子どもに早くから英語教育を受けさせる傾向が強まっています。小学校から英語が必修科目となることが決まり、子どもの習い事としても英語関連は人気です。ところで、なぜ子どもに英語を早く学ばせる必要があるのでしょうか?習い事を選ぶ前に、家庭でねらいを考えておきましょう。
子どもには早いうちから英語を習わせたい?
しかし、それは本当でしょうか?
筆者は5年前にオーストラリアに家族移住しました。子どもたちは英語をほぼ話せない状態でこちらへやってきた後、オーストラリアのローカルスクールへ通っています。
当時3歳と12歳だった二人の子の英語学習を身近で支援すると共に、筆者自身もこの5年間、英語、特に会話力のアップを目指してきました。
そんな筆者の実体験から、「子どもに英語を習わせる前に、親として知っておきたいこと」を提案したいと思います。
何のために英語を習わせるのか?
学校の授業や、受験の科目として、「英語」のよい点が取れるようになることを期待しているのでしょうか?
あるいは、もっと長い目で、将来子ども自身が英語を使って日本の外に活躍の場を広げて行けるような、「土台」を作ってあげたいのでしょうか?
このどちらに当てはまるか、で、英語学習の方法は異なります。
前者の場合、やはり学校のカリキュラムや受験の内容に合わせた勉強をすることが大切です。習い事としては、それを目的とした塾や教室に通わせることが、一番効果的でしょう。正しいスペルや文法を知っている、英文を読んで問題に答えられる、などの力を付けることが必要です。
しかし、それは必ずしも、「自由に英語を話せる」ことにはつながりません。
「世界で通用するコミュニケーションの英語」とは、決まった答えがあるものではありません。一つのことを伝える場合にも、表現のしかたは何通りもあります。「自分が持つ英語力を最大限に使い、言いたいことを表現したり、相手の考えを聞き取る」ことが求められます。そのため、知識を広げながら、それを使う訓練をする、幅広い学習が必要です。
では、後者の場合、やはり英語を習いはじめるのは早い方がよいのでしょうか?
本当に早くないとダメなの?
あくまで筆者の経験ですが、わが子の発達を見ていると、やはり英語に触れる年齢が低いほど、「ネイティブらしい英語発音」や「リスニング力」を身に付けやすい、ということはいえます。英語特有の音や抑揚に対する感覚は、幼いときの方が育みやすいようです。
そのため、小さいうちから、家庭で頻繁に英語を聞く環境を作るとか、英語話者と会う機会を作るなどを、定期的・継続的に行うことが有効だといえます。その一つとして、「習い事を利用して機会を作って行く」という考え方は理にかなっているでしょう。
しかしもう一つ大切なことは、「ネイティブ発音ができる・聞き取れる」ことだけが、英語力ではない、ということです。
幼いときに獲得できる英語力は、大人になったときに必要となる英語力の「ごく一部」です。その後の成長の中で、語彙を増やしたり、さまざまな英語表現に触れたり、英語を使う経験を増やすなど、学習をどんどん続けていくことの方が、トータルの英語力を養う上では重要になります。
子どものときに英語を学ぶメリットとは?
子どもは、好奇心が旺盛で、新しいことを学ぶのが大好きです。「勉強」ではなく、自由な感性で英語を楽しむ経験をした子どもは、年齢が上がっても進んで英語を学ぶようになるでしょう。
また、英語の歌や絵本などは、言葉の響きを重視した作りになっており、意味がわからなくても「楽しい」と感じられるものが多いです。英語に楽しく親しみながら、世の中には「日本語以外の言葉」があることを知り、違う文化やライフスタイルを知ることができます。
習い事として選ぶなら、子どもの好奇心をポジティブにとらえ、自ら発言することを励ましてくれるような指導者に出会えると、よいのではないかと思います。
最後に
それは、「今すぐ英語ができることを期待しすぎない」ということです。お子さまのタイプによっては、英語を習わせてもなかなかしゃべれるようにならない場合もあるでしょう。しかし、「だからこの子は英語ができない」とは決して考えないことです。一方、むやみに高いお金をかけ続ければよいわけでもありません。その都度、その子自身に合った目標を設定し、成長に合った学びを続けていくことに意味があります。
英語学習では、進み方も得意不得意も人それぞれです。ですが、「英語が楽しい」「英語ができるようになってうれしい」という経験があれば、その後の学びの大きな支えになります。お子さまが新しい英語を覚えたら、「よくできたね!すてきだね!」と励ましてあげましょう。