「失敗したって大丈夫。やってみたらどうかな」。挑戦してもらいたくて、ほめたり、励ましたりしているのに、一向にその気にならない我が子。「一緒に頑張ってみようか」とアプローチしてみても、少し難しくなると諦めてしまう。「この子はこういう性格なんだ…」と、子どもにレッテルを貼ってしまうこともあるかもしれません。
しかし、決めつけてしまうのはまだ早い!子どもの挑戦心を育むために、親ができることについて考えていきましょう。
子どもが挑戦を避ける理由
難しいから、挑戦しないんだ…。親の心には「挑戦しない」と「難しい」が結びついているかもしれませんが、挑戦を避ける理由は「難しいから」だけではない可能性も。
例えば、失敗して恥をかくのが嫌だと感じていたり、自分にはできないと思いこんでいたり、単にやり方がわからなかったり…。完璧にできないことに気持ち悪さを感じる等の、個性だってあるかもしれません。
「挑戦しない」の背景には、様々な要因が潜んでいることを認識しましょう。その上で、子どもがどんな景色を見て、どんな気持ちでいるかを探ってみてください。子育ての課題解決の最初の一歩は、子どもをよく見て理解することです。
これって逆効果?言葉がもたらすネガティブな影響を知る
挑戦してもらいたいからと、届ける言葉。確かに言葉には、相手の心を動かすほどの威力があります。しかし、子どもが動かない場面で投げかける言葉には注意が必要です。返って子どもの心をネガティブにしてしまう可能性があるからです。逆効果をもたらしてしまう可能性のあるNG言葉をご紹介します。
成果ばかり褒める
「前も上手にできたから、今回もきっとできるよ」
「あなたは頭がいいんだから、大丈夫!」
こう言われた子どもはどう感じるでしょうか。やる気になっている時なら、嬉しい褒め言葉であっても、躊躇している時には、「失敗したらどうしよう」と、恐怖心を招いてしまうかもしれません。成果ばかりを褒めるのはやめておきましょう。
他者と比較する
「〇〇ちゃんもやっていたよ」
「〇〇ちゃんより上手にできるはずよ」
そもそも、他人との比較は、子育てにおいては避けたいこと。しかも、挑戦をためらっている状況においては、返って落ち込ませてしまう可能性も。
「お母さんは、〇〇ちゃんの方がすごいと思っているんだ」
「私は〇〇ちゃんみたいにできないし…」
比較軸をもってくるのは、てっとり早い方法と感じるかもしれませんが、心の成長という観点では、適切ではありません。
恐怖心を煽る
「そんなことをしていたら、大変なことになるよ」
「今やらないと、もっと難しくなるよ」
子どもに恐怖心を与えて動かそうとするのもNGです。そもそも、恐怖心で人は動きませんし、親子の信頼関係まで薄れてしまいます。心が不安定になり、挑戦どころではなくなってしまいます。
できないことを責める
「どうしてやらないの」
「やるって約束したじゃない」
感情的になると出てしまいがちな言葉ですが、挑戦しないことを叱ったり、責めたりするのは絶対にNGです。「自分はダメだ」と自信をなくし、他のことまでできなくなってしまい兼ねません。
挑戦する気持ちを育む親の関わり方 3つのポイント
挑戦する気持ちを持つために必要なのは、「自分ならできるかもしれない」という自信と、「頑張ったらできるようになる」という成長を信じる気持ちです。そのために、親ができる「関わり」を、具体的な言葉例と共に3点ご紹介します。
1.見方を変えて捉え方を変える
子どもの見方、捉え方を変える手法は、子どもの気持ちを変えるために効果的。言葉の言い換えで、見える景色が変わってきます。見える景色が変われば気持ちが変わり、気持ちが変われば行動も変わります。
◎いろいろ考えているんだね。
◎慎重に考える姿勢は大切だと思うよ。
「挑戦しない」は、慎重ということ。現状をポジティブに受け入れることで、自信をもったり、未来に意識を向けることができるようになります。
2.結果よりプロセスに注目・子どもの努力を見つけて伝える
目の前の課題だけでなく、これまでに子どもが行ってきた努力に目を向けて伝えてみませんか。これまでのプロセスに目を向ければ、努力していた光景を思いだすことができるでしょう。
◎「毎朝頑張って続けていたね」
◎「何度も繰り返していたね」
こんな風に言われれば、「自分は努力できる人だ」という意識を高めることができそうです。また、「自分の取り組みを見ていてくれていたんだ」という気持ちが、安心感につながります。
3.「やったらできた」成功体験を積ませる
あんなに嫌がっていたスイミングなのに、お風呂で顔をお湯につけることができたら、次の日にはプールに潜っていた…。例えば、こんなことを起こしてしまうのが、成功体験です。「頑張ろう!」とそのことへの挑戦にこだわることなく、周辺領域にある「できそうなこと」を見つけて、成功体験を積ませてみませんか。
◎ちょっと手伝ってくれる
◎これ、お願いできるかな
お願いすることで、子どもに動いてもらう。そしてできたら、「すごいね」より「有難う」と御礼を伝えます。誰かの役にたった経験は、大きな自信になるはずです。
大切な「できた後」のフォロー
「ほら、お母さんの言った通りでしょう」「もっと早くやればよかったのに」と後味を悪くすることなく、「やってみたらできた」、「難しかったけど努力したらできた」と、子どもが自信をもてるような関わりを意識してください。一つの経験が、「自分ならできる」と、挑戦することをもっと楽しくさせていくはずです。
■ライタープロフィール
江藤真規
東京大学大学院教育学研究科博士課程修了 博士(教育学)
株式会社サイタコーディネーション代表
クロワール幼児教室主宰
アカデミックコーチング学会理事
公益財団法人 民際センター評議員
一般社団法人 小学校受験協会理事
自身の子どもたちの中学受験を通じ、コミュニケーションの大切さを実感し、コーチングの認定資格を習得。現在、講演、執筆活動などを通して、教育の転換期における家庭での親子コミュニケーションの重要性、母親の視野拡大の必要性、学びの重要性を訴えている。著書は『勉強ができる子の育て方』『合格力コーチング』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『心の折れない子どもの育て方』(祥伝社)、『ママのイライラ言葉言い換え辞典』(扶桑社)など多数。
クロワール幼児教室
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