インターネットやスマホの普及で、現代の子どもたちの生活は、私たち親世代が子どもだった頃とは、大きく異なる環境となっています。さまざまなことが便利なった反面、心身ともに成長段階にある子どもたちにとっては、それが大きく人間関係に関わったり、心や身体に影響したりします。また、利用の仕方によっては安全を脅かすことにつながる可能性もあります。
インターネットを安全に活用するためには、親子でネットリテラシーをしっかり学び、高めていくことが非常に大切です。
リテラシーの意味とは
「ネットリテラシー」や「メディアリテラシー」という言葉をお聞きになったことがありますか?リテラシーとは、英語でliteracyと書き、もともとは「教養がある」や「読み書きができる」という意味を持つ単語です。その意味から転じて、「情報や知識の活用能力」を指すようになりました。
メディアリテラシー
テレビやラジオ、新聞や雑誌などの情報を発信する媒体(四大メディア)や、近年著しく発展したオンライン(インターネット)メディアに関するリテラシー全般のことを言います。
総務省では、メディアリテラシーについて以下のように定義しています。
メディアリテラシーとは:
次の3つを構成要素とする、複合的な能力のこと。1.メディアを主体的に読み解く能力。
2.メディアにアクセスし、活用する能力。
3.メディアを通じコミュニケーションする能力。特に、情報の読み手との相互作用的(インタラクティブ) コミュニケーション能力。
▼メディアリテラシーについて詳しく知りたい方はこちらの記事もおすすめです
ネットリテラシー(インターネットリテラシー)
メディアリテラシーの中に含まれるネットリテラシーは、特にインターネットやSNS等の利用に関して、適切に利用するための能力や知識のことをいいます。
四大メディアから得られる情報に頼っていた受身の時代から一変し、現代はネットを使って誰でも発信者になれる時代です。信頼性・正確性の高い情報を発信することができるか、ネットユーザーとしてモラルのある行動をしているか、個人情報など安全性に考慮した利用ができているかなどが問われます。
また同時に、ネット社会では誰もが情報の受信者でもあります。発信されている情報を鵜吞みにせず、きちんと判断し取得できる能力があるか、適切に活用することができるか、本質を読み解いて分析することができるかという能力が問われます。
このネットリテラシーには、「情報モラル」と「情報セキュリティ」の観点があります。
情報モラル
インターネット利用で繋がる人の個人情報や人権、知的財産権等の権利を守り、快適なコミュニケーションをとるために不可欠なモラルのこと。
情報セキュリティ
クレジットカード情報や住所等の個人情報などを狙う悪質サイトやウイルスなどから身を守るための知識と対策のこと。
どうして子どものネットリテラシーが大切?何歳から学ぶべき?
四大メディアが主流だったころは、子ども達が年齢にそぐわない不適切な情報に触れたり、子どもが親の全く知らない人と交流するという機会はあまり多くありませんでした。しかしインターネットやSNSの普及によって世界が広がったことで、親の知らない情報や人物と関わる可能性が高くなったり、オンラインショッピングやゲームの課金など、金銭が絡むような問題も世界的に増えてきています。
近年では小学生でもスマホやインターネットを駆使する時代。親の知らない課金や人間関係のトラブルなどに遭遇してしまう可能性が無いとは言えません。子ども達自身が自分で身を守るためにも、親ができる対策を知るためにも、家族でネットリテラシー/メディアリテラシーを身につけておくことが大切です。
また、文部科学省によって打ち出された「GIGAスクール構想(2019年)」により、全国の公立・私立すべての小中学校で、一人一台を目指してタブレットを整備する動きが進められています。これに備えるためにも、小学校低学年からネットリテラシーについて学ぶ必要があると言えるでしょう。
上記のことも関連して、文部科学省では「情報モラル学習サイト」を公開しています。小学校低学年用、小学校高学年・中学生用、高校生用と年齢に合わせて作成されており、クイズに答えながら、ネットリテラシーの向上を図ることができます。
実際にあった子どものネットトラブルや問題
それでは、ネットリテラシーの低さが引き起こした問題の実例をお話したいと思います。今回は筆者が住むイギリスで実際にあったトラブルや問題ですが、ネット社会だからこその世界共通の問題点と言えそうです。
問題・トラブル例
■グループチャットで…
・グループチャットを作ったものの、そこから仲間はずれやイジメが発生するということが各学校で問題に。学校の先生が介入して会話の内容を確認し、該当生徒に注意をするという対応になったが、それは大人もショックを受けるような酷い内容だったそう。表情が見えない文字のやり取りでは、誤解を与えてしまったり感情的になったりしがちなので、炎上の原因に。
■ゲームの画像で…
・あるホラーゲームが一部の子どもの間で話題に。実際にゲームをプレイした子どもは少なかったものの、その中に出てくるキャラクターの外見がとても不気味で、一度見たらなかなか忘れられないような強烈なものだった。子どもたちは面白がって、この画像を送り合っていたが、そのうち「見たくないのに送られてきた」、「夜に思い出してしまって怖い」という子どもが出始めたことから、学校側が注意喚起の手紙(学校からの連絡プリント)を出す事態に。
■思春期になると…
・ティーンエイジャーのトラブル例では、交際中のカップルが上半身の写真などを送り合ったり、破局後のカップルが相手のプライベートな写真を勝手に公開してしまったりなど、その後を考えない行動を起こしてしまうトラブルも多くなっている。
ネット上に広がってしまった情報や画像を消すことは、不可能であることをきちんと考えることができず、一時の感情で行動してしまうようなネットリテラシ-の低さによるものと言える。
■身体的な不調も…
・体のトラブルや不調、脳への影響なども問題となっている。スマホ等の端末を長時間使うとストレートネックになったり、視力が落ちやすいとよく言われるが、他にも、画面を近い距離で見続けることによって、片目でものを見るのが癖になってしまう「片眼視」や、「アテンションスパン(集中力の持続)が短くなる」ことなども問題になっている。
TikTokなどの短い動画を日常からたくさん見ることに慣れてしまったり、Youtubeなどの動画サイトを閲覧する際に、最初の数分で飽きる・または興味がないと判断して次のコンテンツへ変えてしまうという観賞時の癖である。これはスマホ中毒の一種とも言われており、子どもたちの間でも増加中。
家庭でできる子どものネットトラブル対策や工夫は?
イギリスで子育てをする保護者へ「インターネットやスマホ、SNSを利用する際にどのような安全対策を行っていますか?」という質問をしたところ、各家庭で共通していたのは「スマホやタブレットを持たせる際に、まず家庭のルールを決める」「オンラインゲーム/SNSをする際の条件を決める」ということ。
条件の年齢に達するまでのルール・条件の例
・スマホの通話は必要な時だけ使う。家ではデータ通信を使わずにwifiを使用する。ゲームへの課金は子どもだけで行わない。(金銭的な問題を回避するため)
・寝る時間はスマホを寝室に持ち込まない。友達の返信は〇時から〇時までなど使用する時間を決める。
・ネット上で知らない人と話さない。個人情報を交換しないなど、ゲームのチャット欄等の利用にも十分気をつける。
・インスタ等のSNSを利用する場合は、親もそのアカウントをフォローするという条件でOKする。(裏アカウントを作るのは禁止)
など、子どもが安全に利用できるように、まずは親とルールを決めているご家庭が多かったです。
ネットリテラシーを身につけてネット社会を生きよう
子どもとネットリテラシーの話をしたり、ルールを決めたりするときは「めんどくさい」や「なんで僕/私だけ?」「〇〇君の家は、もっと長くスマホが使えるのに!」など、子どもが乗り気ではないこともあるかもしれません。しかし、ネットリテラシーを学んで身につけることや、家庭内のルールは「自分自身を守ること、周りを守ること」だという本来の意味をしっかりと理解させて、その必要性を伝える必要があります。
スマホのルールに関しては、我が家では以下の本がとても参考になりました。「スマホを欲しいと言うようになったけれど、適切な時期はいつだろう?」「もしルール決めに失敗したら?一度ルールを決めたら、変えるのは難しいのでは?」という疑問にもスッキリ納得のアドバイスが書かれている一冊で、大変おすすめです。
書籍名:子どものスマホ問題はルール決めで解決します
著者:石田勝紀
出版社:主婦の友社
ネットリテラシーを向上するといっても、インターネットに関するトラブルは多様化しているので、親子で学び始める際に、どこから始めたらよいか分からないと感じるかもしれません。
まずは、上記でもご紹介した文部科学省作成の情報モラル学習サイトを利用したり、「こども ネットリテラシー」等で検索してみてはいかがでしょうか。
子どもの年齢によっても内容が変わっていくので、成長に応じて、安全にネット社会を生きていく術を親子で話し合っていきたいですね。
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