IT化が進む現代において、活字離れはどこの国でも起きている現象ではないでしょうか。筆者が住むアメリカでも同様です。毎日の読書の宿題から多読のすすめ、リーディングレベルの査定など、アメリカの小学校(幼稚園年長)での読書推進の取り組みについてご紹介します。
世界的に活字離れが進み、社会問題に
しかし、活字離れは日本だけでなく、アメリカをはじめ、他の多くの国でも進んでいます。米国心理学会が公表した学術誌「Psychology of Popular Media Culture」の調べによると、アメリカの10代の3人に1人は、1年間に1冊も本を読まないという結果も。
こういった現状を踏まえ、各国、読書推進に対する取り組みは行われていますが、日本に比べて、アメリカの読書に対するアプローチは、小さいうちから読書習慣を身につけることに重きを置いているように感じます。その理由は、小学校での読書の取り組み方法がまったく異なるためです。
※イギリスの市場調査会社NOP Worldが、2004~2005年にかけて行った1週間あたりの読書時間に関する調査。
アメリカの小学校での取り組み
一方、アメリカの小学校ではというと……。
筆者の娘は、現在アメリカの現地校に通う小学2年生ですが、キンダーと呼ばれる日本でいう年長のころから、宿題として、「毎日最低20分の読書をしましょう」と言われていました(文字が読めない子どもは、親が代わりに読み聞かせをします)。
この宿題には、根拠があって、1日に少しずつでも読書をする習慣をつけると、将来獲得できるボキャブラリー(語彙)の数がまったく違ってくるという調査があるのです。
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「多読」によって得られるボキャブラリー(語彙)
一方、アメリカでは、「多読」することに重きを置いています。「多読」とは、自分に合ったレベルの本を自分で選び、自分のペースで楽しみながら読む言語習得方法です。
どちらの方法も、「読書する」ことには変わりありませんが、先ほどご紹介した、ボキャブラリー(語彙)の獲得という点においては、アメリカの「多読」の方が、読書量が多くなる分、獲得できるボキャブラリー数は増えるというメリットがあります。
アメリカのある会社が、一日の読書量で一学年の終わりまでにどれだけの差を生むかという調査を行ったところ、一日21.1分の読書で1,823,000語、一日1.8分の読書で106,000語の語彙を獲得できるという結果も出ています。
「多読」により享受できるメリットは大きいので、アメリカ全土で多読の取り組みが行われているというわけです。
生徒一人一人のリーディングレベルを査定するほど本格的!
まず専門の先生が、生徒一人一人のリーディングのレベルを査定します。小学1年生ならこの辺りのレベルが平均的という指標があり、その指標に照らし合わせて査定。よって生徒全員、リーディングにおける自分のレベルがわかるのです。
そして、その査定されたレベルを元に、自分で読む本を見つけます。特に、小学校低学年の子が読む本には、レベルが明記されているので、それと同等か、少し上のレベルのものを選びます。
そうすれば、わからない単語も最小限で済み、そのレベルがあることで、この本は低学年にふさわしい内容かわかるという優れもののシステムなのです。
ちなみに、日本で英語を勉強したい方は、洋書を取り扱っている本屋さんでそのレベルを参考にしながら児童書を選ぶと、適切なレベルの本に出会えるので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
「多読」中心の取り組みをやってみませんか?
さらにアメリカでは、中高生になると教科書が分厚くなります。日本の教科書のようにイラストや図版も少ないため、文章を読んで想像しながら進めていかなくてはなりません。ですから、英語の文章をより早く、正確に読むという訓練が求められているのではないのでしょうか。
特に、筆者の娘の学校は、読書に関しては他の学校よりも熱心に取り組んでいるようです。わが家は両親共に日本人なので、娘にリーディングの指導ができず、アメリカのこういった取り組みに本当に助けられています。
日本でも小さいうちから「多読」を中心に、お子さまに本を読む大切さを伝えてみてはいかがでしょうか。