~第三希望(住むエリアによって変わります)まで決めて申請します。そこから振り分けられた学校へ入学するという流れです。
16歳でセカンダリーを修了した後は、いくつかの選択肢があります。その一つがSix Formと呼ばれるステージです。これは大学進学を決めた子どもたちが通過するもので、期間は2年間。セカンダリーに6フォームのコースがある学校もあるのでその場合はそのまま進級、ない場合は6フォームカレッジという学校へ行きます。イギリスの大学には入試試験はなく、それぞれの大学が入学に必要なAレベルという試験のスコアを表記しているので、そのスコア取得を目指して学習します。自分の行きたい大学入学に向けて学力を上げる2年間となります。
大学へは行かない選択したときのもう一つの選択肢はこのファーザーエデュケーションカレッジです。日本でいう専門学校のようなもので、職業訓練を通じて資格や専門的な知識を身につけます。カレッジではNVQと呼ばれる全国職業資格を取得することができ、それによって就職に有利になったりより高い報酬が得られます。
イギリスの義務教育は5歳から16歳までで、プライマリーとセカンダリーの2つの学校に行くことが決められています。そのあとは大学に進学をするのかしないのかで選択肢が分かれる流れです。セカンダリー修了後、大学やカレッジにもいかない場合は、見習いや研修を開始する、パートタイムでの教育を受ける、または週20時間以上の労働やボランティアが義務付けられています。
イギリスで大学進学までに受験する試験
イギリスでは5歳から始まる学校ですが、大学進学をするまでにいくつかの試験を受けることになります。いずれの試験も、合格、不合格を決めるものではなく自分の学力がどのぐらいなのかをスコアで明確にするものです。
SATs
→プライマリーのYear2とYear6の時に受ける全国統一テストです。教科は、算数と英語の読み書き、スペリングで45分ほどのテストを受けます。個人の学力をはかる目的もありますが、テストの結果が学校の教育レベルの評価にもつながります。点数は80から120の間で評価され100以上が、政府の定める標準レベルとなっています。個人の学力を測る目的と、学校の教育レベルを図る目的もあります。
GCSE
→Year10から11の時に勉強を進め、Year11の終わりに受けるテストです。セカンダリーの最後の二年間はこのGCSEに向けた勉強を進めていきます。教科は英語、数学、サイエンス(生物、化学、物理)は必須科目で、そのほかに言語学や歴史、美術や市民権など約40以上もある教科の中から自分の好き/得意な科目を受けます。合計して9~10科目受けるのが平均的です。学校によって必須科目や推奨している科目があることもあり、通う学校によって様々です。
このGCSEのスコアは大学進学を考えている場合に受けるAレベルに進めるかどうかや、仕事を探す際に履歴書にも書く成績なのでとても大事なテストです。
GCE-A
→通称Aレベルと呼ばれるこのテストは大学入学に必要な試験です。最低3つの科目のスコアが必要で、自分の進みたい大学や学部に必要な科目を自由に組み合わせて受験します。近年日本でも少しずつ浸透しつつあるAレベルはイギリスだけではなく世界の大学や就職先で学力を証明できる国際資格です。評価はA*からEまでの6段階で、大学や学部により必要なスコア、条件が変わってきます。
日本の高校を卒業してから海外の大学に入学するとなると、まずは英語力を付けることやファンデーションコースの受講が必須となります。ですが、高校生の時にAレベルを取得しておけば、最短で海外の大学への入学が可能です。
日本よりも早い段階から好きな分野、教科を専門的に学習
イギリスで子育てをしていると、日本の教育システムよりも早い段階で専門的な教科を取り入れた授業が行われていて、プライマリーの段階で子ども一人一人の興味や得意な教科を明確にしている気がします。
日本では(筆者の時代の記憶)どの教科も平均的に成績を上げることを重要視していて、苦手な教科があると通信表にはネガティブな事が書かれていたり、得意な教科でもクラス内の他の子どもたちとの兼ね合いで評価が決まったりといったことがありました。
筆者の子どもたちの学校で保護者面談を行うと、ネガティブな事はまず言われません(笑)どのぐらい授業についていけているかもちろん話し合いますが、その他は、どの分野が得意で秀でているかを評価してくれます。得意な教科や興味のあることにはできる限り本人にチャレンジさせてくれて、いいところを伸ばすというスタンスが感じられます。
時間割のないイギリスの小学校ですが、あらゆるジャンルの学習を少しずつ簡単なものから始めて、子どもの興味関心を試しているようなプログラムで、子ども自身も、自分が何が好きなのかが早い段階で認識できているように思います。
セカンダリーで受けるGCSEの試験でも、16歳の時点で全員が同じ教科を受験するのではなく必須科目と自分の得意な教科を選び、専門的な学習を進めていく事は将来的にとても有利だと思います。
イギリスに留学するおすすめ推しポイント3つ
日本とは全く異った教育プログラムや年齢別のステージがあるイギリス。もし大学留学でイギリスに住んだらカルチャーショックの連続になることは間違いありません(笑)それでも私が留学先としてイギリスをおすすめする理由を3つに分けて説明します。
1、多国籍な環境
イギリスは世界的に見ても多国籍な国です。そもそも4つの国が一つとなっている時点で違った文化や言葉が行きかっています。その他にも長い歴史の中で移民を受け入れてきたことで、多国籍であること自体がイギリスの文化ともいえます。
バックグランドの違う人に囲まれるのが当たり前、見た目も言葉も違っていて当たり前。それをお互いに受け入れながら生活しています。
イタリア人のお母さんとインド人のお父さんを持つ友達と一緒に英語で話しながら中国のお正月を祝うなんて言うこともイギリスではごく普通のことです。
違っていて当たり前、という環境で学生生活を送ることは自分自身とは何かを見つめるとてもいい機会になりますし視野が広がります。
2、比較的安全な治安
日本ほど治安の良い国はほかにないと思いますが、イギリスもほかのヨーロッパ諸国や銃が法的に許されるアメリカなどに比べると治安がいいといえます。もちろんどこにでも悪い人はいますし、近づかないほうがいいエリアなどはありますので、注意は必要です。
それでも、イギリスに7年住んでいる筆者ですがイギリスで身の危険を感じたことは一度もありません。差別的な態度や攻撃を受けたこともないです。イギリス人は個人をとても尊重する国民性で、相手に自分の価値観や意見を押し付けたり、否定するような人は少ないように感じます。もちろん中には人種差別や白人主義の人もいますが公共の場でそれを主張するようなことはあまり起きない印象があります。
3、ヨーロッパ諸国へのアクセス面で有利
イギリスもまた日本と同じ島国ですが、日本と大きく違う点は、海外ヨーロッパ諸国へ簡単に行けるところです。スペインやポルトガル、ギリシャなどへは飛行機で2,3時間で、フランスへはロンドンからユーロスターという電車で(!)行けてしまいます。
イギリスを拠点として言葉も文化も違う国々に簡単に行けてしまうのは大きな利点だと思います。パリのルーブル美術館やスペインのサグラダファミリアを週末に見て帰ってこれるなんて素敵だと思いませんか?大学生で時間にまだ自由が利くうちにいろんな国に行けるのもイギリスに留学するメリットの一つかと思います。
ぜひ子どもの海外留学先にはイギリスを!
いかがでしょうか?そもそもイギリスとは?というところから、日本にはまだあまり馴染みのないイギリスの教育システムや試験など、簡単にご説明しました。少しでもイギリスを身近に感じていただければと思います。
世界的にみてもトップレベルの大学がたくさんあるイギリスで、多種多様な文化に囲まれながら大学生活を送るなんて、筆者からしたら夢のようです!(笑)若いからこそできること、感じること、吸収できることがたくさんありますよね。今回のこの記事が海外での大学留学を考える子どもたちや親御さんにとって少しの後押し、海外留学を考えるきっかけとなれば幸いです!