2020年8月14日 公開

【海外レポート】カナダの小学校オンライン授業、メリットや問題点は?

新型コロナウイルスの影響で全国の学校が休校措置を取ったことは記憶に新しいこと。筆者が暮らすカナダでも2020年3月から約3カ月半休校となりました。その間実施されたオンライン授業について、気付いた問題点やメリットを現地保護者の声をもとにレポートします。

小学校休校からオンライン授業が始まるまで

新型コロナウイルスの感染拡大により、ここカナダ・モントリオールの小学校は2020年3月13日に休校となりました。

当初は2週間の予定でしたが、状況は悪くなる一方。最終的にモントリオールは2020年度(カナダの年度末は6月末)の小学校再開を断念。5月最終週から公立小学校のオンライン授業が始まりました。

オンライン授業への準備


オンライン授業の準備として、息子の小学校を管轄してる教育委員会からいくつかオンラインで質問をいただきました。内容は、「家庭でインターネットに接続できるか」や「子どもがオンライン授業に使用できるデバイスがあるか」などです。

家庭に子どもが使えるデバイスがない場合、学校から貸し出しが行われました。これについては、多くの家庭から「破損の責任が取れない」とか「取りに行きたくない」という声もあり、貸し出しが必ずしも有効な手段ではないことがうかがえます。

また、モントリオールの複数の小学校を担当する言語聴覚士の方によると、家庭にオンライン環境がない場合や家庭での指導が難しい学習障害のある児童は、学校に来てオンライン授業を受けられるようにしていたケースもあるそうです。けれども、これに対しても「スクールバスの運行がなく、送り迎えができない」と、登校を断る家庭が多かったとのことでした。

宿題の提出や試験について


モントリオールでは、小学生でも留年する場合があります。ただ、2020年度は3学期の授業がほぼ行われなかったため、2学期までの成績で進級が決まることがオンライン授業決定前に通知されていました。そのため、オンライン授業が行われた1カ月間に試験はありませんでした。

宿題は多くの学校が出していて、提出にはGoogle Classroomを使用する学校が多かったようです。また、宿題が授業の予習復習だったために、提出義務がなかった学校もありました。

クラスのスケジュールや授業内容


各学校に対し「オンライン授業を提供するように」とカナダ政府から通達はされたものの、細かい決まりはなく、内容は先生に一任されているようでした。どんな内容だったか、保護者の方々の声をもとにまとめました。

オンラインのクラス設定

・クラス全員(20人程度)
・クラスを小さなグループに分ける
・先生と生徒が1対1

クラスのスケジュール

・曜日と時間は固定
・週毎に授業の回数、曜日、時間が変更
・授業は週に1日から4日
・1回の時間は45分から1時間半ぐらい(必ずしも高学年になるほど時間が長いわけではない)

オンライン授業の内容

・低学年は通常の授業(フランス語や算数)が中心の場合と体育や音楽の授業が中心の場合に分かれる
・高学年でも通常の授業ではなく、雑談とゲームなどのアクティビティが中心だったクラスもある
・Zoom や Google Meet を使用したビデオ通話による授業だけではなく、YouTube で体育の授業をライブ配信した学校も
・休校前に授業についていけていなかった児童に対しては、通常の授業以外に補習を行っていた
・オンライン授業に参加できない児童には、先生が週に最低1回は連絡していた

オンライン授業のメリット


オンライン授業が開始されて良かったと感じたことは、友達や先生に画面越しでも会えたことです。モントリオールでは学校が休校になったとほぼ同時期に外出も制限され、子どもも大人も気軽に家族以外の人と会って話すことができなくなりました。そのため、息子のクラスでは、授業後に子どもたちだけが残り、雑談を楽しむようなシーンもありました。

また、登校の準備がないので、朝バタバタしないというメリットもあります。ビデオをオンにしなければ、パジャマのまま出席していてもわからないのです。

そして、オンライン授業の一番のメリットは、どこからでも授業が受けられることだと思います。キャンピングカーを持っているクラスメイトがキャンプサイトから出席していたというエピソードもありました。他のクラスメイトたちは、最初はZoomの壁紙だと思っていたので、実際の自然の風景や鳥のさえずりに驚いたとのことです。

仕事でも同じことが言えますが、「場所にとらわれない」ことの恩恵は大きいと感じました。

オンライン授業の課題や問題点

授業の質

オンライン授業の内容でもふれた通り、先生により授業内容がかなり異なっていました。今回は年度末の1カ月間だけでしたが、長期間のオンライン授業の場合は、通常のカリキュラムに合わせた授業が必要になるでしょう。

保護者や子どもへの負担

オンライン授業にはメリットもありますが、保護者や子どもに学校へ通うのとは違った負担があります。

■保護者への負担
低学年では、子ども一人だと画面の前でじっとしていることができず、親が隣にずっと座っていなければいけない場合があります。家庭に小学生以下の子どももいる場合は、その子の相手をしながら、小学生の子どもの授業の付き添いをしなくてはいけないということも起こります。また、親が隣に座っていると、親を頼ってしまう場合もあるので、子どもによって見守り方も考えなくてはいけません。

高学年は一人で授業に参加することはできますが、インターネットやデバイスのトラブルには親が対応する必要があります。ですから、子どもの授業時間が親の自由時間というわけにはいかないです。

兄弟がいると、それぞれスケジュールが異なるため、1日中手伝いが必要で予定が立てられないなど、子どもが学校に通っているときにはなかった負担が保護者にはあります。

■子どもへの負担
子どもにとっても、通常の授業よりも負担が大きい場合があります。小学2年生の例では、オンライン授業を受けたあとの疲労がものすごく大きかったという話を聞きました。筆者の息子は、大人数での授業だったのでヘッドフォンから聞こえてくるたくさんの雑音で落ち着かないと言っていました。長期的に考えると、スクリーン時間が長くなることでの目への負担や運動不足も心配です。

支援が必要な児童への対応

家庭にインターネットやデバイスがなくても、授業が受けられるようにという対策はされていました。それでも、家庭の事情などから、オンライン授業を受けられなかった子どもたちはいます。今後すべての子どもたちが授業を受けられるような対策がさらに必要です。

また、学習障害のある子どもへのサポートにも差がありました。専門家の支援が必要な子どもへの対応も通常クラスとは別の対策が求められています。

技術的な問題

オンライン授業はインターネットとデバイスさえあれば、気軽に出席できそうなものですが、さまざまな技術的な問題で授業に参加できなかった例がありました。

例えば以下のようなものです。

・オンライン授業に慣れていない先生も多く、Zoomなどのリンクがつながらず授業に参加できないトラブルがあった。担任の先生の授業ではなく、先生の連絡先が分からなくてその授業には参加できなかった。
・家庭のWi-Fiがつながらなかった。
・授業中に突然停電になった。

新しい学習方法を模索した1カ月間


モントリオールでは休校になってから、オンライン授業が始まるまでに2カ月以上かかりました。

当初筆者は、「学校に行けないなら、オンラインで授業をすればいいのに」と授業が始まる前は気軽に考えていた部分もありました。しかし、実際に授業が始まると考えさせられることが多かったです。

2020年8月末からモントリオールは学校が再開される予定になっています。ただ、マスクの着用やフィジカルディスタンスなど、コロナ禍前のような学校生活には戻りません。第2波、第3波があれば、また休校になりオンライン授業に切り替わることもあるかもしれません。

今回のオンライン授業で分かった問題点を踏まえて、学校に頼り切らずに、家庭でも今後に備えておく必要があると感じました。
著者:LOA

カナダ在住歴17年の英日翻訳者・フリーライター。Web媒体で子育てや教育に関する記事を多数執筆。プライベートでは11歳の男の子の母。母子は日本語、父子はフランス語、夫婦は英語で会話をするというマルチリンガルファミリー。知育マガジンChiik!にて「翻訳家ママのバイリンガル教育」を連載中。
この記事は執筆時点のものですので、最新情報は公式サイト等でご確認ください。

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WRITER

LOA LOA  カナダ在住の英日翻訳者・フリーライター。Web媒体で子育てや語学学習についての記事を多数執筆。8歳の息子が0歳のときからはじめた絵本の読み聞かせは、今では私たちの生活になくてはならないものになっています。これまでに息子と読んだ絵本や児童書は、日本語、英語、フランス語を合わせて数千冊。息子が笑顔になる絵本を見つけるのが喜びです。