イギリスのグラマースクールは、日本でいう公立の進学校です。私立に行かずとも大学進学への道が開かれるということで、人気を集めています。しかしこのグラマースクール、イギリスでは常に議論の的となっています。グラマースクールとは、いったいどのような学校なのでしょうか?
グラマースクールって?
もともとは、大学進学に必要なラテン語の文法を教えるための学校でした。それが、1944年に制定された教育法により、進学校として位置づけられることに。それ以来、学力試験による選抜が取り入れられるようになりました。
ちなみに、イギリスのメイ首相、サッチャー首相がグラマースクール出身として有名です。
パブリックスクールとグラマースクール、学費の差は?
パブリックスクールは、平均すると年間1万6,000ポンドかかるといわれています。日本円にすると年間約236万円ほど。学校によっては、もっとかかるところもあります。日本の私立学校以上に、お金がかかることが多いようです。そのためパブリックスクールに通う子どもは決して多くなく、そのほとんどが上流階級の子どもです。
一方、グラマースクールは、公立なので原則無料です。
グラマースクールの受験って?
グラマースクールに入学するためには、「イレブン+」という試験を受けなければなりません。この試験は、新卒採用試験などでよく使われる「SPI試験」と似ているようです。そのため、基本的には対策を行わなくてもできるとされています。しかし、ほとんどの子どもが塾や家庭教師など、何らかの対策を行っています。なかには試験対策のために、私立小学校に入学する子どもまでいるそうです。
しかし、日本と少し違うのが、イギリスでは小学生が受験勉強をすることに懐疑的だというところです。そのせいか、「勉強漬け」にされる子は少なく、遊びや趣味などの時間もしっかりととられています。
テリーザ・メイ首相がグラマースクールに注力
しかし実際のグラマースクールには、お金のある中流階級以上の子どもが多く集まりました。このままでは階級分断が一層強まると懸念。1998年には新設が禁じられ、地域によっては、グラマースクールを廃止したところもあります。
しかしイギリスのメイ首相は、グラマースクールの復活を政策として打ち出しています。自身もグラマースクール出身だったメイ首相。貧困層の学力を底上げし、社会的移動の機会を与えたいとの思いが強いのかもしれません。
そのため、これまでのグラマースクールとは違い、貧困層家庭に一定の入学枠を設けることを検討しているそうです。
イギリス国内では反対意見も
実際、ビジネス誌「The Economist」では、「このやり方は社会的流動を損なうものだ」と批判しています。このほかにも、さまざまなメディアで「社会的移動が可能になるのか」「階級分断を強めるのか」といった視点で意見が交わされています。
なお、「小学生に受験をさせること自体がどうなのか」「競争をさせることはよくない」といった意見もあるようです。