1984年にイギリスでアニメーション化され、現在では世界中の55以上の言語で180以上の地域で放送されている「きかんしゃトーマス」。日本でも、多くの子どもたちに愛され続けている名作です。幼児期に身に着けたい大切なことが学べる理由と、その魅力をお伝えします。
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きかんしゃトーマスってどんなお話?
物語の舞台はイギリスのアイリッシュ海に浮かぶ架空のソドー島。元気で頑張り屋さんだけど、おっちょこちょいな蒸気機関車トーマスと、その仲間たちが共にソドー島の鉄道で繰り広げる物語です。
登場人物は1台ごとに車体番号が付けられ、みんなそれぞれ個性が強め。そんなトーマスと仲間たちが、協力しながら仕事をしていく中で描かれる心理的描写がストーリーに描かれています。
きかんしゃトーマスの歴史
イギリスでは「きかんしゃトーマス」は70年以上の歴史を持つ誰もが知る名作。原作は1945年にウィルバート・オードリー牧師が書いた「3だいの機関車」という絵本で、始めはトーマスは登場せずにエドワードが主役でした。
トーマスが絵本に出てきたのは、その2作目からです。当時まだ小さかった作者の息子の希望で絵本に登場したそう。彼のお気に入りの蒸気機関車のおもちゃがトーマスと名付けられていたことが、大人気キャラクター「きかんしゃトーマス」誕生の由来です。
そこから日本で初めて絵本が発売されたのは、イギリスで出版されてから約30年経った1973年のことでした。
映像化の歴史
1984年から本国イギリスでテレビ番組がスタート。当時は、現在のようなアニメーションではなく、鉄道模型を使った人形劇でした。
日本では、1990年から「ひらけ!ポンキッキ!」内のコーナードラマとして放送がスタート。その後、何度か放送局の変更がありましたが、現在も多くの子どもたちに楽しまれています。また、2000年からは毎年劇場版が公開されています。
日本の現在のテレビ放送
2019年からはEテレで最新の第22シリーズの放送が開始。これまでのソドー島を飛び出してインド、中国、オーストラリアと世界中で物語が繰り広げられています。
また、一部のエピソードには、SDGs(持続可能な開発目標)の内容が取り入れられているものも。まさに今学びたい内容がストーリーを通して、分かりやすく学べるのがアニメの良さとも言えるでしょう。
「きかんしゃトーマス」の教育的効果
イギリスやオーストラリアで「きかんしゃトーマス」の持つ教育的効果が調査されてきましたが、近年日本でも調査が行われました。2019年に発表された株式会社ソニークリエイティブプロダクツと東京学芸大こども未来研究所の共同研究の結果によると、「きかんしゃトーマス」は、子どもの非認知能力と認知能力のどちらにも影響を与えることが発表されました。
「きかんしゃトーマス」と非認知能力の関係
今よく見られている第13シリーズから第21シリーズの計204話を分析すると、2つの大分類と、さらにそれぞれ4つの小分類に分けられることが研究結果で分かりました。
まず大分類では、ストーリーの中心になる登場人物の他者・場への私の「関わり方」と、私・他者・場の「理解」に分けられます。
前者の「関わり方」では、「役割との向き合い方」、「他者への向き合い方」、「他者の意見を取り入れる」、「他者との協力」の4つに分類。
後者の「理解」では、「自己理解」、「他者理解」、「場の理解」、「役割理解」の4つに分類されます。
1話あたり15分の短いエピソードの中に、大切なメッセージが込められていることが、子どもの非認知能力を育むのに関係しているのでしょう。
どんな内容が非認知能力に影響するのか
では、具体的にどのような内容が非認知能力に影響するのでしょうか。
「きかんしゃトーマス」のストーリーは、どれもとても明瞭。『役に立つ機関車になるんだ!』が口癖のトーマスと個性あふれる仲間たちが、失敗を繰り返しつつも協力しながら問題解決を目指すストーリーが多いです。
あるときは、トップハム・ハット卿に大切な仕事を任命され、『喜んで!』と引き受けるものの肝心なところで失敗をしてしまうことも。その度に『どうせ僕は小さいから』と悔しい気持ちになりながらも、どうすればよかったのかを仲間たちと話しあって反省するシーンも。ときには自分には難しい任務であれば、仲間の協力を仰ぐこともあります。体の小さなトーマスは、どれだけ頑張っても大きな急行列車のゴードンのようなスピードは出ないものの、できることを精一杯頑張る姿は、見ている人を勇気付けます。
多くのエピソードでよく見るのが、トーマスや仲間たちがお互いのいいところを見つけて褒め合うシーン。『ありのままの自分でいいんだ』と自分に自信を持ち、自己肯定感を高めるメッセージにも感じ取れます。
こういったストーリーの中でも見られる、トーマスと仲間たちとのやり取りや関係性が、子どもの非認知能力の育みに影響すると考えられているのでしょう。
「きかんしゃトーマス」と認知能力の関係
「きかんしゃトーマス」は、非認知能力だけではなく認知能力の育みにも影響すると言われています。認知能力とは、非認知能力とは異なり点数などで数値化できるもの。具体的に、「きかんしゃトーマス」のどういった部分が関係するのでしょうか。
まずは、登場人物の特徴が関係しています。多くの登場人物には、それぞれ車体番号があり、色が異なります。例えば、『トーマスは水色の1番で、パーシーは緑の6番』というようにお気に入りのキャラクターの色と番号はいつの間にか覚えてしまうことも。
分かりやすいメロディーでつい口ずさんでしまう歌や、登場人物のセリフからは言葉の習得や、音楽への関心を持つことも期待できます。
こういった理由で、「きかんしゃトーマス」に夢中になる子どもは、認知能力と非認知能力のバランスの取れた土台形成が期待できると発表されています。
【体験談】わが家もトーマスから学んだ!
筆者の子どもも1歳になる前から、トーマスが大好きでした。一緒にアニメを見るのはもちろん、プラレールで遊んだり、あちこちイベントに出かけたり、トーマスにちなんだ思い出がたくさん!
当時は、教育的効果を意識していたわけではなく、ただ本人が好きだったのですが、子どもの吸収力の高さには驚かされました。
トーマス好きには珍しくないことかもしれませんが、1歳の時点でトーマスに出てくる色や数字は自然に理解するように。2歳にもなると、『蒸気機関車は、石炭が燃料でそれを燃やして走るから蒸気が出るんだよ』と少し難しいようなことも理解するようになりました。
小学校低学年でも楽しめるはず!
あんなに大好きだったトーマスも、いつの間にか成長と共に熱が冷めてしまったよう。現在小学校1年生になった本人に聞いてみると、たくさん覚えていた登場人物の名前もほとんど記憶にないようです。
数年ぶりに一緒にアニメを見てみると、以前はあまり話すことのなかった感想をいろいろと聞きだせました。年齢的な成長もあってか、当時よりも感じるものがあったようです。『難しいと思ったことでも、仲間たちと一緒に協力して挑戦するところが素敵だと思ったよ。それに上手にできなくても頑張ろうとすることが、すごいなって感動した!』と興奮交じりで伝えてくれました。
筆者の子どもの場合、小さい頃に好きだったことは記憶の片隅にあるようで、どことなく懐かしい気持ちになるそう。未就学のお子さんがいる方はもちろん、わが家のように一度は卒業した小学生の子どもでも、「きかんしゃトーマス」から新しい気付きがあるかもしれません。
家族でアニメの感想を言い合うことで、コミュニケーションが深まるはずです。今だからこそ「きかんしゃトーマス」から得られる、気付きや学びを見つけてみるのはいかがでしょうか。
■参考URL
「きかんしゃトーマス」と非認知能力の関係 3つの視点から検証しました!
(特定非営利活動東京学芸大こども未来研究所、株式会社ソニー・クリエイティブプロダクツ)https://www.atpress.ne.jp/news/183897