2017年04月25日 公開

全ての子どもにミュージアム体験を応援する「Museum Start あいうえの」!

東京・上野公園にある9つの文化施設を訪れる機会を増やすために、子どものミュージアム・デビューをサポートするプロジェクト「Museum Start あいうえの」。子どもの時から美術館や博物館を訪れ、本物に触れる意義や本物の学びについても伺いました。

東京・上野公園にある9つの文化施設を訪れる機会を増やすために、子どものミュージアム・デビューをサポートするプロジェクト「Museum Start あいうえの」。子どもの時から美術館や博物館を訪れ、本物に触れる意義や本物の学びについても伺いました。

「Museum Start あいうえの」とは……

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東京藝術大学特任准教授、伊藤達矢さん。
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すべての子どもにミュージアム体験を届け、特にはじめてミュージアムを楽しんでもらうことを手助けする活動を提案するプロジェクト「Museum Start あいうえの」。

東京都美術館と東京藝術大学が推進役になって行っているこの取り組みの目的や詳しい活動内容について、東京藝術大学特任准教授の伊藤達矢さんにインタビューしてきました。

伊藤達矢さんはこの他に、主に地域で行われるアートプロジェクト、福島藝術計画×Art Support ToHoku Tokyoなど、数々の多様な文化プログラムの企画立案・運営に携わっています。

「Museum Start あいうえの」の目的と狙い

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画像提供:Museum Start あいうえの

伊藤(以下敬称略):このプロジェクトは2013年にはじまり、今年で5年目になります。

東京・上野公園には、動物園と図書館、博物館や美術館、音楽ホール、芸術大学など9つの素晴らしい文化施設があります。ひとつの公園にここまでバラエティに富んだ施設が集約しているのは、世界的に見てもここだけだろうといわれています。上野公園ならではの価値を顕在化させていくのが、「Museum Start あいうえの」の狙いのひとつです。

特に「大人と子どもが共に学び合える場所」として上野公園の価値を届けたい、そのためにまずは「子どものミュージアム・デビューを応援する」というきっかけを提供しています。

「Museum Start あいうえの」のメインターゲットは子どもです。子どもの体験を通して、保護者も美術館や動物園、図書館といった館種の違う文化施設を横断的に活用してもらうことも狙いです。

中でも一番おすすめしたいのは各館の常設展示室です。「あいうえの」もプログラムを用意していますが、是非家族で常設展に足を運んで欲しいですね。

本物との出会いが本物の学びにつながる!「アクティブ・ラーニング」

伊藤:美術館や博物館にある本物と出会う事の大切さを伝えたいという思いがあります。

子どもたちにとっては美術館や博物館の本物より、学校の教科書に掲載されている土偶や屏風、絵巻物が身近に感じられるものになってしまっています。でも実は逆で、本物を調べたり観察したりして、時代や目的を推測・考察した中で、多くの人が間違いなくそうじゃないかといわれたものの積み上げが歴史を作っているのです。

誰かが作ったものを暗記するのが歴史ではなく、残されたものをよく見て、よく考えて、それを言葉にして共有していく中で、歴史は更新され、真実や本当のことが形作られているわけです。

そういう本物に出会える場所で、よく見て、そこで感じたものを共有すること。それが今生きている人間がタイムリーに次の時代を更新させたり、つながりを作っていくことだったりします。

多彩なプログラムを用意

「ミュージアム・トリップ」

「ミュージアム・トリップ」

画像提供:Museum Start あいうえの

伊藤:軸となる活動は学校・教員向けの「あいうえの学校」とファミリー向けの「あいうえのファミリー」のふたつです。

「あいうえの学校」の「スペシャル・マンデー・コース」というプログラムは東京都美術館の休室日に、生徒をクラス単位で招待し、アート・コミュニケータと一緒に作品を鑑賞する対話型の授業です。

「あいうえのファミリー」の「うえの!ふしぎ発見」というプログラムでは、各美術館や博物館をつなぐ内容を用意しています。基本的に保護者と子どもは別々に活動し、子どもはアート・コミュニケータと行動します。

アート・コミュニケータ(愛称:とびラー)は子どもたちの声に耳を傾け、「対話型の鑑賞」を行うので、いわゆるギャラリートークとは異なります。とびラーは、東京都美術館と東京藝術大学が連携して行う、アートを介してコミュニティを育む事業「とびらプロジェクト」の参加者。会社員や教員、主婦の方など約120名で構成されています。

また、「ミュージアム・トリップ」というプログラムでは、児童養護施設で暮らす子どもたちや、経済的に困難な状況にある家庭の子どもたちを美術館や大学に招待しています。誰でも、鑑賞する体験を通して自分の価値観を表現でき、相手の表現を受け止める心を育んで欲しいというコンセプトに基づいています。このプログラムでは弱者支援という意味だけではなく、人々の多様性を認め合う包摂的な社会的価値観を育てて行きたいという思いがあり、今後一層力を入れていきたいと考えています。

これまでミュージアムは、何かを見に行く場所、受け取りに行く場所というイメージがありました。しかし、今の成熟した社会にもっとフィットさせるためには、何らかの価値を交換しに行く場所、新しい何かにもっと気づきあっていく場所、人間同士が深く関わりあっていけるようなプラットフォームになればいいなと感じています。

ファミリー向けプログラムの募集と概要

伊藤:その他にも、さまざまなテーマでアート・コミュニケータと一緒に鑑賞する中高生向けのプログラムを実施したり、冒険のコツを伝授するデビュープログラムの「あいうえの日和」などがあります。また、一度参加した方は「あいうえのメンバー」になることができ、何度でも上野公園をくり返し楽しむプログラム「あいうえのスペシャル」に参加することができます。

基本的に子どもはすべて無料です。小学校1年生~高校3年生が対象となります。

プログラムについて、詳しくはwebサイトをご覧ください。

冒険の道具「ミュージアム・スタート・パック」

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実際に小学5年生(当時)の男の子が「ビビハドトカダブック」に書いたページ

画像提供:Museum Start あいうえの

伊藤:プログラムの参加者全員に「ミュージアム・スタート・パック」をプレゼントしています。

プログラムでミュージアムの楽しさを知った子どもたちが、再び上野のミュージアムを楽しめるよう、冒険の道具として贈られています。

肩掛けバッグに、ミュージアムの基本情報やルール、そして体験を深められる楽しみ方のヒントが掲載された「ビビハドトカダブック」が入っています。スクラップブックとして使えるページもあり、入場券を貼ったり、感想を書いたり、その後調べたり大切に感じたことを記録できます。

また、各ミュージアムでブックの表紙を見せ、秘密の呪文を唱えるとそれぞれ異なるデザインの缶バッヂを集められる仕様です。

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1年間に2,000冊配布されていますが、子どもにのみ無料配布。また販売もしていないとのこと。
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webサイトで便利なコンテンツも

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伊藤:「Museum Start あいうえの」のwebサイトは活動内容を紹介したり、プログラムの参加者募集をしたりするためだけではありません。

各館でどういうプログラムや展覧会が楽しめるかを一度に見られます。こうすると、最初は動物園に行って、次に博物館のこの展示、など組み合わせて行きやすくなります。どれも大きい施設ですが、せっかくなので、幾つか一度に訪問できる機会を作れたらと思いました。

早速使ってみよう!

まずは「Museum Start あいうえの」webを活用しながら上野公園へのお出かけを楽しんでみてくださいね。対象年齢で機会が合う方は是非プログラムへの参加もおすすめです。また、保護者の方向けに一緒に子どもを連れて行く際のミュージアムの楽しみ方のコツも案内していますよ。

Museum Start あいうえの

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この記事のライター

志田実恵
志田実恵

エディター/ライター。札幌出身。北海道教育大学卒業(美術工芸)。中高の美術教員免許所持。出版社でモバイル雑誌の編集を経て、様々な媒体で執筆活動後、2007年スペイン留学、2008〜2012年メキシコで旅行情報と日本文化を紹介する雑誌で編集長。帰国後は旅行ガイドブック等。2014年6月に娘を出産。現在は東京で子育てしながらメキシコ・バスクの料理本の編集のほか、食、世界の子育てなどをテーマにwebを中心に活動中です。