2024年08月20日 公開

どうする、小学校受験? 小学校受験のメリットを考えてみよう

小学校受験はとても長い道のりです。小学校受験はそもそもするべきなのでしょうか。また、受験の準備を通して子どもたちは何を得ているのでしょう。今回の『新・家庭教育論 忙しい毎日の子育てコーチング』第37回は小学校受験の5つのメリットについて考えてみました。

気になる小学校受験。制服に身を包んだ小学生を見れば、憧れの気持ちが増します。しかし、そこに到達するまでには、精神的にも時間的にも、もちろん経済的にも、相当な負担を要することもわかっています。故に、興味本位で始めることはできません。そもそも、うちの子に向いているかどうかもわかりません。
決めるのは親。小学校受験は、親だけに決定権がある受験なのです。納得した上で選ぶ。選んだなら、それを正解とする覚悟を持つ。決めるためには材料が必要です。「ご縁」以外に、受験の準備を通して子どもたちは何を得ているのでしょう。小学校受験のメリットについて考えてみました。

気になる小学校受験

首都圏では、小学校受験が加熱の傾向にあります。社会の変化とともに教育も多様化する中、我が子の教育環境を選んでいきたいという気持ちの表れでしょうか。更に激化の傾向にある中学受験のために、小学校生活の大半を費やしたくないという気持ちもあるかもしれません。小学校受験に興味を持つ背景には、家庭に応じた様々なニーズがあるようです。

幼児期の教育の重要性が言われる中、「習いごと」も大変身近になりました。知育、能力開発、そして小学校受験。子どもの学びの機会が圧倒的に増え、なんとなく小学校受験が気になるというご家庭数も膨らんでいるようです。

いつから準備を始めるの?

小学校受験の準備はいつから始めればいいのでしょう。お教室に通い出す時期としては、年中の秋からのスタートが多いようです。最低でも受験の準備には1年はかかるということ。年少から、2歳からと、更に早くからスタートされるご家庭もあります。

上記はお教室に通い始める年齢であって、ほとんどの時間を過ごす家庭においては、もっと早くからの意識や準備がなされているケースも…。いずれにせよ、相当長い時間が、小学校受験の準備に費やされるということです。

まだ、「遊び」の段階にある幼児が受ける考査なのに、なぜそんなにも時間をかける必要があるのか。それは、小学校受験で出題される(見られる)内容が、実に多様だからでしょう。日常生活では、経験しえないようなことが問われる考査ゆえ、ある種のトレーニングが必要なのです。

小学校受験の準備は、子どもだけではありません。家族の考え方やあり方も、当然重要な評価の対象に。親としてどのような子どもに育ってほしいのか、なぜその学校なのか、子どものことをしっかり見ているか、豊かな日常生活を過ごしているか等が問われます。親にとっても準備期間が必要です。

覚悟をもって決める

まだ、小さいのに可愛そうだ。子どもの主体性が奪われてしまいそう。できないとイライラしてしまう。小学校受験には、ネガティブなイメージもつきまといます。

倍率も高く、見通しも立てにくい小学校受験。「準備に費やす」膨大な時間に価値を感じられない場合は、雰囲気だけで進まぬよう、今一度考えた方がいいかもしれません。しかし、ネガティブなイメージだけが抑止力となっている場合、あるいはスタートしたのに揺れてしまう場合には、受験準備の価値をしっかりと確認し、進むもやめるも、まずはご自身が納得することが大切です。

選んだ以上、それを正解としていく。覚悟を決めて合格に向かう。小学校受験は、唯一、親だけに決定権がある受験です。

小学校受験の5つのメリットとは?

準備期間にこそ、成長あり。ここでは、小学校受験で得られる5つのメリットについてまとめます。

1、知識が増える

小学校受験の考査内容は、実に多岐に渡ります。便利な日常生活では、あまり出会わないような内容も出題されます。故に、丁寧に日常を過ごすこと、観察眼や探求心をもって過ごすことが必要です。大人にとっては当たり前のことであっても、「なぜだろう」という視点を持って、子どもと関わっていきます。そんな風に過ごす中、知識量は圧倒的に増えていきます。

「受験の準備で貯金ができた」という声をよく聴きますが、準備を通して得た圧倒的な知識は、その後の小学校生活においても、大いに役立っているようです。

2、経験が増える

小学校受験の準備は、お教室だけで完結するものではありません。家庭と連続性が必須です。季節の花について学んだなら、実際に見に行く。水の量や濃度を学んだ日には、家で実験をしてみる。子どもの経験は圧倒的に増えます。

指示されたことを理解して動くために、考える経験も積みます。発展させるためには、推論する経験も。お話の記憶の練習では、覚える経験も。友達との関わりも含め、小学校受験の準備で、子どもの経験数は大きく膨らみます。

3、丁寧に取り組むことができるようになる

ハサミにのり、セロテープにクレヨンなど、いずれできるようになるのです。ちぎることだって、貼ることだって、走ることもボール投げも、そのうちできるようになるのです。いずれできるようになることを、何度も練習を重ねて取り組むことには、どのようなメリットがあるのでしょう。

「丁寧にできるようになる」、これが得られるメリットです。正しいやり方を知り、丁寧に行うことができる。それが習慣となる。丁寧な生活習慣が人生の土台にあれば、その上に沢山のものを積み上げることができそうです。

4、自己効力感が高まる

本来、幼児は楽しくなければ動きません。ですから、子ども達はお教室での授業にも、楽しく参加をしています。そして、そんな楽しい経験の中に、「ちょっとだけ難しいこと」へのチャレンジが含まれている、これがお教室での取り組みです。

指導者は、「今はできないこと」を「難しいけれども頑張ったらできた」という経験につなげていきます。「頑張ったらできた」「不安だったけどやってみたら楽しかった」「できるかどうか分からないけど、やってみよう」。これらは、「自己効力感」というマインドです。

受験の準備を通して自己効力感が高まれば、失敗を恐れずチャンレジし続ける未来に向かえそうです。

5、家族のチームワークがよくなる

父親・母親の役割は家庭に応じて異なれど、両者が違う方向を向いていては、受験はうまく行きません。子どもの幸せを願い、子どもにとって最高の環境を選ぶためには、家族のチームワークが必要です。

受験の準備を通して、パートナー同士が互いを尊重しあい、子育ての価値観を共有する。そのために、幾度も話し合いを重ね、子育て観を交差させる。お互いの強みを理解し、補完しあう。このような経験を通して、家族のチーム力が強化されます。受験から得られるもうひとつのメリットです。

長い道のりに必要な「受験の理由」

小学校受験は、確かに長い道のりです。相当なストレスがある道のりです。感情のコントロールも必要ですし、子どもへの関わりかたにも、知恵や工夫が必要です。もちろん、経済的にも相当な負担がかかってきます。途中で心がついていかなくなってしまうことだって、あるかもしれません。
最後まで走り切るために、受験の理由を明確にしておきましょう。心が揺れたら立ち返ることができる理由です。

なぜ、受験をするのか。受験の準備にはどのような育ちがあるのか。「受験の理由」が明確にあれば、「受験をしてよかったね」という未来がきっと待っているはずです。

■ライタープロフィール
江藤プロフィール写真
江藤真規
東京大学大学院教育学研究科博士課程修了 博士(教育学)
株式会社サイタコーディネーション代表
クロワール幼児教室主宰
アカデミックコーチング学会理事
公益財団法人 民際センター評議員
一般社団法人 小学校受験協会理事

自身の子どもたちの中学受験を通じ、コミュニケーションの大切さを実感し、コーチングの認定資格を習得。現在、講演、執筆活動などを通して、教育の転換期における家庭での親子コミュニケーションの重要性、母親の視野拡大の必要性、学びの重要性を訴えている。著書は『勉強ができる子の育て方』『合格力コーチング』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『心の折れない子どもの育て方』(祥伝社)、『ママのイライラ言葉言い換え辞典』(扶桑社)など多数。
クロワール幼児教室

■江藤さんへのインタビュー記事はこちら↓
イヤイヤ期の言葉がけはタイプ別に!江藤コーチの子育てアドバイス①
子どもをやる気にさせるほめ術は?江藤コーチの子育てアドバイス②
学力向上ために6歳までにやるべき6つのこと。江藤コーチの子育てアドバイス③

■江藤さんの著書紹介

こちらの連載もおすすめ!

\ 手軽な親子のふれあい時間を提案中 /

この記事のライター

江藤真規
江藤真規

サイタコーディネーション代表。サイタコーチングスクール、クロワール幼児教室主宰。一般社団法人 小学校受験協会理事。東京大学大学院教育学研究科博士課程修了 博士(教育学)。皆が「子育ち」を楽しめる社会を目指して、保護者さまのエンパワメントを行っています。社会が大きく変化する中、幼児期の子育てにも新しい視点が求められます。子育ての軸をしっかりと築き、主体的な子育てに向かうためにお役立ちとなる情報を、コーチングの考え方を基軸に配信いたします。HP:https://croire-youjikyousitu.com/