「子育てにふさわしい環境」というと、緑豊かな土地で自然に触れあえる場所をイメージする方が多いようです。では都会は、子育てには不向きなのでしょうか?九州の田舎町で育ち、現在は東京で子育てをしている筆者が、都会ならではの子育てのメリットをご紹介します。
学校の選択肢が多い
小学校も徒歩で通える範囲には、公立校と私立校が1校ずつあるだけ。その公立小学校も、低学年の足では通うのに30分以上かかる場所にありました。
東京で子育てを始めて、学校の選択肢の多さに驚きました。未就学児を通わせる場所ひとつとっても、保育園以外でも公立幼稚園、私立幼稚園、幼保一体認定こども園、インターナショナルスクールと多彩です。小学校、高校、専門学校、大学も、多様なレベルと種類の学校がそろっています。
子どもの能力や希望に合った学校を選択できることはもちろん、もし学校が合わないと感じたら他を選べるというのも、都会で子育てをする上での重要なメリットだと思います。
習い事が豊富
筆者が子どものころ住んでいた田舎町で、定番の習い事といえばピアノと水泳でした。でも、それさえ大手の教室がひとつずつあるだけで、「より自分と合う先生や教室を見つける」のは難しかったのです。
また筆者は、当時としては珍しく子ども向けのダンス教室に通っていましたが、住んでいた田舎街には、教えてくれる先生がそもそも少なく、隣県まで遠征してレッスンを受けることもたびたびありました。
学習塾もありましたが、通っている人数が少ないためレベル分けが十分にできず、成績の良い子は、やはり隣県の大型校へ通わざるを得ないという状況でした。
都会の場合、メジャーな習い事であれば教室は無数にあります。学習塾も、目的に合わせて細かく選べます。
一般的に、競技人口が多い場所ほどそのレベルも上がります。田舎では、そもそも住んでいる人数が少ないため、実力に応じた指導を受けられない可能性も高くなってしまうのです。
芸術活動・イベントが盛ん
都会であれば、トップアーティストのショーを気軽に観に行けます。一流のアスリートやプロから技術を学べるワークショップも盛んですし、あちこちでイベントも開催されています。博物館・美術館・科学館も数多くあり、海外から作品を取り寄せて企画展が行われることもあります。
本物に触れられる機会が圧倒的に多いというのは、都会ならではの大きな利点だといえるでしょう。
医療が充実している
子どもは昼夜を問わず、しょっちゅう体調を崩すものです。都会であれば、街が比較的コンパクトにまとまっていますから、通える範囲に小児科や耳鼻科などを探すことは、それほど難しくないでしょう。
田舎の場合は土地が広い分、医療施設も点在していることが多いものです。住む場所によっては、最も近い小児科まで車で1時間程度かかることもあります。
また、救急や夜間診療、特別なケアが必要な医療行為が受けられる場所も、田舎では家の近くにはないことがほとんどです。
筆者は夫の仕事の都合でインドに滞在していたことがあり、日本ではあまり一般的ではない予防接種をいくつか打たなければなりませんでした。九州の実家の近くで予防接種をしようと考えていたのですが、東京であればクリニックで対応してもらえる予防接種も、田舎では大学病院まで足を運ばなければならず、手間がかかると嘆いたことがあります。
いざというときに頼れる医療が身近にあるというのは、子育て中の世帯にとっては大きな安心感につながるのではないでしょうか。
都会と田舎の子育て、それぞれの良さを理解しよう!
一方で都会での子育ては、「便利さ」と「選択肢の多さ」のメリットを十分に享受できます。特に教育という視点で考えれば、一般的には教育施設が充実していて、ライバルとも切磋琢磨しやすい都会の方が、子どもの力を伸ばせる可能性も高くなるでしょう。いずれ子どもを都会の大学へ進学させたいと考えているなら、都市圏に自宅があるのは精神面でも金銭面でも大きな強みになります。
田舎と都会、そのどちらにもメリットがあり、またひとくくりに「田舎」「都会」といっても状況はさまざまです。子育てする場所を選べる場合は、それぞれのメリット・デメリットを理解し、何を重視して子どもを育てていきたいのかをはっきりさせて、子育ての場所を決定できると良いですね。