飛行機が通った後、青空にのびる一筋の雲。お子さまに「飛行機雲はどうやってできるの?」と聞かれたら、どのように答えますか?説明するには、まずパパママが飛行機雲ができる仕組みをおさらいしましょう!お子さまに、わかりやすく教えるコツについてもご紹介します。
飛行機雲は煙?雲?
空を見上げると、時々見ることができる細い線状の飛行機雲。飛行機の航跡に作られるため、エンジンから出た煙や排気ガスと思っている方が多いのではないでしょうか。じつは、煙ではなく、その名の通り「雲」なんです。
ただし、飛行機雲は雲の基本10種類(※1)には分類されません。飛行機雲は、気象学的な雲ではなく、特殊なメカニズムで発生する雲(Special clouds)の一つです。つまり、人工的に作られる雲というワケですね。
※1…国際雲図帳2017年版に掲載されている10種雲形または10種雲級(巻雲・巻積雲・巻層雲・高積雲・高層雲・乱層雲・層積雲・層雲・積雲・積乱雲)
飛行機雲ができる理由は?
1:排気ガスに含まれる水蒸気によって、雲が作られるケース
飛行機は高度1万mを飛んでいます。私たちが住む地上と比べると、なんと気温が約60度も低い世界です。つまり、マイナス40度くらいの中を飛行機は飛んでいます。凍りつくような寒さの中で、300度から600度にもなる排ガスを出すと、ガスの中にある水分が急激に冷却されて凍るため、雲ができるというわけです。
飛行機の主な燃料である炭化水素が燃焼されると、水と二酸化炭素になり、水は300~600℃といった高温の水蒸気として排出されます。空気中に排出され、飽和水蒸気量に達した水蒸気が、急激に冷やされて小さな氷の粒状に凍ります。
それが、地上から見ると白い雲のように見えるということ。水平飛行している飛行機で見られる飛行機雲は、主にこのパターンですね。空気中の水蒸気量が少ない場合は、できないこともありますよ。
2:空気の渦によって雲が作られるケース
飛行機の翼の後ろ部分に空気のうずができると、その部分だけ気圧と気温が下がります。すると、そこにある水分が冷却されてひこうき雲になる場合があるのです。
飛行機が高度の高い、空気の薄いところを飛ぶと、大きな揚力が生じて主翼の後ろや翼端に空気の渦ができます。この渦が、周辺の空気の気圧と気温を急激に下げて、大気中の水蒸気を冷やして雲を作り出りだすというパターンです。
このように、飛行機雲を作る要因は、排気ガスと空気の渦ですが、両方の状況が合わさって発生する場合もあるそうです。
ただし、飛行機雲が発生するには、地域や昼夜は問いませんが、上空の温度や気温、湿度、空気の流れ、高度など、さまざまな条件が必要となります。
いろいろなものに影響されるため、いつも見られるとは限りません。飛行機雲が発見できるのは実はラッキーなことだといえそうですね。
未就学児・小学校低学年にもわかる「ひこうきぐも」解説法
【小学校低学年向け】「飛行機雲」の教え方
STEP1:「くも」はなにからできてるの?
「雲は水や小さな氷の粒でできているんだよ」
雲は、水や小さな氷の粒の集まりでできているんだ。目には見えないほど小さいけれど、みんなが吸っている空気中にも水蒸気が含まれていて、急にその空気が冷されると、それが水や氷になるの。たとえば、冷えたコップのまわりに、水の粒や水滴が出てくることがあるよね。それと同じで、気温が低い上空で水の粒と氷の粒がたくさん集まると、雲になるんだよ。
STEP2:どうして白く見えるの?
「寒いときに吐いた息が白いのと同じ現象なんだよ」
寒いときに息をはくと、はいた息が白くなるよね。雲が白く見えるのは、これと同じ。息の中のあたたかい水蒸気が、さむい外に出ることで急に冷やされ、目に見える小さな水の粒になるの。小さな粒がたくさん集まると、白く見えるんだよ。
ヤカンに入れた水を沸かして、お湯になると、白い湯気が出てくるよね。これも同じ。ヤカンの中にあったあたたかい水(水蒸気)が、ヤカンの外に出ると急に冷やされて、小さな粒になって白く見えるんだよ。
STEP3:「ひこうきぐも」はどうやってできるの?
「飛行機が飛んでいる時に出る煙が、冷たい空気にふれると、冷やされて小さな氷の粒になるんだよ」
空の上の方は、南極大陸ぐらい、とっても寒いんだ。だから、飛行機が高いところを飛んでいる時に出すあたたかい煙(排気ガス)が、そんな冷たい空気にふれると、急に冷やされて小さな氷の粒になるの。だから、白い雲のように見えるんだね。これが飛行機雲の正体なんだ!
でもね、飛行機雲は、また別の方法でもできるんだ。飛行機が飛ぶと、飛行機の大きな翼の後ろに風(空気の渦)ができるの。そうすると部分的に空気の温度と温度が下がるから、空気の中の水(水蒸気)が急に冷えて小さな氷の粒ができるんだ。それで飛行機の後ろに長い飛行機雲ができるんだよ。
【未就学児向け】「ひこうきぐも」のわかりやすい教え方
航空機の機種によって違う!飛行機雲の本数
ボーイング747など
ボーイング737・767・777・787など
Wikipedia「タイプ別の航空機一覧」
飛行機雲の英語名とは?
国際雲図帳2017年版には、「Air craft condensation trails(飛行機がつくりだす雲)」として紹介されています。
「condensation」は「(気体の)凝縮・凝結」、「trail」は「跡」という意味。それらが合わさり、飛行機雲は「contrail」といわれています。この他に、「蒸気の跡」という意味で「vapor trail」ともいわれるそうです。
【使い方の例】
It ’s a contrail.(飛行機雲だ)
There is a contrail in the sky.(空に飛行機雲があるよ)
That airplane is making a vapor trail.(飛行機雲ができたね)
子どもと一緒に観察しよう
飛行機雲ができる理由を完全に理解するのは、大人でも難しいかもしれません。子どもの頃に「あっ、飛行機だ!」と空を見上げ、その後に続く白い線を興味深く眺めていた記憶はありませんか?親になった今、わが子と学び直すいい機会です。一緒に飛行機雲の知識を深めましょう!
子どもの成長と共に少しずつ内容をステップアップしていくと、「なぜ?」「もっと知りたい!」が増えていく可能性もありますね。
飛行機雲は頻繁に見られるものではありませんが、そのほかにもたくさんの種類の雲があります。それがきっかけで、お天気を観察したり、自由研究のテーマにしたりなど、さまざまな学習にも役立ちます。
青空の下、一緒に写真を撮るのも、ステキな思い出の一枚になりそうですね。