2019年10月30日 公開

【話題の育児書】『「幸福学」が明らかにした 幸せな人生を送る子どもの育て方』

どうしたら我が子が幸せに生きられるか?各種メディアでも話題の「幸福学」を研究する第一人者で、慶應義塾大学大学院の前野隆司教授が書いた、親も子も幸せになる子育てができる方法がわかる本を紹介します。気になる育児や教育関連本を紹介する連載【話題の育児書】10回目です。

どうしたら我が子が幸せに生きられるか?各種メディアでも話題の「幸福学」を研究する第一人者で、慶應義塾大学大学院の前野隆司教授が書いた、親も子も幸せになる子育てができる方法がわかる本を紹介します。気になる育児や教育関連本を紹介する連載【話題の育児書】10回目です。

子育ての一番の基本は親が幸せでいること!?

 (145871)

altanaka / Shutterstock.com
自分の子がどんな風になって欲しいかを考えた時に「頭が良い子に」「生きる力がある子に」という理想もありますが、実は、何より「幸せに生きて欲しい」と思っている方も多いのではないでしょうか。

子どもが幸せに生きるためにはどうしたらいいか

それには、こちらの連載「話題の育児書」で取り上げた『「非認知能力」の育て方 心の強い幸せな子になる0〜10歳の家庭教育』の中で、著者のボーク重子さんが「母親の幸福度が下がると子どもも不利益を被る」「親の幸せも不幸も伝染する」という調査を紹介されていたことが非常に気になっていました。

子どもが幸せになるためには親がまず幸福であることが重要。でもそのためには具体的にはどうすればいいのでしょうか?

ボークさんの著書でもご自身の自己肯定感や幸福度を上げていく課程が具体的に書かれていましたが、この課題ももう少しちゃんと向き合ってみたくなりました。

そして、そもそも幸福とは?幸せに生きるってどういうこと?という疑問が。なんだか宗教っぽくなってしまうかスピリチュアルで胡散臭くなってしまうテーマをわかりやすく、ちゃんと説明してくれる本はないかと探していたところに出会ったのがこちらの『「幸福学」が明らかにした 幸せな人生を送る子どもの育て方』という本です。

「幸福学」が明らかにした 幸せな人生を送る子どもの育て方

「幸福学」が明らかにした 幸せな人生を送る子どもの育て方 | 前野 隆司 |本 | 通販 | Amazon (145727)

タイトル:「幸福学」が明らかにした 幸せな人生を送る子どもの育て方
著者:前野隆司
出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン
この本を手に取ってまず目にした「はじめに」の序章で、以下の主張に強く惹かれました。
  • 親がまずいきいき、ワクワクしていたら、パートナーや子どもにもそれが伝染して幸せになる。
  • 子どもたちを幸せにしなくちゃ、と意気込まない方がむしろ子ども達は幸せに育つ。
ボーク重子さんの本でも登場し、この本でも紹介されている「幸せは伝染する」という学術研究結果による記述ですが、同じことを説明していても、こちらは非常にポジティブに伝えていたのです。

そして、本を読んだところ、「幸せって?そんなの人に寄るんじゃないの?」「自分の幸せや子どもの幸せをどう定義したらいいの?」「具体的にどうすればいいの?」という疑問をしっかり払拭してくれたのでした。

著者:前野隆司さん

前野隆司さんは、カメラの開発やロボットの開発を経て脳科学の専門家に。2008年からは、幸福学の研究をはじめ、「幸福学の第一人者」と呼ばれる方です。

慶應義塾大学大学院教授で「幸福学」を研究する他、小学校受験をする子ども達や親、大学院まで、さまざまな場で幸福学教育を行っています。また、大学生と高校生の二人のお子さま(執筆当時)がいらっしゃいますが、成人した息子さんは「将来何になれるかわからないけど幸せになる自信だけはある」と断言するほど。妻のマドカさんも現在は共に幸福学の研究をし、前野隆司さんと円満に長く続くパートナーシップ(夫婦、恋人など)を解説する共著も出されています。

本書では、幸せとは何かを科学的に説明する幸福学の基本から、子育てで直面する具体的な課題解決例、また、幸福になるための実践方法としてさまざまなトレーニングやワークを紹介されています。

著者プロフィール

キヤノン株式会社、カリフォルニア大学バークレー校客員研究員、慶應義塾大学理工学部教授、ハーバード大学客員教授等を経て、2008年より慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科教授。2017年より慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長兼任。『脳はなぜ「心」を作ったのか』『錯覚する脳』(筑摩書房)、『幸せのメカニズムー実践・幸福学入門』(講談社現代新書)、『幸せな職場の経営学』(小学館)、 『ニコイチ幸福学』(CCCメディアハウス、妻のマドカさんとの共著)など著書多数。

子育て中の「幸せの4つの因子」とは

 (145872)

Tasty_Cat / Shutterstock.com
前野さんが研究している「幸福学」(well-being study)とは、人が幸せを感じる仕組みを心理学や統計学、哲学・医学・経済学・経営学・工学など、あらゆる面からアプローチするものです。

子育ての中に「幸福学」を取り入れると、親も子も幸せになる子育てができるといいます。

そして幸福学で、何が幸せに影響するかを明らかにし、長続きする幸せの要因を分析した結果、幸せに影響する「4つの心的因子」を導き出せたそうです。そして、4つの心的因子を子育て中の親に当てはめたものが以下です。

<子どもも親も、より幸せになる4つの因子>
第1因子: 子育ても自分の夢も大事!とにかく「やってみよう!」
第2因子: あなた(子どもや親)がいてくれて、「ありがとう!」
第3因子: 想い通りでなくても、「なんとかなる!」から大丈夫
第4因子: 「ありのままに!」やったんだから、失敗してもOK!
via 「幸福学」が明らかにした 幸せな人生を送る子どもの育て方
この4つの因子がバランスよく備わっていると、より幸せな状態でいられるようです。

この4つの因子は日々のちょっとした行動や態度、考え方や捉え方次第で高められるので、前野さんは、これを大きめの紙に書いて、よく目にするところに貼っておくことを推奨しています。

この因子に沿って、今の幸福度「人生満足尺度(SWLS)」を計測も可能です。私は、第3因子の「ありがとう!」因子(つながりと感謝)は高かったのですが、第4因子の「ありのままに!」因子(独立と自分らしさ)は少し低めでした。

幸せを感じ続けられば学びの質も高く、勉強もはかどる!

 (145873)

VGstockstudio / Shutterstock.com
社会人を対象とした研究ですが、幸せな状態の人は不幸な人よりも創造性が3倍、生産性が31%、売り上げは37%高いというデータがあるそうです(”幸福の戦略”「ハーバードビジネスレビュー」2012年5月掲載)。

これは、仕事だけでなく、勉強においてもいえること。幸せな状態の方がパフォーマンスが高くなると前野さんは書いています。

心が落ち着き、幸せでマインドフルな状態なら、記憶力も高まり、効率もアップすると考えられているのです。

親子で幸せな状態をキープできていれば、学びの質も上がり、日々の勉強もはかどるというわけですね。

幸せな子育て期を過ごすためのトレーニング&ワーク6つ

 (145874)

fizkes / Shutterstock.com
本書では、自分の今の幸福度が計測できる他、すぐに実践できるトレーニングやワークを以下の6つの項目に分けてたくさん紹介しています。幸福度の向上は筋トレと同じ!日々意識し続け、トレーニングすると向上できる力なのです。
  1. 「メタ認知」トレーニング
  2. 傾聴・対話トレーニング
  3. マインドフルネストレーニング
  4. ポジティブになるワーク
  5. 一人でできるトレーニング&ワーク
  6. 家族の絆が深まるワーク
ちなみに、「ポジティブになるワーク」から、寝る前に今日良かったことを3つずつ伝え合うワークを親子でやったら、とても幸せな気持ちで眠りにつくことができました。

他に「猫背にならず胸を張る」「口角をあげる」など「一瞬で幸せになれる!実践ワーク」もあり、今すぐできる簡単なことでも、気持ちが随分明るく前向きになれることに驚きました。

子育てに悩みはつきもの。問題に直面した時に思い出そう

“子育ての一番の基本は、「あなたが幸せでいること」。ただ、それだけです。
via 「幸福学」が明らかにした 幸せな人生を送る子どもの育て方
未就学児の頃の子育てや育児の悩みはもいろいろとあるものですが、小学校に上がってからは、反抗期や思春期、または友人関係や勉強の不出来、不登校などの問題が待ち受けています。さらに夫婦関係や自分自身のキャリアにおける問題。こちらの本では、いずれの課題に直面した時に関しても幸福学的視点から、対処法や予防のトレーニングが提案されています。

子どもを育てながら、共に転んだり失敗したりを繰り返して、親も自ら成長し、生きる力を育んでいく子育てに心から幸せを感じられるようになれる喜びを前野さんは教えてくれています。

子どもが大きくなるまで本棚に置いて、時折開いて学び直したくなる本です。

\ 手軽な親子のふれあい時間を提案中 /

この記事のライター

志田実恵
志田実恵

エディター/ライター。札幌出身。北海道教育大学卒業(美術工芸)。中高の美術教員免許所持。出版社でモバイル雑誌の編集を経て、様々な媒体で執筆活動後、2007年スペイン留学、2008〜2012年メキシコで旅行情報と日本文化を紹介する雑誌で編集長。帰国後は旅行ガイドブック等。2014年6月に娘を出産。現在は東京で子育てしながらメキシコ・バスクの料理本の編集のほか、食、世界の子育てなどをテーマにwebを中心に活動中です。