イギリスでの子育ても10年目を迎え、現在の家での生活も13年程になる我が家。子どもの成長や働き方の変化に伴って、引越しを真剣に考えるようになりました。今回の英国すくすくレポでは、日本と大きな違いがあるイギリスの家事情・引越し事情について、前半と後半に分けてレポートします。
イギリスでは建っている家を買うのが主流
日本に住んでいたときは、建築会社や住宅関係のお仕事をさせていただいていた筆者。衣食住の中では「住」が一番好きで、子どもの頃からよく「大きくなったらこんな家を建てたいな~」と夢見る子どもでした。大人になり渡英すると、日本のように個人で「家を建てる」ということが、イギリスではかなりレアなことだと知って驚きました。
おそらく個人で土地を購入し家を建てるという人がいないわけではない…と思いますが、今までに一度も会ったことがありません。建築会社が建売用の新築を建てるということ以外は、珍しいことなのです。イギリスではすでに建っている家や※フラット等の物件を売り買いし、必要であれば改築・改装して自分の好みに変えて住むスタイルです。
※今回の記事ではフラット(日本で言うマンション・メゾネット・アパート等)も「家」と一括りにして話を進めていきます。
住みたいエリアに、住みたいと思える家を探すのはなかなか大変です。場所は良いのに家が好みではなかったり、家じゅうの改修が必要そうだったり、逆に家は最高なのに場所がいまいち希望から離れているというのはざら。さらにコロナパンデミックやロックダウン後ということもあって、売りに出る家が例年より減っています。
通常でも家の競争率は高いのに、近年に至っては、一つの物件に対しての競争が激化している印象です。
売り出し中の物件検索サイトで有名なのは RightmoveやZooplaと呼ばれるサイトで、希望のエリア・部屋数・価格を入れると、家一覧や家の外観&内観写真を見ることができます。
気に入った物件が見つかったら、不動産会社に連絡をして内覧を予約します。今回は多くの物件でオープンデーを設けていました。別々の日に見学者が来るよりも、一日をオープンデーと設定していた方が、売主にとって掃除がしやすかったりストレスが減るためとのこと。納得です。
そんな中、近年は売り物件が少ないため、家を見学するには(持ち家がある人は)自分の家を先に売りに出さないといけないということが判明!モタモタしていたら気に入った物件が他の人に買われてしまうかもしれないとのこと。急いで家じゅうの大掃除をし、気になる部分の改修やペンキ塗りをして、我が家も売りに出すことになりました。
家を売りに出すと、家の前に「FOR SALE」と書かれた大きな看板が立てられます。
英語でなんて言う?
家の内覧は→house viewing
家を売りに出す→to put a house on the market
家の改修→house renovation
引越しするの?→Are you moving?
看板→(for sale) sign
家の見学で驚いたのが、「誰かが今住んでいる家を見に行く」のがイギリス流ということ。家主さんによってはキャンドルや間接照明で雰囲気を良くする工夫がしてあったり、逆に飲みかけのコップが置き忘れてあったりと、家によってさまざまでした。現在、誰かが住んでいる家なので、他の人の住空間に足を踏み入れた感覚は慣れるまでは変な気持ちでしたが、いろいろなご家庭のインテリアを直接見られるのは、家好きとしては楽しかったです。
家の見学があっている間は、持ち主は外出します。そして鍵を持っている不動産会社の担当者と購入希望者が約15~20分ほどずつ時間を与えられて家の中に入って見学する仕組みです。数千万円の大きな買い物ですが、この短時間で大方見て回って決める必要があるので、なかなかプレッシャーでした。(2回目の見学を申し込むことも可能ですが、その時にはすでに買い手が決まってしまうほど激戦でした。)
いざ、家の見学へ!
家を売りに出したところ、一日で買い手が決まるという驚きの快挙を成し遂げ、慌てて本格的に引越し先の家探しも始めた私たち。なぜなら、買い手が決まっても、私たちの家探しに時間がかかってしまうと、買い手の気持ちが変わって、手を引かれてしまうこともあるそうなのです。そういうわけで、なるべく早く新居となる家を探す必要がありました。
ちなみに家が売れると、今度は「FOR SALE」の看板から「SOLD STC」という看板に変わります。とても目立つ看板なので、近所の方々に「え!引っ越すの?」と驚きの声をかけられることも多々。日本だとあまり「引っ越します」ということを家族や友達以外には知られずに引っ越すことが多いと思うので、なんだか新鮮でした。
さて、理想の新居を探すべく「この家は?」と思った家の見学を予約し、いくつかの家を内覧させてもらったところ…
写真よりも実際の方がさらに素敵な空間もあれば、間取りが良いからと見学に行ったものの、内部の壁紙やカーペットなどが好みと全く合わない物件も。大きな改装が必要な家だと気づいたり、生活の動線が違いすぎたり(見栄えは良いけど使い勝手が悪そうでした)、日当たりがイマイチだったりと、オンラインではわからなかったことが実際の見学で見えてきました。
家を買う資金だけでなく、その家を自分好みの住空間にしていくためにDIYスキルを磨いたり、その材料費や改装費用も視野に入れての家探しが必要なのだと感じました。
住みたい家とチェーン問題
そんなこんなで、「ここぞ!」という家を見つけるべく家の内覧を繰り返していた私たち家族ですが、ついに運命の家を見つけました!
ほぼ思い描いていた通りの物件で、不動産会社を通してさっそくオファー(買いたいという申し出)を出しました。
ありがたいことに申し出が受諾され、これでめでたく引越し先の物件も決まり!
自分たちの現在の家の買い手も決まっているので、もうすぐ引越し♪と小躍りしていた筆者に、夫が一言。
「まだ、チェーンの問題がある。」
なんと、イギリスでの家の売買には、家のチェーンという課題をクリアしなければならないそうなのです。イギリスで売りに出ている家には持ち主が住んでいることがほとんど。それぞれの持ち主が引越し先と買い手を探さなければならず、その売買に関係する家がすべて同じように連なって長い家のチェーン(連鎖)ができるのです。
そういう理由から、私たちは引越し先の家主さんの新居が見つかるまで、何もできないただの保留期間がありました。とはいえ、私たちの場合は、チェーンが2軒の間のみで済んだので、かなりラッキーな方です。(引越し先の物件の持ち主が買う家にチェーンが無く、また私たちの現在の家に引っ越してくる家族も賃貸に住んでいるためチェーンは無し)
別物件で聞いた話では、そこのチェーンがかなり長く、「引っ越したい家が見つからない」または「家の買い手が見つからない」という物件が間に挟まっているため、半年以上もチェーンの問題解消を待っている人がいるのだとか!
そういうわけで、「引っ越し予定」と話題がでると、その苦労を知っている人が多いためか、「わぁ…頑張ってね。」「うまくいくと良いね!」とエールを送られる文化です。(笑)
イギリスでの家購入&引越しは、運試しみたいなところがあると痛感しました。
英語でなんて言う?
引越しがんばってね→Good luck on the move!
課題解決して、うまくいくといいね→I hope you can sort it out soon.
家購入の申し出をする→to put an offer on a house
不動産会社→Estate agent
チェーン問題の次に待っている壁
さて、引っ越す物件も家の買い手も決まり、先ほどお話した家のチェーン問題がひと段落して、「やっとこれで引っ越せるー!」と喜んでいた筆者ですが、またしても夫が一言。
「この先が長いんだよ。」
イギリスの家購入&引越しは、まだまだこの先の試練があるのだそうです。
次はモーゲージ(家のローン)の本審査、さらにソリシターと呼ばれる事務弁護士を通してさまざまな書類をやり取りしたり、引越しにあたって物件の検査なども行わなくてはなりません。そういった諸々の手続きに、なんと早くても6~8週間、通常平均12週~14週間ほどかかるのだとか。「どうしてそんなに時間がかかるの?」と聞いても、「さあ?そういうもんだから…」誰も理由を知らないのも、これまたテキトーなイギリス人。ソリシター達のオフィスで、紅茶の時間を長くとりすぎてるんじゃないの?と皮肉を言いたくなります。
現在、我が家の家購入&引越し計画は、ちょうどこの状況の真っ最中。さて、一体いつ新居に引っ越せることやら?
引越しが完了したあかつきには、「イギリスの引っ越し事情に驚いた話・後編」として、続編を書かせていただきますね!
物件検索サイトで家を見学してみよう!
文化の違いをいろいろと感じるイギリス生活ですが、家購入&引越しでも、やはりたくさんの驚きやカルチャーショックがありました。
とはいえ、衣食住の「住」好きとしては、家の事を考えているだけで幸せ。特に、上の方でもご紹介した物件検索サイトで、イギリス中の家を見てみるのは本当に楽しいです。大豪邸やお城のような家、小さい田舎のコテージ、都市部のフラットなど、外観だけではなく家主さん自慢のインテリアを見ることができて、海外生活のワンシーンをのぞくことができるので、とってもおすすめですよ!
■いしこがわ理恵さんのイギリス漫画レポートの記事はこちら↓↓↓