「生きる」など、親世代も小さい頃から小学校などで触れてきた谷川俊太郎さんの絵本。谷川さんの絵本は、フランスでも翻訳され、子どもたちに親しまれています。今回は、フランスでも受け入れられている【谷川俊太郎さんの絵本】の魅力についてお伝えします。
フランスでも親しまれている谷川俊太郎さんの絵本
一方で、谷川さん自身の絵本もまた、筆者が住むフランスで多数翻訳・出版されています。谷川さんの絵本のどのような点がフランス人に受け入れられているのでしょうか?
フランスにおいて谷川さんの絵本が親しまれている理由について、ご紹介していきたいと思います。
フランス人にとっての谷川俊太郎さんの魅力とは
独特の世界観
それは【個性】があること。
誰かと一緒、同じこと、ありきたりなことは、あまり尊重されません。
絵本においても、個性豊かな作品が人気となることの多いフランス。
谷川さんの絵本はどの絵本も、ほかの絵本にはないユニークな世界観が詰まっています。独特の文章、音、色彩、絵、デザインを兼ね備えた谷川さんの絵本が受け入れられている理由のひとつなのかもしれません。
子どもの想像力を刺激する
谷川さんの絵本には、豊かなカラーとさまざまなモチーフがちりばめられています。
そして中には抽象的で、一見すると何だかわからないようなデッサンも。大人からすると、「よくわからない絵だな」「文章が少なくて、絵も曖昧だな」と思ってしまいそうなものもあります。しかしそれらが上手い具合に、「このデッサンは何だろう?」「何をモチーフにしているのだろう?」といった疑問を抱かせ、子どもに想像する余地を残しています。
子どもの色彩感覚を刺激し、子どもが子どもらしく想像力を発揮できる要素がつまっている点も、フランスでも愛される理由のひとつだといえるでしょう。
言語を飛び越えた「人間性」
そのあたりも、言語を越えて愛される理由かもしれません。
フランスでよく読まれている谷川さんの絵本
「もこもこもこ」
著者:谷川俊太郎(作) / 元永定正(絵)
出版社:文研出版
擬音と絵がメインで2~3分もあれば読めてしまいます。大人からすると、「はたしてこの絵本は費用対効果があるのかな?」と計算してしまうかもしれません。でも、子どもの想像力を大人が制限してしまわないようにするための、しかけがたくさんある絵本で、何度も何度も味わえる奥深さがありますよ。
「あな」
著者:谷川 俊太郎(作) / 和田 誠(画)
出版社:福音館書店
ただただ穴を掘り続ける主人公の「ひろし」と、彼に「なぜ」「どうして」穴を掘るのかを問いかける大人との対比が上手く描かれている作品です。
まるで大人が忘れてしまった大切な何かを呼び起こしてくれるような、深いメッセージがつまっていて、子どもだけでなく大人も楽しめる絵本です。
子どもの世界観が、詩と哲学を交えたような独特なスタイルで描かれている点がフランスで人気です。
また、絵本の見開きが通常のものとは異なり、カレンダーのように下から上へ、ページをめくるようになっている点も、オリジナリティがあり、フランスでも受け入れられているようです。
「わたし」
著者:谷川 俊太郎(文) / 長 新太(絵)
出版社:福音館書店
「わたしは誰?」
「わたし」は「わたし」でも、ほかの誰かにとっては「妹」であり、「友だち」でもあり、動物からしたら「人間」だったりします。
谷川さんの「わたし」は、子どもが自分を主体とした人間関係、社会関係について学ぶのにとってもよい絵本。
普段問うことのない「わたし」について、疑問を投げかけている点がフランスでも受け入れられているようです。
読んだあと、思わず自分の子どもに「あなたは誰?」と問いかけたくなるような絵本です。
子どもの感性、選択を尊重する
図書館では、小さい子どもに好きな絵本を選ばせているお母さんをよく見かけます。
日本では、親心から、子どもにはよい本、評価が高い本、人気の本を読んで欲しいと思うパパママも多いでしょう。でも、一歩引いてみて、子どもが興味を持ち、自分自身で手に取る本に注目してみるという姿勢も大切ではないでしょうか。
最後に
一見すると大人には意味がわからなくても、子どもの感性に委ねるようなしかけがある谷川さんの世界が、フランスでも受け入れられているのかもしれませんね。