実はフランスにもあるお受験。バカロレア(高校卒業資格)に合格すれば、誰でも希望の大学に入ることができるフランスですが、グランゼコールだけは別格です。グランゼコールに入学するためには、日本を上回る熾烈な受験戦争を突破しなくてはならないのです。国や企業の幹部候補生を養成するグランゼコールへの道を現地からお伝えします!
大学じゃない?グランゼコールとは…
フランスではこのグランゼコールが、大学よりも格上だとされていて、エリートだけが入ることができると言われています。大学のように大人数の学生に対して一人の先生が講義を行うような形ではなく、少数精鋭の教育が行われています。
エリート官僚養成学校である「フランス国立行政学院(通称ENA)」は数あるグランゼコールの中でも最高峰です。政治家の登竜門として知られ、この学校の卒業者はフランスの高等公務職に就く権利を与えられます。グランゼコールの1つである、パリ政治学院(Sciences-Po)を卒業した後に、この学校に行くというのが、政治家のエリート街道だと言われています。
シラク元大統領、オーランド現大統領の他にも、フランスの政治家の大多数はこの学校の卒業生なんですね。
専門分野別に選ぶ、グランゼコール
例えば名門、高等師範学校(エコール・ノルマル・シュペリウール)はグランゼコールや大学の教員・研究者を養成する機関で、世界屈指のエリート教育機関として有名です。在学期間中、なんと国家公務員インターンとして、毎月約1200€(14万5000円程度)のお給料がもらえます。
理系では、工学・技術系のエリート養成のための中央学校(エコール・サントラル)、理工学のエコール・ポリテクニークなどが代表的。
商業系では、HEC経営大学院、ESSECビジネススクール、政治系ではパリ政治学院(Sciences-Po)、フランス国立行政学院、国立司法学院などが代表的です。
日本のように、大学を偏差値で選び、大学在学中に職業を選ぶのではなく、何の仕事をするために何を学びたいかを高校卒業の時点で明確にしなくてはいけません。
グランゼコールに入るには?2年間の準備クラス
バカロレアに合格して、高校を卒業した後、さらに2年間のグランゼコール準備クラスに通わなければなりません。そもそも準備クラスにもいろいろなレベルがあり、名門の準備クラスに入るのは難しいうえに、2年目への進級も難関、さらにグランゼコール入学となるとその門は極端に狭くなります。
グランゼコール準備クラスの学生は「モグラ(un taupin / une taupine)」と呼ばれるほど、太陽を見ることもなく勉学に没頭しなくてはならないと言われています。
往来、グランゼコールに入学する学生は名家の子女や、経済力のある家庭の子どもに限られていたことが批判され、最近では、準備クラスを経て入学する伝統的なエリート・コースだけでなく、大学で学んだ後に再入学したり、修士号から編入したり、以前より幅広い入学方法もあるようです。
大難関!グランゼコールの選抜試験
試験は、専門分野に関して論文形式で答える筆記と面接によって行われます。筆記の1つの分野の試験は6時間程度、外国語の試験も4時間程度と長期戦で、1週間に渡って試験が続きます。
このあと、二次試験として面接が行われます。制限時間内に論文を読むように指示され、その論文について解説や討論を行うのが、グランゼコールの面接試験です。
こんなに違う!グランゼコール卒業生の就職
例えば2015年時点で、大学の修士課程を卒業した学生は62%しか就職先を見つけていません。技術系、もしくは商業系のグランゼコール卒業者の約80%が卒業後すぐに正社員のポストを見つけています。企業に就職する場合は、グランゼコール出身というだけで、幹部候補生になるため、初任給も違います。
狭き門!グランゼコールへの道
フランスの大学は無料で、選抜試験もないため、全ての学生に門が開かれています。そのため、大学進学を選んだ学生は、どの大学へ行くかではなく、何を学ぶかをはっきり自覚しておかないと、卒業後の就職が難しくなってしまいます。
その点、グランゼコールを卒業すれば、その分野の幹部候補生としてスタートラインに立てる可能性が高くなります。幹部候補生として採用されると、給料・労働条件(幹部契約の場合、週35時間労働法は適用されない)など、契約内容も違ってきます。
ちなみに、フランスでホワイトカラーの仕事を得るためには、最低でもBAC+5(バカロレア取得後、5年の学歴、つまり修士課程修了)の学歴がないと難しいと言えます。
筆者の友人でグランゼコールの修士課程を卒業した人は、大学の修士修了後就職した人の約2倍の初任給をもらっています。そしてそのお給料の差は、年々広がっていくわけです。
日本では想像できませんよね?
とはいえ、出世路線に始めから乗っていないグランゼコール以外の人は、フランスの手厚い社会保障や労働法の中で、必要以上は働かない、ゆとりのある生活ができている印象があります。
いろんな点でフランスは実は日本よりもシビアな学歴社会だと言えるでしょう。