和食よりも早くユネスコの世界無形文化遺産に指定され、4,000種類以上のバリエーションがあるメキシコ料理。日本ではタコスやブリトーが知られていますが、今回ご紹介するのは最も歴史ある軽食「タマレス」。世界の料理とその歴史、背景を知ることで、より食への興味や範囲が広がることを願って、ご紹介します。
メキシコの古代食:タマレスとは?
トウモロコシの粉とラードを練った生地に、鶏肉やチーズなどをサルサ(ソース)とあえた具材を入れ、さらにトウモロコシの皮やバナナの葉に包んで蒸したメキシコでメジャーなストリートフードです。メキシカンちまき、といったところでしょうか?
甘く味付けをしたものもあり、腹持ちがよくカロリーも高いため、タコスやメキシコ版ハンバーガーであるトルタと並んで、メキシコ人の肥満の原因であるVitamin T(タコスもトルタもタマレスも頭文字がTのため)などと呼ばれてもいるので、食べすぎには要注意でもあります。
タマレス屋さんは路上にあり、気軽に食べられる料理ですが、2月2日に食べるときはいつもと違う意味があるのです。メキシコの古代文化とカトリックが融合した、独自のお祭りも併せてご紹介します。
クリスマスから続くカトリック行事
まずは1月6日の「三賢人の日」。これは東方の三賢人がそれぞれ贈り物を持って、イエス・キリストをたずねたといわれる日が由来となっています。「贈り物」にちなんで、メキシコではこの日も子どもたちはおもちゃなどのプレゼントがもらえるうれしい日。大人たちは年末年始と大出費です……。
子どもたちは前日の夜、欲しいものを三賢人にお願いする手紙を風船に結びつけ、空に飛ばします。また、街中や市場のおもちゃ屋さんは夜中までおもちゃを売り続け、それが毎年ニュースで流れたりする様子は、子どもたちの冬休みの終わりを告げる風物詩ともなっています。
当日は「ロスカ・デ・レジェス」と呼ばれるドーナツ型のパンを食べるのですが、このパンの中にはプラスチックでできた赤ちゃんキリストのお人形が仕込まれており、そのお人形が当たった人が、2月2日にタマレスをふるまう、というしきたりになっています。フランスでは「ガレット・デ・ロワ」を食べるなど、世界のあちこちに似た習慣があります。
2月2日にはどういう意味があるの?
メキシコシティ近郊ほか、メキシコの一部の地域では子どもの姿をしたキリストの人形に新しく仕立てた服を着せ、一緒にミサに参加するという風習も見られます。
どうしてこの日にタマレスを食べるのか?
偶然にもプレヒスパニック時代のカレンダーに照らし合わせると2月2日は1年のはじまりにあたり、トラロック(雨の神)、チャルチウィトリクエ(水の女神)、ケツァルコアトル(風の神)に捧げものをする日だったと考えられています。
そこで、日本人にとってのお米と同じように、プレヒスパニックの人々にとって主食であり、農耕文化の中心であったトウモロコシを使ったタマレスが、その特別な日のメニューに選ばれたそうです。
歴史や背景を知るともっとおいしい食育
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著者 :森山 光司
出版社 :誠文堂新光社
タマレスの作り方も掲載されています。