誰もが読んだことはなくても聞いたことはあるであろう、福沢諭吉の『学問のすゝめ』は当時大ベストセラーだったのです。いわゆる啓蒙書に分類されるこの本がなぜそんなに売れたのか、そして今ではどんな形で読むことができるのか、『学問のすゝめ』についてご紹介します。
『学問のすゝめ』ってどんな本?
当時の人口が3,000万人であったのに対し最終的に300万部売れたとされており、その計算上では全国民の10人に1人がこの本を持っていたことになります。
そもそも小学校の教科書とする目論見があったため、これほど重要な内容であるにもかかわらず、誰しもが読めるよう比喩などをたくさん入れて読みやすくしてありました。
一体何を「すゝめ」ているのか?
しかし国民はそれまでの封建社会と儒教思想にしか馴染みがなかったため、あまりにも急な国の変化に対応できないと危ぶまれました。
そこで福沢諭吉は欧米ではどのような政治思想がとられているのか、民主主義とは何なのかを説明し、これまでの凝り固まった考えを捨てて、主権を持つ市民として生まれ変わるようメッセージを込めた本が『学問のすゝめ』です。
国民が生まれ変わるために学問が必要であることを説いたわけです。また当時の知識人に、これからの日本を引っ張っていくのは彼らであることや、人々が生活する上で必要となる心構えなどが書かれています。
今も昔も変わらない、名著を現代語訳で読む
著者 :福澤 諭吉(著)/齋藤 孝(翻訳)
出版社 :筑摩書房
『学問のすゝめ』において説かれている精神性は今も色あせることなく、むしろ今だからこそ響いてくる教えばかりです。
今ではいろいろな形で『学問のすゝめ』を読むことができるようになっています。
一般的な書籍としては、現代語訳されわかりやすい文体になった書籍が数多く出版されています。
こちらのちくま新書版「学問のすすめ 現代語訳」はNHKEテレ「にほんごであそぼ」総合指導の齋藤孝氏により口語で翻訳され馴染みやすく、かつ現代にいかすためのポイントを押さえた解説がそえられていておすすめです。
名著を無料で読める!青空文庫を活用しよう
著者 :福沢諭吉
出版社 :青空文庫
「青空文庫」は著作権の期限が切れた書籍などを集めて、インターネット上で図書館のように開放している活動です。
ポイントは一切お金がかからず、無料で読めてしまうところです。『学問のすゝめ』もその中に含まれているため、原文のまま読むことができます。
こども「学問のすすめ」
著者 :齋藤 孝
出版社 :筑摩書房
前述の「学問のすすめ 現代語訳」の翻訳者である齋藤孝氏が、この時代を生きる日本人のため、そしてさらに子どもたちに向けて「学問のすゝめ」を改めて訳したのが『こども「学問のすすめ」』です。
本書は、今を生きる人々が強く生きるための「背骨」をつくることをテーマとしており、親が子どもと一緒に読みながら人生について楽しく考えることができる本になっています。
現代のわれわれが学問をすすめられる意味
未知の世界へわが子を送り出す親も、挑戦の海へ舵を取るであろう子どもも、この本を一つの指標として手に携え、先人の言葉に耳を傾けてみてはいかがでしょうか。