2021年02月23日 公開
ピアノを弾く子供

子供がピアノを習うメリットとは?教室の選び方や費用を解説

東大生の多くが習っていたというピアノ。ピアノを習うメリットと教室の選び方、かかる費用やピアノ購入の必要性について、現役ピアノ講師の意見も交えて解説します。

ピアノと男の子

東大生の多くが習っていたとも言われるピアノ。そしてその東大合格者数全国トップを誇る男子校、開成中・高等学校でもピアノの授業が必修化されているそうです。

ピアノを習うとどんなメリットがあるのでしょうか?男女差はあるのでしょうか。
ピアノを習うことで伸びる力や教室の選び方、かかる費用について解説します。ピアノを購入するべきかどうか、現役ピアノ講師の方にも意見を聞きました。

子どもにピアノを習わせるかどうか迷っている方はぜひ参考にしてください。

研究もされている!ピアノを習う5つのメリット

ピアノを習う5つのメリット

ピアノによってどんな力が伸びるのか、研究によって実証されているものもあります。
ピアノを習う5つのメリットを紹介します。

知能が高まる

ピアノが脳を発達させることは、多くの研究で実証されています。
脳科学者の澤口俊之先生いわく、「人生の成功に関係する全ての基礎がピアノで高められる」「ピアノ演奏は驚くほど脳に良い」とのこと。ピアノを習っている子どものHQは、学習塾や英会話、スポーツ系などほかの習い事をしている子どもより高いことがわかっています。
HQとは、Human Quotient=人間性知能のこと。HQを発達させると、以下のようなメリットがあるそうです。

HQが発達すると…

・目的をもち、未来志向的で計画的

・学力と学習意欲が高い

・“頭”がよく、問題解決能力が高い

・個性的で、独創的

・理性的で、協調的・利他主義

・優しく思いやりがある

・社会的成功に

■引用元 子どもでのHQ向上サービス(人間性脳科学研究所)

さらにHQが高まるとIQも向上するというデータもあります。
どれも子どもに身につけてほしい力ばかりです。

音感が身につく

人が身につけられる音感には、「絶対音感」と「相対音感」があります。絶対音感は単独で聞いた音の高さを判別できる能力、相対音感は2つの音を比較して高さを認識する力です。
相対音感は訓練すれば大人でも得られますが、絶対音感は子どものうちにしか習得できません。絶対音感はIQにも影響を及ぼす点も注目です。絶対音感を身につけた子どものIQは、そうでない子に比べ10ポイント以上高いという統計があります。また、絶対音感を持つ人の脳は、そうでない人に比べて、左脳の側頭平面(言語の理解や数学的能力に関係すると考えられている部位)が右脳の2倍近い大きさに発達していたという研究結果も。

モーツァルトやベートーヴェン、アインシュタインやレオナルド・ダ・ヴィンチなどの偉人も絶対音感の持ち主だと言われています。

言語能力がアップ

ピアノは言語能力のスキルアップにも役立ちます。
2018年マサチューセッツ工科大学の神経科学者の研究により、ピアノが言語習得スキルの向上に繋がると明らかにされました。ピアノのレッスンをすることで、言葉の聞き分け、特に子音の違いを聞き取る力を伸ばせるそうです。
ピアノを弾いていると音に敏感になるため、母国語にない外国語の音をよく聞き取ったり、脳での処理能力が高まったりすることで外国語の習得にも良い影響を及ぼします。

集中力が養われる

ピアノを弾くこと自体、高い集中力を必要とします。楽譜通りに10本の指を動かし、足でペダルを踏み、それと同時に音やリズムなどにも気を使うなど、さまざまな感覚をフルに使わなければなりません。
幼い子どもにとっては、レッスン中ずっと椅子に座ってピアノに向き合うことだけでも、かなりの集中力を要するでしょう。
ピアノはこの繰り返しによって自然と集中力を高められます。

忍耐力がつく

ピアノの上達には、日々の練習とその積み重ねが欠かせません。
1曲完成させるだけでも、何度も何日もの練習が必要です。その練習も楽しいことばかりではないかもしれません。
そこで投げ出さずにコツコツ続けること、やり抜くことで、忍耐力が養われます。

ピアノは何歳からはじめるべきか

ピアノは何歳から

多くのメリットがあるピアノですが、何歳から始めるのが良いのでしょうか。
聴覚・脳の発達する年齢が目安のひとつとなります。

絶対音感・脳の発達を考えるなら6歳まで

先述したとおり、IQにも関係のある絶対音感は、子どものうちしか習得できません。しかもその年齢にはリミットがあります。
人間の聴覚は発達は早く、4~5歳でピークを迎え、8歳頃には完成します。6歳以降に絶対音感を身につけるのは困難と言われており、発達のピークである4~5歳ではじめるのがおすすめです。
脳の発達面からもピアノは6歳までにはじめるのがよいと考えられます。アメリカの人類学者リチャード・スキャモン博士によると、成人の脳を100%とすると、脳は4歳で約80%、6歳で90%も完成するそうです。
実際、ピアノは6歳までにはじめる子がほとんどです。2019年の(株)バンダイによる「子どもの習い事に関する意識調査」によると、ピアノを習っている子どもの約70%が3~6歳で習いはじめています。

3歳までは音楽を楽しむこと重視

大手ピアノ教室のコースでも聴覚の発達がピークとなる年齢がひとつの区切りとなっています。3歳まではピアノを弾くレッスンというよりも音楽を楽しむという内容が主なようです。
カワイ音楽教室では、ピアノを無理なく演奏ができる手指の発達、楽譜や楽譜と鍵盤の関係を理解できる認知の発達という点において、ピアノを始める最適な年齢は4歳としています。

男女差はあるの?

ピアノの習い事に男女差はあるのでしょうか。

(株)バンダイによる「今習っている習い事ランキング」で、ピアノは「水泳」(41.0%)、「学習塾」(27.0%)、に次ぐ3位(24.9%)となっています。男女別にみると女の子では1位の「水泳」(38.9%)と僅差の2位(38.3%)という人気ぶりですが、男の子はTOP5に入っていません。
女の子の習い事という位置付けが強いようですが、冒頭でも述べた通り、全国トップの東大進学率を誇る最難関男子校、開成中・高等学校ではピアノの授業が必修化されているそう。今では入学者の4割程度がピアノ経験者だそうです。
2人に1人がピアノを習っていたとされる東大も、在学生の8割が男子学生のため、ピアノを習っていた男の子の割合が非常に高いと考えられます。

ピアノといえば女の子というイメージに縛られることなく習い事を選びたいですね。

ピアノ教室の選び方と費用

ピアノの費用

いざ子どもにピアノを習わせようと思ったとき、教室はどのように選べばいいのでしょうか。
大手と個人の教室、グループとマンツーマンレッスン、気になる月謝を比較してみます。

大手と個人のピアノ教室の違い

■大手ピアノ教室
ピアノ教室といえば、ヤマハ音楽教室とカワイ音楽教室が思い浮かぶのではないでしょうか。全国に教室があり、ホームページ上にしっかりと情報が掲載されているので、事前に確認できる安心感があります。
また、ピアノのレッスンは先生との相性がとても大事です。先生との相性がよくなかった場合、個人だとその教室を辞めるという決断が必要ですが、大手の場合は先生が何人かいるため、変更を相談したり、曜日や時間を変更したりするなど、教室内で解決できる可能性があります。
ほかにも、独自のカリキュラムがあって一定レベルの指導方法や先生の質が期待できること、教室主催の発表会やコンクールがあること、独自のグレード検定が受けられること、などのメリットがあります。

■個人のピアノ教室
個人教室の一番のメリットは、子どもの好みや成長に合わせた指導が望めることです。
また、大手より時間や日にちの融通が利くこと、比較的月謝が安いことなども、親にとってはうれしいポイント。
あとは良いも悪いも先生次第。相性のよい先生を見つけることが重要です。ホームページを持たない教室もあるので、口コミや体験レッスンなどを通して教室探しをしましょう。
発表会についても、教室単独で行ったり、何人かの先生と合同で開催したり、時期や規模も教室によってさまざまなので、事前に確認しておきたいところです。

グループレッスンとマンツーマンの違い

ピアノ教室は、グループレッスンかマンツーマンレッスンかで分けることもできます。

個人の教室では、マンツーマンレッスンが基本です。先に挙げた大手2社はコースにもよりますが、ヤマハ音楽教室の個人レッスンは小学生からで、それまでは10名程度のグループレッスン、カワイ音楽教室は4歳から個人レッスンとなっています。グループレッスンでは、アンサンブル(合奏)体験ができること、ほかの子からの刺激を受けられること、協調性も身につくこと、などがメリットに挙げられます。楽しい仲間として、時にはよきライバルとして、刺激し合いながら学べる環境がグループレッスンの魅力です。

マンツーマンレッスンでは、個人のレベルや個性に合わせたきめ細かい対応をしてもらえることが最大のメリット。それにより一層技術の向上も見込めます。

グループもマンツーマンもそれぞれメリットがあり、どちらがよいかは子どもの性格によるところも大きいです。
なお、ヤマハ音楽教室はグループレッスンですが、親の同伴が必要です。子どもの適性のほか、こういった点も判断材料のひとつとなると思うので、事前に確認しておきましょう。

月謝の相場は?

ピアノ教室の月謝は、大手よりも個人のほうが比較的安いようです。
ピアノ教室PRサイトの調べによると、個人教室の月謝は安くて5,000円~、平均が8,000円となっています。
地域や教室ごとの違いのほか、同じ教室でもレベルや年齢によって金額があがることもあるので要注意。大手2社の4歳以降の主なコースの月謝は以下の通りです。
教室名 コース名 対象年齢 レッスン形式 回数・時間 月謝(税込)
ヤマハ音楽教室 幼児科 4歳(年中)
5歳(年長)
グループ 年40回
1回60分
7,150円
ジュニアスクール
(ピアノコース)
小学1~6年 個人 月3回
1回30分
8,250円~
カワイ音楽教室 4歳からのピアノコース 4歳~ 個人 年40回
1回30分
7,700円※
小学生からの
ピアノコース
小学生~ 個人 年40回
1回30分
7,700円※

※教室ごとに異なるため、筆者宅近くの教室の価格を掲載(東京23区内)

月謝以外にかかる費用

ピアノ教室は月謝以外のほかにもかかる費用があります。
こちらも教室によって異なりますが、入会金、教材費、施設管理費、発表会参加費などが必要です。大手の中でも教室によってそれぞれの金額が異なるのでチェックしてみてください。
また、自宅にアップライトピアノやグランドピアノがある場合には、定期的なメンテナンス(調律)費もかかります。ピアノの使用年数や頻度にもよりますが、年に1回程度、15,000円前後~が必要です。

ピアノを習うにはピアノを購入すべき?

ピアノを買う?買わない?

ピアノを習いはじめるにあたって気になるのが、ピアノは買うべきかどうかということ。決して安い買い物ではないので親としてはかなりの迷いどころです。
ピアノの購入の必要性と、選び方について解説します。現役ピアノ講師の意見と、実際の生徒のピアノ事情も聞きました。

上達とモチベーションアップのためにピアノは必要

結論から言うと、ピアノは購入することをおすすめします。
週に1回30分程度のレッスンだけでの上達は見込めません。習ったことを反復練習することで身につくものです。レッスン外で練習しないで中々上達せずにいると、子どものモチベーションが下がってしまう可能性もあります。うまく弾けるようになることで楽しいという気持ちが生まれ、さらに練習に励むというサイクルができれば、長続きしやすくなりそうです。
買っても続かないかもという不安がぬぐえない場合は、ひとまずピアノをレンタルしてみる手もあります。

ピアノの選び方

ピアノは大きく分けて、アコースティックピアノと電子ピアノの2種類です。アコースティックピアノは、さらにグランドピアノとアップライトピアノに分けられます。
ピアノと聞いてまず思い浮かべるのが大きなグランドピアノですが、置き場所や数百万という費用面などで実際に購入する家庭は限られると思いますので、今回はアップライトピアノと電子ピアノに絞って紹介します。

■アップライトピアノ

アップライトピアノとは、弦をハンマーで叩いて音を出す仕組みのアコースティックピアノです。グランドピアノは地面と水平に弦が張られていますが、アップライトピアノは弦が地面に対して垂直。およそ200㎏以上の重量はありますがコンパクトな縦型のため、一般家庭でも多く使われています。
アップライトピアノのメリットは、グランドピアノに劣るとはいえ鍵盤の叩き方によっていろいろな音色や表現ができること、定期的な調律により長年使えることなどです。
デメリットは、音が大きいため住環境により設置が限られること。ただし、後付けの消音ユニットやペダルで音を小さくするなど工夫の余地はあります。
値段は40万円くらいからと、グランドピアノより手を伸ばしやすいとはいえ高額。メーカーや種類もさまざまなので、よく検討の上、家庭にも子どもにも合う1台を見つけたいですね。

■電子ピアノ

電子ピアノは、鍵盤の情報をセンサーが感知し、アコースティックピアノから録音した音をスピーカーから出す仕組みです。アコースティックピアノとは構造が全く異なります。
軽量でコンパクト、音量が調整でき、ヘッドホンにも対応しているため、置き場所や住環境に柔軟に対応できることがメリットです。調律も必要ありません。ピアノ以外の音色に変えられたり、録音ができたり、機種によってさまざまな機能が付いていることも魅力です。
デメリットは、アコースティックピアノほど豊かな音色や表現力は望めないこと。また、電子部品を使用しているためアコースティックピアノより寿命が短く、10年程度が寿命の目安です。
値段は安いものなら5万円前後から何十万するものまで、機能やデザインによって大きな差があります。20万円を超えるとほとんどの製品が木製の鍵盤となっており、最新かつ高い価格帯のものほど生のピアノに近い演奏をできるものが多いようです。

現役ピアノ講師に聞いた実際のところ

ピアノは購入したほうが良いとわかってはいるものの、電子ピアノでさえそれなりの場所とお金が必要。やっぱり様子を見てからにしようか、キーボードでも事足りるのではないか、との考えも捨てきれません。

1歳の子どもから上は76歳の大人まで、大手ピアノ教室で15年教えてきた現役ピアノ講師に聞いてみました。場所や金額の制約があることはわかるけれど、講師としてはやはり自宅にもピアノはあったほうがよいとのこと。
「続くかわからないから検討する」「もう少し上手になってから買う」というママやパパもいるようですが、そもそも楽器が無いとなかなか上達できないだろうと言います。実際、ピアノが自宅に無い生徒さんもいるものの、週に1回30分のレッスンだけで上手くなるのは難しいようです。
「キーボードがあるので大丈夫です」という家庭もあるそうですが、ピアノとキーボードはそもそも違う楽器であまりおすすめはしないとのこと。それは例えばバドミントン部に入ったのに、テニスのラケットがあるので大丈夫ですと言っているのと同じことだと教えてくれました。
講師からすると、ヴァイオリンやフルートを習っている子で楽器を持っていない子は滅多にいないはずなのに、ピアノだけはなぜか楽器がなくても大丈夫と思われがちだと言います。
本物のピアノに越したことはないけれど、最低でも電子ピアノがあるとよいそうです。電子ピアノでもコンクールで入賞する子もいるようです。

ピアノはさまざまな力を伸ばせる習い事

ピアノは子どものさまざまな力を伸ばせる習いごとです。
発表会やコンクールを目標にして努力したり、大きなステージに立つ経験をしたりすることで、「学校の学習発表会でも堂々とステージに立てるようになった」とよく親御さんに言われるとピアノ講師も話していました。
ピアノそのものの上達はもちろん、子どものこれからの人生においても価値のある習い事として、ピアノを選択してみてはいかがでしょうか。

<参考>
開成中では全員が ピアノを弾いている! | 日本ピアノ指導者協会(ピティナ) 【読み物・連載】海外の音楽教育ライブリポート(菅野恵理子)2013/12 掲載記事
一般社団法人 全日本ピアノ指導者協会(ピティナ)|今こそ音楽を!第3章 脳科学観点から~澤口俊之先生インタビュー(1)
TIME|Why You Should Enroll Your Kids in Piano Lessons, According to Science
リサーチノート|みんなのはじめての習い事は?
東洋経済オンライン|東大生にピアノ経験者が圧倒的に多い理由
カワイ音楽教室
ヤマハ音楽教室
わたしのピアノ教室 ピアノ教室PRサイト

 

\ 手軽な親子のふれあい時間を提案中 /

この記事のライター

かすみ
かすみ

東京都在住、2016年生まれ女児の母。大学卒業後は料理教室、食品マーケティング会社に勤務。出産を機に専業主婦となったものの、子どもと2人きりの日々から抜け出したく、地域のママ向けフリーペーパーの製作に携わるように。そこからライター・デザイナーとして活動中。