海外の秋のイベントと言えば、何を思い浮かべますか?おそらく多くの方が、ハロウィンを最初に思い出すと思います。私もイギリスに来るまではそうでした。ところが、イギリスに来て、秋にはもうひとつ歴史的なイベントがあることを知りました。それが、ガイ・フォークス・デーです。
日本では花火と言えば夏に上がることが多いと思いますが、イギリスでは花火は秋。特に11月のイメージが強いのは、この歴史に関係しているからです。
今回の英国すくすくレポは、イギリスを語るのに忘れてはならない「ガイ・フォークス・デー」について、そして秋の楽しみ方についてご紹介します。
イギリスで子育てして驚いた!違いを感じた!体験談【英国すくすくレポ】
そもそも、ガイ・フォークスとは?
ガイ・フォークスとは、人物の名前です。しかも今で言うところのテロリスト!
さて、彼は何をしたかというと・・・
当時のイギリス国王ジェームス1世は、英国国教会を優遇し、カトリックを弾圧する政策を進めていました。それに憤慨したカトリック教徒だったガイ・フォークスは、首謀者のロバート・ケイツビーとその過激派全13人で、1605年11月5日、ロンドンにある国会議事堂(ウェストインスター宮殿。有名なビッグベンがあるところ。)で行われる国会の開会式を爆破し、国王や国会議員の多数を占める国教会の信徒らを暗殺しようと計画しました。
国会議事堂の地下に爆薬を隠し、実行の時まで身を潜めていたガイ・フォークスでしたが、密告により爆破は未遂に終わり、彼は逮捕(のちに処刑)されました。
この爆破暗殺『未遂』事件を記念して、今なお行われるお祭りが、ガイ・フォークス・デーです。ガイ・フォークス・デーは、別名ガイ・フォークス・ナイトや、ボンファイヤー・ナイトとも呼ばれます。
ボンファイヤーとは、大きなかがり火のこと。事件当日、この陰謀が失敗したことを火を焚いてお祝いしたことから、この風習が始まりました。爆破未遂で終わったことを、花火(火薬)・かがり火を使って祝うとは、なんとなく不思議なような、皮肉なような気もしますね。
現代でも、子どもたちは「Remember, Remember, the Fifth of November」というフレーズで、この11月5日の日を覚えます。
ガイ・フォークス・デーの祝い方
地域やご家庭によっても違いますが、現代では11月5日当日、そして11月初旬は花火を楽しむ時期となっています。さまざまな場所で打ち上げ花火イベントが開催され、チケットを買って見に行きます。筆者が住む地域では、学校の校庭で花火を上げ、出店などが設置されるファミリーフレンドリーなイベントとなっています。
他にも、ロンドンや他の地域では、打ち上げ花火の他、ガイ・フォークスのお面をつけての仮装行列が行われたり、ガイ・フォークスの人形をかがり火で焼くイベントが行われるところも。各地それぞれ、お祝いの仕方は少しずつ違うようです。
ガイ・フォークスをイメージしたと言われるお面ですが、白い顔に髭、そしてうっすら微笑んでいる表情がなんとも不気味…。映画などにも登場したりするので、見たことがある方もいらっしゃるかもしれません。ところで、このお面がガイ・フォークス本人に似ているかというと…似ていません!似ているところと言えば…眉毛の角度と髭くらいでしょうか。(笑)
イギリス南部にあるルイスという町は、英国最大規模のガイ・フォーク・デー(ナイト)のイベントで有名な地域です。当時の服装に仮装して、大きな松明を持ってパレードが行われるのを見ると、タイムトリップしたような感覚になりますよ。
秋・冬の花火も、なかなか良いです
夏にイギリスで花火を見る機会はほとんどありません。日本生まれ日本育ちの筆者は、夏の花火が恋しいときも…。夏の風物詩である日本の花火は、どこの地域のを見ても大規模で迫力がありますよね。
イギリスでは、花火は主にガイ・フォークス・デー当日、そして11月中に多く見られます。また、大晦日にも花火が上がります。イギリスの秋はコートが必要なくらい冷えるので、最初は「寒い時期に花火なんて…」と、日本の夏の花火と比べて恋しがっていました。ですが、慣れてくると、寒い時期に白い息を吐きながら家族で夜空を見上げるのもなかなか良いものだと気づきました。「冬の空は空気が澄んでいて、星がきれいに見える」とよく聞きますが、澄んだ空気に色鮮やかな花火も意外と良いものです。花火が上がる日が、複数の会場で被る場合もあり、左方向にも花火、右方向にも花火と、空がにぎやかになるのもこの時期ならでは。
イギリスの花火と言えば、会場で上がる打ち上げ花火だけではなく、各家庭で打ち上げ花火をすることも多いです。筆者の近所でも、庭から打ち上げ花火を上げるご家庭があるので、家の中にいてもまぶしい閃光が…!庭で打ち上げ花火とは、お国柄の違いだなぁと驚きつつも、文化を楽しんでいます。
花火の時期の違いで、イメージや思い出にも違いがある
先ほどもお話ししたように、日本の花火と言えば夏ですよね。浴衣を着て花火を見に行って、出店でかき氷を買ったり、庭先で花火を見ながらスイカを食べたり。
逆にイギリスでは、花火の時期が秋冬なので、スープやハンバーガーやホットドッグを食べたりすることが多いです。そして、浴衣ではなくコートや手袋などで防寒します。
家族で花火の思い出を話したときに、「子どもの頃に、両親に花火を身に連れて行ってもらって、寒空の中に食べた温かいスープはおいしかったなぁ。」と夫が言ったとき、カルチャーショックでした。
そんな中、日本とイギリスの思い出の共通点を見つけました。それは「りんご飴」です。日本の出店でもお馴染みのりんご飴は、この時期のイギリスの出店でも定番です。りんご飴はTofee Appleと呼ばれ、ガイ・フォークス・デー(Guy Fawkes Day)/ボンファイヤー・ナイト(Bonfire Night)と、Tofee Appleのキーワードで調べてみると、イギリスのいろいろなレシピが出てきますよ。
娘たちは夏休みに日本へ里帰りして夏の花火を見たり、秋にはイギリスでガイ・フォークス・デーの花火を見て育っているので、大人になったときにどんな思い出を語ってくれるのだろうかと考えたりします。
最後にご紹介するのは、イギリスの方が、このイベントについての歴史やお祝いの仕方を説明しているビデオです。最後の方にはTofee Appleの作り方も見せてくださっています。イギリス英語とともに、ぜひ現地の雰囲気を感じてみてくださいね。