人間にとって、コントロールできないことのひとつに『天気』があります。晴れの日も雨の日もあるからこそ、作物がちゃんと育って、私たちの食卓に食べ物を並べることができるわけですから、どんな天気にも感謝をしたいところですね。
ところで、イギリスの天気といえばどんなイメージがありますか?「霧のロンドン」という言葉や、「イギリスはいつも曇り空」などのうわさを聞いたことがあるかもしれませんが、実際のところはどうなのでしょう?
イギリスは今日も雨だった~!?
長崎は今日も雨だった(歌:前川清/内山田洋・クールファイブ)という懐メロがありますが、長崎出身の筆者から言わせると、イギリスの方が断然雨が多い!と感じます。とはいえ、これは『感じる』というだけであって、実際には長崎もイギリスも特に雨が多い場所ではなく、ロンドンの降水量に関して言えば、東京よりずっと少ないという調査結果が出ています。
では、どうして「イギリスは雨が多い」と言われるのかというと、秋から冬にかけての長い間、空がどんよりと曇っている日が多く、雨でなくとも「天気が悪い」という印象を持ちやすい日が続くからではないかと思います。また、季節に関係なく『雨の降りかた』が、「誰かが空で雨スイッチをOn/Offと切り替えているんじゃないか?」と思うような、ザァッと勢いよく降ってしばらくすると止むを繰り返す『短時間&繰り返し』パターンか、スプレーボトルで吹きかけているような霧雨や小雨が数時間~一日中降り続く『少量継続』パターンが多いのです。
このような降りかたが1週間~2週間続いたりするので、年間の降水量は東京より少ないものの、天気予報アプリ上ではずっと雨予報を見続けるということになり、「雨が多いなぁ」と感じるのではないかと感じています。
公園や歩道の脇、家の庭や住宅地の間を抜ける道など、至る所に芝生が生えているイギリスでは、雨が続いた期間の後、しばらく芝生がぬかるんでいます。「今日は晴れているから」と気を緩めて芝生の上を歩くと、ズルッと滑ってしまうことも多々…。子どもが生まれる前や、犬を飼う前はアスファルトの歩道の上を歩くだけの生活がほとんどだったので、革靴でおしゃれを楽しんでいたこともありましたが、子どもや犬と歩くようになってからは、長靴の安心感と楽さに勝てず、日常履きとなりつつあります…。
イギリスの学校に傘立ては無い!
イギリスに初めて来たときに大変驚いた光景のひとつに、『雨の日、傘をささない人がとても多い』というものがあります。その後何年もイギリスに住んでいますが、いまだに日本の傘人口ほど、傘を使っている人は多くありません。また、傘を使わない人は若い人や学生、男性の方が多い印象があります。
若い学生さんに聞いたところ「傘をそもそも持っていない」と答えた学生が多く、「どうして?」と聞いたところ、「だってコートがあるから。」という答えでした。コートと言っても、レインコートではなく、普通の秋冬に着るコートなので、当然コートはびしょびしょなのですが、気にならないのかな…とはたから見ている方が心配になる濡れようです。また、学校やふつうのお店に傘立てはありません。
イギリス人が傘をささない理由は諸説あるようですが、「降ったりやんだりと天気がコロコロ変わるから」というものや、「風が強くて雨も横方向に降るので傘で防ぐことができないし、傘がすぐ壊れてしまう」というもの、「霧雨が多いのでコートの方が便利」などの理由をよく聞きます。
「イギリス人 傘をささない」というキーワードで検索してみると、たくさんの情報が見つかります。イギリスの意外な面を知ることができて興味深いかもしれませんよ!?
イギリスの傘と言えば…
傘の使用率が低いイギリスですが、年々少しずつ、イギリスでの傘の使用率が上がってきていると言われています。それでも、まだまだコート派の人が多いのには、先ほど述べた雨の降りかた的な理由の他にも、歴史的な理由があると言われています。
イギリスで傘を使うのは、特に女性のほうが割合として多いのですが、これは昔、雨や風をしのぐ方法として外套が一般的で、傘は女性が使う日傘としての用途だったものが18世紀に雨傘として改良され使われるようになりました。そのような背景から、『傘=女性の持つもの』というイメージが残っているのだそうです。
ところで『イギリス&傘』といえば、故・エリザベス女王は、Fulton Umbrellasというブランドの傘をご愛用でした。市場に出回っている通常の傘よりもコロンと丸みを帯びたドーム形で、縁の部分以外は透明なのが特徴です。ご公務の際、透明な傘ならお顔が隠れることがありません。通常のビニール傘よりも強いファイバーグラスのフレーム素材で風にも強く作られています。さすが、王室御用達の称号が与えられた傘です。
「エリザベス女王 傘」というキーワードで検索すると、お洋服・帽子・傘の色がコーディネートされた写真がいくつも出てきます。
傘に関することで、もうひとつ日本と違うことの一つに、日常でゴルフ用の傘を使っている人がいるということに驚きました。通常の2倍くらいの幅がある傘なので、子どもと一緒に1本の傘に入るのも余裕です。とはいえ、なかなか幅をとるので、街中で使うというよりは、学校の送り迎えのときなどに見かける方が多いです。
春~夏は最高の季節
ここまで、イギリスの雨の話を書いてきましたので、なんだかジメジメした雰囲気になってしまったかもしれませんね。しかし、決して一年間ずっとそういう雰囲気なわけではありませんよ。
イギリスは、東京より乾燥しているので洗濯物が乾きやすいですし、雨がサッと降ってやんだ後に晴れ間がさしたり、天気雨が降ることも多くて、頻繁に虹が現れます。筆者もイギリスに来てから、日本に住んでいたとき以上に虹を見かける機会が増えました。都市部以外では、イギリスは高い建物が少なく、山もほぼないので、大きな虹を見ることができます。ダブルレインボーも良く出ますよ。
また、春~夏は最高の季節です。暑すぎず、自然豊かで美しく、曇りの日も秋~冬より少ないので、青空と緑の芝生のコントラストがキラキラと目に映り、見ているだけで癒されます。
イギリス旅行で天気のいい日を狙うというのは運まかせ…のような部分もありますが、雨の日を通して文化の違いを感じるのも、意外と面白いかもしれませんね。
■いしこがわ理恵さんのイギリス漫画レポートの記事はこちら↓↓↓