2022年03月07日 公開

非認知能力を育む4歳児の遊び

非認知能力は人間の基礎となる力として日本でも注目を集めています。非認知能力は自己肯定感、自分を信じる力、がんばる力、自制心、強調性など人が生きていく上で欠かせない力です。この連載では遊びを通して非認知能力を育むことにフォーカスしていきます。今回は4歳児の非認知能力を育む遊びについてご紹介します。

日本では今、偏差値やIQなど数値化できる認知能力とは真逆の力である「非認知能力」が注目を集めています。

非認知能力は“生きる力の基礎”とも呼ばれ、自己肯定感、やり抜く力、自制心、協調性などといった目には見えずに数値化できない力の総称のこと。人が豊かな人生を送る上で欠かせない力とも言い換えられ、非認知能力に数えられる力は200以上にも及びます。

2020年3月の学習指導要綱では、非認知能力のことを“生きる力”と称し、その大切さを大きく打ち出しました。

もちろん認知能力も今まで通り大事な力であることは変わりません。認知能力は、非認知能力が高まることで一緒になって上がっていくという性質も興味深く、世界では非認知能力の高さが将来の学歴や所得にまで影響してくるという研究結果が既にあります。

非認知能力を育むことは、言い換えるなら人間としての心の土台作り。この連載では、さまざまな視点から子どもの非認知能力を伸ばすことついて考えていきます。

今回は、4歳児の非認知能力を高める遊びについてご紹介します。

4歳児は心身的な成長が顕著に見られる時期

4歳児は自分で身の回りのことができるようになったり、今までよりも益々手先が器用になってくる頃。また、運動神経も発達して以前よりも機敏な動きができるようになってきます。

基本的な生活習慣が身につくことで、パパママは以前よりも手がかかることは少なくなってくるかもしれません。しかし一方で、「魔の4歳児」という言葉があるように、反抗的な態度を取ったり、大人としては理解不能な行動が見られて、戸惑うことも増えてくるかもしれません。

4歳頃の子どもは、自分はできるという自立心や自信も芽生える一方で、まだうまくできないことに苛立ちやフラストレーションを抱えているケースがよく見られます。子ども同士のトラブルが発生しやすくなる時期で、子どもなりに自己主張のさじ加減やお友達の気持ちを理解する力を学んでいる時期なのです。

もちろん発達の差は子どもによって違い、反抗期が見られずに育つお子さんもいます。子どもの発育は100人いれば100通りなので、比較しないことも大事です。

4歳児は自信、やる気、頑張る力、好奇心などを育みましょう

4歳児はできることが増えてくる時期。今までの遊びをよりアレンジしながら、子どもにとって楽しくて刺激のある遊びを取り入れてみましょう。

“動的な遊び”“静的な遊び”をうまく取り入れ、子どものやる気に火を付けるのです。子どもが興味を持ったことはあたたかく見守り、納得いくまでじっくりと遊ばせてあげる環境も大切。

子どもにとって豊かな遊びを通じて、自己肯定感や自分を信じる力、頑張って物事を成し遂げる力、好奇心、社会性などを育んでいきましょう。以前よりも発展的な遊びをたくさん経験することで、子どもは心身ともにたくましくなっていきます。

親はより子どものサポートといった役割と考えて、手を出し過ぎずに心を配るといいかもしれません。それでもまだまだ4歳児、危険なことや間違っていることはきちんと教えてあげる姿勢も大切です。

4歳児にオススメの非認知能力を育む遊び

①オリジナル紙芝居遊び

4歳ごろになると手先が器用になり、クレヨンや絵の具などで描けるものの幅が広がってきます。できあがった作品を使って紙芝居仕立てにすると、さらに豊かな遊びへと発展します。この遊びでは、大人が考える「こうあるべき」や起承転結などはいりません。子どもの柔軟な発想でいろいろな物語を親子で楽しんでみてください。この遊びは、子どもの表現力想像力好奇心を刺激します。

②牛乳パックを使った変身工作

牛乳パックの空き箱が出たら捨てないで!廃材は子どもにとって良質なおもちゃのひとつ。楽しい工作遊びに発展できますよ。特に牛乳パックは色々なアイテムに変身させることが可能です。

例えば、牛乳パックを横半分に切って、穴を開け紐やリボンを通したらポシェットに、輪ゴムを弦に見立てればギターにも変身します。そのほか、子どもの感性を活かして、廃材、折り紙、シールなども組み合わせて自由に創作してみましょう。この遊びは、子どもはやり遂げる力想像力自尊心などを育みます。

③散歩をしながら自然発見マップ作り

まずは散歩中にどんぐりや木の葉など子どもと一緒に持ち帰ってみましょう。その後は、大きめの紙に大人がかんたんな地図を描き、見つけた場所を子どもと相談しながらどんどん貼るだけ。家の周りにも意外と自然のものがあることへの気づきにもなります。自然に触れる遊びは、子どもの科学的好奇心を育み、自己肯定感好奇心を豊かにする力を秘めています。

④お店屋さん&お料理屋さんごっこ

子どもは大人の真似をするのが大好き。料理をしていたり、買い物をしたりしているパパママの姿を想像以上に見ているものです。

ごっこ遊びは、そんな普段の観察力を存分に発揮できます。子どもを主役に、お料理作りや、スーパーのレジ打ちごっこなどを楽しみましょう。ごっこ遊びのなかでは、リアルさを求めてパパママもお客さんになりきるとより楽しくなります。

「そんな言葉知ってたの?!」と語彙力の豊富さに気付けたり、わが子ならではの視点や発想に気づいたりと、さまざまな発見があるかもしれません。

お友達と一緒に楽しめる年頃ですが、パパママと遊んだ記憶は特に心に残るもの。この遊びではマネジメントスキルコミュニケーション能力行動力判断力などを刺激します。

⑤身近な食材を使った親子クッキング

旬の野菜やくだものを使って、子どもと一緒におやつ作りに挑戦してみましょう。子どもは、料理やお菓子を作ってくれるパパママのことを憧れているもの。簡単な料理に挑戦することで、憧れが自分の体験へとつながり自己肯定感も高まります。

いちご飴や焼き芋作りがおすすめです。頑張って作ったおやつは、その達成感のおかげもおあり人一倍おいしく感じるはず! 苦手な食材も「食べてみよう」と思えるかもしれません。料理体験を通して、自分でなにかを作り上げることへの幸福感を感じることができるでしょう。また、自信やりぬく力を育みます。

⑥絵本を使ってクイズ大会

絵本はいくつになっても楽しめます。4歳ごろになると大好きな絵本ができ、登場人物を覚えていることもあるでしょう。そんな時期にぜひ、絵本を使ったクイズ遊びはいかがでしょうか?

「この絵本に出てくる動物なんだっけ?」「くまちゃんのお名前なんだっけ?」「この子何が好きなんだっけ?」など、その絵本にちなんだことをクイズとして出して遊んでみてください。難しさではなく、子どもがワクワクすることや正解することが大切。

正解したら「ピンポーン」と笑顔でちょっとオーバーなくらいに褒めましょう。絵本を読み、そこから発展させた遊びは、自己肯定感想像する力表現力などを培います。

⑦季節の行事を楽しもう

季節の行事にまつわるエッセンスを生活の中に取り入れてみましょう。日本の暦に目を向けて、親子で一緒に学びながら季節を過ごすのもおすすめです。例えば節分であれば鬼のお面を作ったり、ひな祭りであればお雛様を色紙で折ってみるなど、行事を子どもの遊びに繋げるだけでOK。

大変な準備をしなくても大丈夫!日々のアクセントになるような楽しみ方でも、子どもの心に深く思い出として刻まれ、大きくなってからも人生を支えてくれる宝物になるでしょう。季節の行事を取り入れた遊びや過ごし方は、子どもの探究心多様性への関心を育み好奇心を向上させる豊かな遊びです。

⑧異年齢の子どもと関わる遊び

4歳頃からお友達との遊びがより発展したものになります。同年代のお友達はもちろんのこと、年上、年下のお友達と遊ぶことも子どもにとっては良い刺激になったり、子どもなりに考えることもあったり、成長につながります。

幅広い年齢のお友達と一緒に遊ぶ機会を見つけてあげるとよいでしょう。自分の思った通りにいかなかったり、ついていけずに悔しい思いをしたり、はたまた優しくされてうれしくなったり…同年代のお友達と遊ぶときとはまた違った経験をすることも。異年齢の子どもと遊ぶことを通して、社交性敬意思いやり自己抑制などの力を身につけていきます。

4歳児は子どものやりたいを応援する時期と考えてみては?

たくさん成長が見られる4歳。「できるようになった!」と感動すると同時に、難しい年頃でもあるので気持ちが通じ合わずに親子でぶつかってしまうこともあります。そんなときは「もう4歳なのに」と思わずに、「まだまだ4歳児」と考えてみてはどうでしょうか。

余裕があるときはなるべく子どもの目線に立って考え、可能な限り寄り添いながらわが子を応援する気持ちで見守るのがベター。子ども自身も自分の思っていることをうまく伝えられずに、もどかしさやイライラを抱えています。大人でもそんなときはありますよね。パパママが「どうしたの?」と優しく聞いて、子どもなりに気持ちを言葉で表現できるように待つことも大切です。

自分の考えや気持ちを相手に伝えることは、今後の人生においてもとても重要なこと。子どもにとっては、すべてが大人になるための練習につながります!大人は、冷静で俯瞰的な姿勢でいる忍耐力も必要になってくるでしょう。

また、気持ちの言語化が難しい場合に、「悔しかったね」「辛かったね」「悲しいよね」と代弁することも手助けになります。積極的にお子さんを抱きしめて甘えられる環境を整えてあげましょう。「パパママは私の気持ちをわかってくれる存在なのだ」と安心感につながります。

親の言いなりにすること、過度に厳しいしつけをすることは、長い目でみると子どもに良いことはあまりありません。それよりも、親が子どもの心に寄り添う姿勢を通して、相手の気持ちを尊重しあうことの大切さを教えてあげることの方が重要ではないでしょうか。そのようなやりとりをしていく中で、反抗期も気づいたら過ぎていたなんてことはよく聞く話です。

「魔の4歳児」も長い人生の中ではほんの一時的なもの。ひとりの人間として、子どもの心を尊重しながら、試行錯誤をして向き合っていけると良いですね。

4歳児の反抗は成長している証と受け止めて

パパママも忙しい毎日の中で、子どもが反抗したり訳のわからない態度を取ると苛立ちを覚えるのも当然のこと。そんなときには、「〜されたら嫌な気持ちになるからこうして欲しい」、「〜な言い方で教えて欲しいな」と冷静にポジティブな声かけをすることも大事です。

「魔の4歳児」も時期的なものですから、この時期にも必ず終わりがきます。

余裕があれば「反抗しているな、成長している証だ!」とつぶやいてみてはどうでしょうか。そのタイミングで自分の子育ての頑張りを褒めてあげてもいいくらいです。子どもの反抗期は当然のことですし、今まで子育てを頑張ってきたことをパパママはもっと評価していいと思いますよ。

【参考文献】
『非認知能力を育てるあそびのレシピ(大豆生田 啓友・大豆生田 千夏)』講談社
『非認知能力が育つ 3〜6歳児のあそび図鑑(監修:原坂一郎 協力:いこーよ イラスト:モチコ)池田書店


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この記事のライター

大曽根 桃子
大曽根 桃子

ちょうどいい働き方を模索し続けている、フリーランスライター&エディターです。子どもの何気ない遊びの中に無限の可能性があると信じていて、非認知能力について勉強中。また、お母さんが笑顔でいることを大切に、積極的に自分のご機嫌を取る日々を送っています。趣味は、テニス、銭湯、サウナ、キャンプ、旅行、美味しいものを食べることなど。10歳男子、6歳女子とふたりの子どもがいます。