2022年07月18日 公開

海外からレポ!「子どもへの性教育は、どう導入されている?」

大人も躊躇してしまうテーマ「子どもへの性教育」。しかし重要な内容であることは確かですよね。外国ではどのように導入されているのか?筆者の住んでいる現地イギリスからレポートします!

性教育というと「どのように子どもたちへ伝えたら良いのか」と、なんとなく大人も躊躇してしまうテーマだと思います。しかし生きるためには大切なこと。子どもたちに正しく伝えていきたいことでもありますよね。性教育について外国ではどのように導入されているのでしょうか?今回は現地の教育現場の声も踏まえながら私の住むイギリスの子供への性教育についてレポートします。

イギリスの性教育は小学校低学年から!

イギリスにはPSHE(Personal, social, health and economic education)という科目があります。道徳よりももっと幅広い内容を学ぶ科目で、たとえば「自分を清潔に保つことの大切さ」「良い友達とは」などから始まり、英国的価値観(ブリティッシュバリューズ、イギリスで盛んな「チャリティー活動」についても学びます。

ブリティッシュバリューズについての記事はこちらから▼

そのPSHEと理科(科学・生物・物理等)が重なり合う部分として、性教育(RHEやRSEと呼ばれる科目の一部)が授業の中に入ってきます。

ちょっと複雑な仕組みに聞こえるかもしれませんね。このRHEという科目はRelationships & Health Educationの頭文字をとったもの、RSEはRelationships & Sex Educationの頭文字です。これらの授業の中で、「健康的な生活・食生活」「個人の安全を守る生き方」「薬やドラッグについて」「人間関係について」「体の成長サイクル」「命をつなげていくこと」など学ぶのですが、その内容の一つとして性教育があります。

イギリスの性教育は1年生(イギリスの5~6歳)の3学期から始まります。急に生命誕生の仕組みなどを学ぶのではなく、まずは「プライベートゾーン(水着で隠れる部分)」は人に見せない・触らせないことで、自分を守ることを学びます。イギリスの性教育の内容で驚いたのは、幼いうちからプライベートゾーンに含まれる身体部位を、医学的名称で教わるということです。

自分の体は自分で守る

なぜ、「大切なところ」とか「プライベートゾーン」というエリア的な言い方だけではなく、あえて医学的名称も習うのだろう?と驚かれた方もいらっしゃるかもしれませんね。私も「そんな幼いうちから、なぜ?」とびっくりしました。これには理由があって、現役の先生のお話では「もし何か虐待等の被害にあった場合に、きちんと他の大人に言えるように。被害防止のためなんです。」とのこと。確かに近年では国に関係なく児童虐待が増えているという悲しい現状があります。

イギリスの子どもたちは、低学年~中学年(4年生まで)は体育着に教室で着替えますが、これは子どもの自主性を伸ばすという目的と、もう一つは子どもの異変(ネグレクトや虐待のサイン、たとえば痣など)を見逃さないためにそうしているそうです。
太ももの内側など、普通あまり痣ができない部分に痣がある子どもがいれば、教師はお迎えの時間などに何気なくその話を保護者に振ります。口ごもるなど変な様子が見られれば記録をとることとなっています。

暴力的/精神的な虐待、性的な虐待、ネグレクト等から子どもたちを守り、子どもたちが健全で安全な生活を送るために、性教育を含め最初の方でご紹介したPSHEやRHE、RSEの科目が必須となっています。

教育現場の本音は…

さて、性教育というと「どうやって子どもができるのか?」「性別による体の仕組みの違い」「避妊について」など、なんとなく大人でもハッキリ話すのは躊躇してしまう内容が含まれています。それは教える側にとっても同じことで、先生だってやっぱり人間…毎年そういったテーマで授業をする時期になると、ちょっと気まずいような、気が重いような気持になるようです。

とはいえ、先ほども述べたように「性教育」と言っても体の違いや性行為についての内容が前面に出ているわけではなく、あくまでもRelationships 人間関係、Health 健康、Sex Education 性教育、そこに理科(生物学的なことなど)を年齢や成長の段階に合わせた学年で複合的に教えられるシステムなので、決して恥ずかしいこと、タブー視されるような内容ではありません。

生徒に授業をする前に、まずカウンシル(行政機関)から専門スタッフが来て、先生方に向けて約2時間ほどの研修があります。その後に各学年で性教育の授業が行われます。授業は各学年毎年少しずつ進められていきます。内容は必須のものと選択式のものがあります。選択可能な授業が行われる前には、学校から家庭宛てに「自分の子どもを参加させたいかどうか」を問うレターが送られます。保護者は宗教・文化的な理由・家庭方針などによってその授業を受けさせるか選び、返答します。

はじめてセットで子どもの不安を和らげるアイデア

女の子にとっては大きな変化である「初潮・生理」については、女子だけ集められて生理についての説明やナプキンやタンポンの使い方を学ぶ時間が学校で設けられます。

筆者の娘も現在イギリスの小学校での5年生になり(Year 5 は9歳~10歳)、クラスメイトで生理が始まった子もいることから、生理について気になるお年頃のようです。気になる体の変化だけど「なんだか怖い」という不安の方が大きいみたいです。
そこで、「他のご家庭ではどうしているのか」と現地教員であり娘さんを持つママに聞いたところ、「初めての生理セット First Period Kit」というものを用意するのだそうです。日本でもポーチに生理用品を用意しておいてあげるという話を聞くこともありますが、それに似ていますね。イギリスの初めての生理セットには、そこにリップクリームのようなちょっと大人になった特別感を味わえるものや、チョコレートなどの小さいお菓子を入れて、不安な気持ちを少し楽しみな気持ちへ変換させる工夫をするのです。

あくまでもライフサイクルの一つの知識として

photo via unsplash

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欧米の性教育は進んでいる、早くから行われていると聞くこともありますが、実際のところイギリスでは「性教育」を特別なこととして教えるのではなく、人間が生きる上での知識として、また健全な人間関係・友人関係の構築、健康的なライフスタイル・ライフサイクルの延長上として性教育が学校で教えられるということです。

メディアやインターネットで間違った情報・過激な情報が子どもたちに届いてしまう可能性のある時代だからこそ、広い視野と知識の中の一つとして、正しい性教育が必要な時代になってきていると言えるでしょう。

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この記事のライター

いしこがわ理恵
いしこがわ理恵

在英16年目の2児の母。現在は日本語教育に携わる仕事とライター・イラストレーターとして活動中。興味の範囲が幅広いので、常にいろいろな方向にアンテナをはりつつ情報収集が日課です。ハッピー子育てに役立つ情報をみなさまにお届けできれば嬉しいです。Instagram 無料プリント @uk_warakado プライベート @rie_emily2023