教育界でもオンラインやペーパーレス化が進んでいますが、子どもにとって一番大切なのはやはり多くの経験をし、様々な感情を知ることでしょう。子ども同士で秘密を共有したり、クラスで団結することの素晴らしさを実感したり、私たち大人にとってもそんな経験は忘れられない大切なものです。
今回は誰もが経験する小学校でのできごとを温かく丁寧にえがいている素敵な作品をご紹介します。
挿絵のきれいな海外児童文学5選~絵本を卒業したばかりのお子さんへ~
良質な児童文学を子どもにすすめ、好奇心や協調性をはぐくもう
小学校低学年になると読む本の幅が広がります。この時期に良い本と出会うことはお子さんの心の成長につながるでしょう。良質な文学からは多くのことを学ぶことができます。
人とのふれあいが希薄になりつつあるこの時代、本から好奇心や協調性を学ぶことでお子さんの不足した経験を補ってみませんか。
良質な児童文学を多く出版されている岡田淳さん
国内にはすぐれた児童文学がたくさんあります。国内の児童文学には、母国語で書かれており文化や生活習慣も同じなため、登場人物の感情を理解しやすいというメリットがあります。登場人物の名前も親しみやすいでしょう。
ご紹介したい文学は数多くありますが、今回は子どもの心に寄りそう素敵な物語を数多く出版されている岡田淳さんの著作にしぼり、小学校低学年向けに5選ご紹介いたします。
小学校教員の経験を持つ作家岡田淳さん
岡田さんは大学卒業後、38年間図工の教員として小学校に勤務していました。作品は小学校が舞台になっているものも多いです。特定の人物や経験をモデルにすることはあまりないと語られていますが、長年の教員生活で見たこと、感じたことが作品の一部に活かされているのでしょう。
『図工準備室の窓から』というエッセイでは、教育について、教員生活について詳しく語られています。子どもを見る目が温かく、独特のユーモアある素敵な感性を持っておられる岡田さんだからこそ、素敵な文学を生み出すことができるのでしょう。
こちらのエッセイもとても楽しく、子どもと接するうえで参考になることもたくさんあります。小学生の子どもを持つお母さんにおすすめです。
子どもと長く接していたからこそ書けるわくわくする物語
岡田さんの作品は子どもを常に観察し、子どもの心に寄り添ってきたからこそかける物語です。子どもをひきつけてやまない想像力あふれるストーリーに大人も思わず引き込まれます。きっと楽しく魅力的な授業をされる先生だったのでしょう。
感動的でほろりとさせられるけれど、時々くすっと笑ってしまうようなユーモアもあり…。きっと岡田さん自身子どもの心を忘れていない大人なのだろうと感じます。
仲間との団結や友情が基盤となるストーリー
エッセイ『図工準備室の窓から』を読むと岡田さんの暖かい人柄がよく理解できます。人と人のつながりを大切にし、温かいまなざしで子どもや同僚を包み込んでいる。作品は仲間との団結や友情をモチーフにしたものが多いです。
欧米風の自己主張をはっきりする教育も大切ですが、協調性をもち仲間と足並みを揃えることの大切さを学べるのは日本の小学校だけではないでしょうか。彼の作品を読むとどんな子どもも教室にいてもいい、という安心感や暖かさを感じます。
岡田さんの作品を読むことで、人を暖かく包み込むことのできる愛情あふれる人間に成長することが期待できますね。
岡田さんの主な作品
岡田淳さんといえば、まず最初に思い浮かべるのが『こそあどの森』です。全11冊のシリーズもので、イギリスの冒険小説「つばめ号とアマゾン号」がモチーフになっているようです。『つばめ号とアマゾン号』も子どもの好奇心を刺激するわくわくする素晴らしい作品なのでおすすめです。
他にも、『びりっかすの神さま』、『2分間の冒険』、『選ばなかった冒険』いずれも高学年向けですが、人と人とのつながりの大切さや協力して何かを成し遂げることの尊さを学べる素晴らしい作品です。
小学校低学年におすすめする作品
では、岡田さんの作品から小学校低学年におすすめできる作品をご紹介いたします。少し長めのものはご家族の方が読み聞かせてあげると、自分で読み進めることが難しくても楽しむことができるでしょう。
大人も一緒に岡田さんの世界を楽しんでみませんか。
学校ウサギをつかまえろ/岡田淳(偕成社)
岡田さんの作品にしては珍しく現実的なお話しです。学校で飼育しているウサギが逃げ出してしまい、みんなで協力して捕まえる。あらすじを書いてしまうと面白味がないですが、岡田さんの手にかかると心温まる魅力的な物語になるから不思議です。
ガリ勉だったり、スポーツ万能だったり、話をしなかったり…、それぞれこんな子クラスに一人はいそうだなと思わせる子ばかり。みんなと心を通わせられない子も少しずつ心を開いていく、そんな心の揺れ動きも丁寧にえがかれています。
ムンジャクンジュは毛虫じゃない/岡田淳(偕成社文庫)
山で新種のお花を見つけた小学生が主人公です。新種のお花を見つけたことにより、花が乱獲されてしまう。そしてその花しか食べない架空の生き物「ムンジャクンジュ」。
最初は友だち3人でムンジャクンジュを守っていますが、やがてクラスを巻き込み、町の人たちを巻き込み…ムンジャクンジュを守るため、クラスが団結していく様子に心が温かくなります。
星モグラサンジの伝説/岡田淳(理論社)
作者がモグラから聞いて本にする約束をしたという、伝説のモグラサンジの物語。サンジはものすごいスピードで成長し、目の前にあるものを手あたり次第食べてしまいます。行きたい場所に向かって猪突猛進に突き進み、手段を選びません。その姿はユニークでもあり豪快でシンプル。
やりたいことを思った通りやっていい、そんな作者のメッセージを感じます。
何物にもとらわれないサンジの自由さ、豪快さは制約のある日常に息苦しさを感じている大人にもおすすめです。
雨やどりはすべり台の下で/岡田淳(偕成社文庫)
アパートの隣人、雨森さんという風変わりなおじさんとの思い出を子どもたちがそれぞれ語るオムニバス。どのお話も幻想的で摩訶不思議なのだけれど、じんわりと心を温めてくれる優しさがつまっています。子どもたちの「雨森さんが大好き!」という気持が本の中いっぱいにあふれています。
ラストシーンは胸がいっぱいになることまちがいなし。岡田さんの本は同世代の子どもだけ同士だけでなく、大人との心の交流が物語の奥行きを深めているポイントです。
こそあどの森の物語シリーズ/岡田淳(理論社)
こそあどの森に住む住人たちが活躍するシリーズもの。岡田さんの代表作と言っていいでしょう。物静かな少年スキッパ―、湯わかしの家に住む仲良し夫婦ポットさんとトマトさん、木の上の屋根裏部屋に住む作家のトワイエさん、ガラスの家に住むスミレさんとギ―コさん。そして遊ぶのが大好きな双子。
キャラクターが生き生きとしていて、物語を読むたびにこの森の住人に会い、一緒に冒険をした満足感が得られます。それぞれが独立した物語で、少しずつテーマやテイストが違うのも面白いところ。一冊読んだら全巻制覇したくなることでしょう。
大人も岡田さんの世界観にひたってみよう
いかがでしょうか、どれも自信をもっておすすめできる素敵な本ばかりです。
お子さんの心の成長にはもちろんですが、仕事や育児で忙しいお母さんやお父さんにも一緒に読んでいただきたいです。心が暖かく穏やかになり、些細な日常を楽しみ、わくわくどきどきした気持ちを取り戻せることでしょう。
少し長いものもありますので、読み聞かせて一緒に楽しんでみてください。