カナダ在住、マルチリンガルの息子を育てる筆者がお届けする連載【翻訳家ママのバイリンガル教育】第4回目です。英語の早期教育に対して周囲からネガティブな反応を受けた、という方はいませんか?よく聞かれる3つの反対意見を鍵に、バイリンガル教育の成功の秘訣を探ります。
幼い子どもの英語教育は反対意見も多い!?
早期の英語教育の話題になると、「幼いうちから英語なんてやる必要はない」と意見する人が必ずいます。その理由で多いのが「日本語を身につけるのが先」、「英語を学ぶと日本語が中途半端になってしまう」というものです。
また、「言葉が混ざってしまう」、「子どもに負担がかかる」という意見もあります。確かに、英語の取り組み方によっては、反対意見を持つ人が危惧する結果になることも……。
けれども、世の中にはしっかりしたバイリンガル、マルチリンガルがたくさんいます。何が違うのでしょうか?
ここからは、どうすれば多言語教育のネガティブな部分を解消できるのかを具体的に説明していきます。
「母国語が遅れてしまうのでは?」から考えられる対策
幼い子どもが英語に取り組むときに、周囲の大人が一番心配するのは「(英語を学ぶことで)日本語がしっかり身につかないのでは?」ということでしょう。もちろん、英語に取り組んだ分だけ日本語に触れる機会を削ってしまっては、日本語の発達が遅れてしまうかもしれません
ですから、子どもが第2言語として英語に取り組む場合は、英語を学んでいない場合と同じだけ日本語を使う時間を確保しましょう。「そんなの無理!」と思うかもしれません。けれども、日本語だけの環境で育っていたとしても、1日24時間ずっと日本語に触れているわけではないはずです。日本語を削らないで、子どもが英語に触れることができる最適なスケジュールを考えてみてくださいね。
息子が3カ国語を話すわが家では、日常会話以外にも大量に絵本を読み聞かせたり家事の実況中継をしたりするなど、とにかく常に、英語、フランス語、日本語の言葉のシャワーを浴びせていました。現在も、家庭での親子の会話を充実させるように気を配っています。
「子どもの負担が大きいのでは?」から考えられる対策
息子が幼いころに「3カ国語もやって大変だね」と息子に言う人がいました。けれども、息子はつらい思いをしながら英語、フランス語、日本語に取り組んだわけではありません。日常の中で自然に言葉が身につくように、筆者や夫がさまざまな仕掛けを用意していました。無理強いをしても決して子どものためにはなりません。あくまで子ども自身が自然に、そして楽しみながら言語に触れることが大切なのです。
もし、周囲の人が子どもを見て明らかに大変だと感じるような方法で英語を学ばせているのであれば、やり方を変える必要があります。幼い子どもがつらいと感じている方法は長くは続かないからです。言語の習得は継続あるのみです。親子で楽しみながら取り組むようにしましょう。
「言語が混ざってしまうのでは?」から考えられる対策
子どもと複数言語の学習に取り組むときは、言葉を混ぜないのが鉄則です。たとえば、日本語で会話をしているときに、親が子どもに英語を使わせようとするのはよくありません。もし、一人の親が子どもと日本語と英語で会話をする場合は、切り替えをしっかりしましょう。
筆者と息子が二人のときの会話は日本語、家族三人での会話は英語です。そのため、筆者と息子が二人で話しているときに、息子の文章の中に英語が混ざることがあります。そのようなときは、混ざっていることを指摘しないようにしています。英語で話した単語を、日本語にして会話の中で自然に使います。すると、会話を続けているうちに、日本語の会話の中に英語が入り込まなくなってきます。
指摘をしないのは話の腰を折らないため、そして、話すのが嫌にならないようにするためです。
バイリンガル教育では母国語も大切に!
幼いうちから継続して英語に取り組んでいれば、使える英語を身につけることができます。けれども、親が中途半端な取り組みをすると、早期の英語教育に反対する人が主張するような悪影響を子どもに与えてしまうこともあります。
母国語がしっかりしていれば、英語など他の言語を学んでいることについて、あれこれ言う人は少なくなっていきます。もちろん、母国語もしっかり身につけさせるというのは、英語に反対する人を黙らせるためではありません。子どものためです。自分の思いをしっかり言葉で表現できることは心の安定につながります。バイリンガル教育に取り組むときは、1カ国語で育てる以上に子どもの言葉に注意を払うようにしましょう。