2019年08月15日 公開

【シーン別】賢い子を育てる夫婦の会話のコツ

夫婦の会話を意識することで、子どもはさまざまな力を獲得していきます。では、夫婦でどのような会話をするといいのでしょうか。3つのシーンを取り上げ「会話のコツ」を紹介します。話題の本『賢い子を育てる夫婦の会話』の著者である天野ひかり先生に伺いました。

夫婦の会話を意識することで、子どもはさまざまな力を獲得していきます。では、夫婦でどのような会話をするといいのでしょうか。3つのシーンを取り上げ「会話のコツ」を紹介します。話題の本『賢い子を育てる夫婦の会話』の著者である天野ひかり先生に伺いました。

夫婦の会話が“賢い子”を育てる!【全3回連載】

この連載の1回目、2回目でもお伝えした通り、これからの時代を生きる力を育むためには、「夫婦の会話」がとても大切です。

それでは、夫婦でどのように話せばいいのでしょうか?
3つのシーンから、会話のコツをご紹介いたします。

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【連載】夫婦の会話が“賢い子”を育てる!
Vol.1 賢い子を育てる「夫婦の会話」4つのルール
Vol.2 「夫婦の会話」が、子どもに必要な5つの力を育てる
Vol.3 【シーン別】賢い子を育てる夫婦の会話のコツ  ←今回はここ
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【シーン1】子どもが友だちの輪に入れないときの会話

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まず最初は、子どもが一人で遊んでいる様子を見た夫婦が子どもと会話するシーンを例にみてみましょう。

NG会話

ママ「『入れて!』って言えばいいのに」
「うん……でも……」
ママ「どうして一緒に遊ばななかったの?」
パパ「自分から入らないと、友達はできないよ!」
「うん……」

GOOD会話

ママ「何をして遊んだの?」
「お絵描き」
パパ「○○はお絵描き得意だもんね。周りが騒いでいてもできるなんてすごい集中力だよね」
ママ「お友だちは何していたの?」
「鬼ごっこだよ」
パパ「一緒に鬼ごっこしないの?」
「するときもあるよ。今日は、お絵描き」
ママ「鬼ごっこしたいときは、入れてっていうの?」
「うん!」

夫婦で子どもに正論を押し付けない

「子どもが一人ぼっちで遊ぶなんてかわいそう」と親は思うかもしれませんが、実は本人は嫌だと思っていないかもしれません。
NG会話では、「一人で遊ぶのはかわいそう、みんなで遊ぶ方がいいはず」という親の正論を押し付けていることになります。それも、パパとママ両方から言われてしまっては、ますます逃げ道がありません

また、親はよかれと思って方法を教えるつもりで「~すればいいのに」といいますが、子どもはこう言われると「自分はできない子」なんだと、追い詰められている気持ちになります。さらに「どうして?」という親からの問いも、責めている印象を与えます。

ここでは、親の視点からの正論で問いかけるのではなく、子どもの視点に立ち、子どもが答えやすいよう「何?」と声をかけるといいでしょう。

その質問に対して子どもが考えて事実を応えることができたら(この会話では「お絵描き」)、親が聞きたかったこと(この会話では「他の子の状況」)を、ここでもはやり「何?」で質問します。

もし、夫婦のどちらかが自分の視点で正論を言ってしまったら、もう一方が子どもの立場に立って話すなど、お互いに補い合えるといいですね。

ポイント

(1)相手のやっていることに興味を持つ
(2)指示するのではなく、相手のしていることを聞く
(3)相手がどうしたいのかを観察する

【シーン2】子どものわがままが止まらないときの会話

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次は、スーパーやおもちゃ屋さんで子どもがダダをこねているシーンを例にみてみましょう。

NG会話

「これ、買って!」
ママ「ダメ、買いません」
「ほしいほしい!」
ママ「そんな無駄なお金はありません」
「ケチ!」
パパ「ダメなものはダメだ!」

GOOD会話

「これ、買って!」
ママ「これがほしいなんて、なかなかセンスいいね」
「そうでしょ、だから買って」
ママ「ほかのとどう違うの?」
「ここのつくりがこうなってるんだよ!」
ママ「なるほど。家にある××との違いは?」
「それはね……」
パパ「おお、そんな違いがあるんだね! よく知ってるなぁ」
「これだとね、こんなこともできて、パパのお仕事にも使えるんだよ!」

「わがまま」を「提案」にさせる言葉がけ

子どもが「何か欲しい」と言ったときこそ、提案する力をつけさせるチャンスです。
「ダメ、買いません」や「はい、買ってあげる」のひと言で終わらせるのはもったいない!

提案する力を磨くためにも、
1.欲しい理由
2.他のものとの違い
3.買うことのメリット
4.買う側である親のメリット

をしっかり言葉にできるように、少しずつ導きましょう。

ここで気をつけたいのは、欲しい理由を知るために、「どうしてこれが欲しいの?」と「どうして」で聞かないこと。
「どこがいいの?」「何が違うの?」と聞くと、答えやすいでしょう。

それから、子どもの「欲しい気持ち」を受け止めた上で、欲しい理由を整理していきます。4W1H(いつ・どこで・誰と・何を・どのように)事実関係を整理していくとわかりやすいでしょう。

ここまでできたら、次は買うことのメリットやパパママへのメリットを言語化していきます。

言葉にしていくための過程で、子どもはたくさん思考していくでしょう。
これがとても大切なトレーニングになります。

夫婦でも、何かを買うときはこのように会話することを心がけてみてください。
そのやりとりを聞きながら、人を説得する言葉を学んでいきます。

ポイント

(1)「ダメ!」のひと言で終わらせない
(2)欲しい理由を一緒に話し合ってみる
(3)メリットとデメリットの両方を考える

【シーン3】パパが帰宅したら、ママが怒っていたときの会話

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最後は、目の前で家族間の問題が起こっているときにどんな会話をするのがいいのかをみていきます。例として、ママが怒っているシーンで考えてみます。

NG会話

ママ「どうしてちゃんとできないの!!」
「だって……」
ママ「だってじゃない! もう何回も言ってるでしょ!!」
パパ「……(見て見ぬふり)」

GOOD会話

ママ「どうしてちゃんとできないの!!」
「だって……」
ママ「だってじゃない! もう何回も言ってるでしょ!!」
パパ「ただいま。今日の夕飯は、パパが作るね」
ママ「あ、ありがとう」

怒らせないように黙っているのは逆効果

たとえば、パパが帰宅したときにママが子どもを怒っていた―。こういうとき、パパはどうやって声をかけていくのがいいでしょう?

よくあるのは、ママの怒りが収まるまでパパは黙って自室にこもる、というものかもしれませんね。
実はこれ、一番よくない対処法です。
かといって、「そんなにガミガミ怒らなくても、子どもは大丈夫だよ」と止めるのも、ママの神経を逆なでしたり落ち込ませるので逆効果

ママは、実は子どもに怒っているのではありません。
きっかけは子どもかもしれませんが、一人で全部抱えてパパが何も気づいてくれないことにイライラしているサインなのです。

ですので、パパはその場から逃げずママと子どもが納得して解決するまでサポートするのが、この場合に取りたい行動です。
具体的には、「洗い物はぼくがやっておくね」「買い物行っておこうか」などです。
ママも、その声がけを聞いて、自分が何に対して怒っているのか、冷静に考えられるようになります

会話を通じて事態がよくなることを経験することで、子ども自身も会話の大切さを学んでいくでしょう。
また、物事を表面的に見るのではなく本質を見抜いて行動することが大事だと言うことも学ぶはずです。

ポイント

(1)黙っていても何も解決しない
(2)イライラの本当の原因を考える
(3)夫婦で話して乗り越える姿を子どもに見せよう

会話が少ない夫婦は、まずは子どもの話題から

3つのシーンについてご紹介しましたが、書籍「賢い子を育てる夫婦の会話」では、全部で18のシーンについて解説しています。こちらもぜひ、参考にしてみてくださいね。

ここまでお読みいただき、「うちでも早速やってみよう」という方もいらっしゃれば、「うちの夫婦はこんな風に話せないかも」という方もいらっしゃると思います。

うちはあまり夫婦の会話がないから……という方は、いきなりこのようなことを意識して会話するのは難しいかもしれません。現状で会話が少ない夫婦は、まず子どもの話題について話してみるのはいかがですか?

子どもは、夫婦にとって絶好の「共通の話題」です。

相手が関心を持ちそうな子どもの話題について、これまで紹介したことを意識しながら話してみてくださいね。
大切なのは、「会話をあきらめないこと」です。

(取材・文/洪愛舜)

天野ひかり先生プロフィール

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『賢い子を育てる夫婦の会話』(あさ出版)著者。
上智大学文学部卒業。テレビ愛知アナウンサー(1989〜1995)。現在はフリーアナウンサーとして活躍中。
フリー転向後はNHKの番組を中心に出演し、2008年3月まで教育テレビの番組『すくすく子育て』でキャスターを務める。自身の結婚、出産、育児と仕事の両立を経験したことで、子育ての重要性を認識。「NPO法人親子コミュニケーションラボ」を立ち上げる。子どもの自己肯定感を育むための親子のコミュニケーション力をのばす講座や講演を全国の自治体や幼稚園、学校、企業などで開き、今までの受講者は5万人以上。多くの父母から支持され「育児が180度変わった! 」など感動の声が寄せられている。著書は他に『子どもが聴いてくれて話してくれる会話のコツ』(サンクチュアリ出版)、『天野ひかりのハッピーのびのび子育て』(辰巳出版)がある。

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ベストセラー『子どもが聴いてくれて話してくれる会話のコツ』著者の最新作。怒らないと勉強しない、友だちや学校の話をしなくなった、「自分なんて」と自分を責める、きょうだいゲンカが多い……この原因は「夫婦の会話」にありました。伝え方のプロで自らも子をもつ母である著者が、子どものふるまいが心配な人、 パートナーとの子育てに悩みがちな人に、子どもを賢く育て、夫婦関係もラクになる会話のコツを紹介しています。

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この記事のライター