2019年11月25日 公開

早期教育のメリット・デメリットは?種類や効果、気をつけたいこと

早期教育とはどんなものでしょうか。幼児教育や知育、英才教育(ギフテッド、才能教育)との共通点と違いから、効果や批判や弊害まで、メリット・デメリットを紹介します。知育系、芸術系、運動系などの種類や重視すべきポイントもまとめました。

早期教育とは

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早期教育は、幼児教育学のほか、脳科学や発達心理学の分野からも効果や弊害、必要性まで賛否両論、世界各国で長年、盛んに議論されているテーマです。

早期教育とは、主に未就学(小学校入学前)に行われる教育の総称です。乳幼児期から、優秀児を育てるという目的の元、知的好奇心が旺盛で、頭が柔らかいうちに教育を開始し、脳を活性化させるのが大事だと推奨する教材や教室がたくさんあります。脳の発達には「臨界期」があり、その時期を過ぎると、脳の神経細胞は可塑性を失うとされていることを根拠とするものも多いようです。

どちらかというと本人の意向より、教育熱心な大人の都合が優先されることや、平均的な発達に対して早すぎるアプローチの仕方が問題点として指摘される意見が目立つようです。

幼児教育・知育・英才教育・ギフテッド教育との違い

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幼児教育は、幼児が生活する全ての場において幼児に行われる教育の総称です。幼児に対する教育機能を担う幼稚園や保育園をはじめ、家庭内教育も含みます。定義上では似ている言葉ですが、一般的な早期教育=幼児教育ではありません

知育も知能を高め、知識を豊かにするための教育の総称であり、幼少期の知的教育を意味するものの、必ずしも早期教育と同じ意味で扱われる言葉ではありません。

また、英才教育は、ある種の才能が優れている子どもの能力を伸ばすために行う特別な教育を指します。才能教育、秀才教育、エリート教育というような呼び方もあります。ギルフォード博士の『知能構造論』を根拠とするものも多いようです。

一方でギフテッド教育は、「ギフテッド」「タレンテッド」など才能が認定された子どもへの特別支援活動や、教育手法です。

英才教育もギフテッド教育も比較的早期から開始されるなど、重複する部分も多いので、早期教育と同じものだと混同されることもあるようです。

ちなみに、日本の義務教育では、早期教育や英才教育を目的として飛び級を実施することは認められていません。

モンテッソーリ教育やシュタイナー教育などのオルタナティブ教育も、早期から取り組むことで、早期教育、また幼稚園や保育園でも行われることから幼児教育、また多くの著名人を排出していることから英才教育だと捉えられることもありますが、そうではないようです。

日本の早期教育ブーム

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まず、1960年代に「家庭教育ブーム」が起こり、「教育ママ」という言葉が登場。

その後1970年代に巻き起こった「第一次早期教育ブーム」はソニー創始者の井深大氏の著書『幼稚園では遅すぎる』が火付け役です。人間の脳は3歳までに脳細胞の80%が形成されるので、できるだけ早く、0歳から脳に刺激を与えれば才能豊かな子どもに育つという主張でした。「育脳」「脳育」などの言葉も流行し、国内外から注目され、大きな論争を巻き起こしました。いわゆる「3歳児神話」にもつながりますが、20年後に井深氏は、当時の主張を振り返り、知的教育は言葉がわかるようになってからで良いなどと、一部を否定しています。

続く、「第二次早期教育ブーム」は1990年代。少子化が進んだことで、教育産業が幼児の教育対象年齢を下げ、早期教育が過熱化するようになりました。エスカレータ式の私立幼稚園や小学校の人気の高まりで受験者が増え、幼児教室が急増。当時の一部の行き過ぎた早期教育は社会問題化し、メディアでの議論も活発化しました。

早期教育のメリット・デメリット

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メリット

子どもが遊びや学びのある課題を通じて、好奇心を育み得意分野を伸ばして自信を付け興味の幅を広げる経験が積めるのなら、大きなメリットでしょう。また、自分が心から好きな遊びや学びに出会える機会が増えるかもしれません。

子どもを取り巻く環境の変化もあり「孤育て」「ワンオペ育児」などの状況で子育てに悩む親も多い現代。早期教育をきっかけとして、子どもへの働きかけをする時間が増える、あるいは充実し、それで親子関係が良好になる場合は大きなメリットになりそうです。

さらに母子分離の習い事や幼児教室の場合、その間が親の良いリフレッシュ時間になる、または先生や親同士の交流で育児の相談相手を持てるという観点でもメリットがありそうです。

ちなみに、障害児教育の世界では、発達障害や知的障害の早期発見と早期支援開始を含む早期教育は望ましいことであり、乳児期から発達支援を行うことの効果とメリットは以前から指摘されています。

デメリット

いずれの早期教育の場合も、宿題や家庭学習をこなすことに時間を取られすぎる場合は、本来伸ばすべき分野がおろそかになって、結果的に根本的な発達が遅れる問題点が挙げられています。

特に知識の先取りをして、暗記を促すような、インプット重視の詰め込み教育やパターン化された教育は、子どもの自主性を奪うため、その子が常に刺激に対して受け身になる危険性や思考力が育たない危険性が指摘されています。

早期教育の種類

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早期教育と呼ばれるものは、種類もさまざまです。

お腹にいる時から音楽や語りかけをする「胎教」や乳児向けの「超早期教育」(胎児期〜1歳)。読み書きや算数などを教材や教室で体系的に教える「先取り学習」。右脳を鍛えるフラッシュカードやIQを向上させるという「知能教育」、英語、ピアノ、ダンス、そろばんなどのお稽古ごとも、スイミングや体操などのスポーツや運動関連もあります。

ワークブックやドリルのほか、絵本、生活場面においての知的教育も早期教育の一種です。幼稚園や保育園で行われているものの中にも早期教育と呼ばれるものがある場合もあるでしょう。

英語(外国語)

英語は小学校での教科化もあり、年々低年齢化。0歳頃からの取り組みを促す「早期英語教育」も増えています。効果の持続性を疑問視する声もある一方で、何らかの形で取り入れている家庭は増加中しています。

ピアノやバイオリン(音楽)

鈴木メソードを代表とするピアノやバイオリンなどの楽器指導、リトミックが各音楽教室や個人教師の元で行われています。モーツアルトも幼少から音楽教育を受けたように、早期教育を受けた天才児と呼ばれる子どもも多くいます。

また、東京藝術大学(芸大)では、世界的状況から音楽の早期教育の有効性は明らかであるとし、将来音楽家を目指す全国の子ども達(小学校4年生〜)を対象に、幼少期から継続的・段階的に指導を行う「早期教育プロジェクト」を2014年から実施。優れた才能を開花させ、国際舞台で活躍する音楽家育成を目指しています。子どもたちの可能性を発見して最大限伸ばし、夢の実現をサポートする目的もあるそうです。

先取り学習(文字や数の学習)

公文式に代表される、小学校入学前に、就学後の学習内容を先取りして学ぶ早期教育も盛んです。ひらがなやカタカナの読み書き、数字の読み書きや計算など、国語や算数を先取り学習するカリキュラムが多数あります。通信教育や雑誌、市販のドリルやワークブックも多数販売されています。

運動(スポーツ・ダンス)

卓球や体操、フィギュアスケートなど、オリンピックで活躍する一流選手たちの多くは小学校入学前から、早期教育を受けて育っています。水泳、空手や剣道など格闘技も早くから取り組ませるものが多いです。また、バレエやチアダンスなども含まれます。

右脳左脳教育

障害児教育の権威、グレン・ドーマン博士が開発したドーマン・メソッドの「ドッツカード」に代表されるフラッシュカードがあります。赤ちゃんの頃から、いろんなパターンのカードをテンポよく見せることで右脳を鍛え、大量の情報を記憶できる方法として知られます。教材も多く販売され、七田式教育など、取り入れている幼児教室や教材も多いです。

そのほか

囲碁・将棋、そろばん、アートなどの習い事の早期教育も盛んです。歌や演技などショービジネスの世界での子役訓練も、早期教育として捉えられる場合もあります。

早期教育のその後と効果

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早期教育の効果が持続するもので、長く後追い調査をしているもの、学会に認められた信ぴょう性や評価の高いデータは実は多くありません。

子どもの能力や才能は環境要因よりも、遺伝子の力に左右されるという説もあります。

ただ、数は少ないものの、「ペリー・プレスクール・プロジェクト(ペリー幼稚園プログラム)」と「アベセダリアン・プロジェクト」のように、30年以上追跡調査が行われ、一定の評価を掲げている研究もあります。

ノーベル経済学賞を受賞者のジェームズ・ ヘックマン教授による就学前教育の投資効果から考察した 幼児教育の意義についての発表も、早期教育を一部肯定するものです。また、就学前教育の質が、子どもの学力にも大きく影響を与えるという結果であるのも間違いありません。

早期教育の弊害は……

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学校教育をそのまま、下の年齢や学年に下ろした形の学習面の早期教育は、効果の持続性において専門家の間では評価があまり高くありません。

英才教育の内容を含む早期教育は、目標達成のために、幼児期に過剰な圧力で負担を与え、長時間にわたって厳しい指導を続けることがあるかもしれません。それがかえって、学習意欲を阻害することもあるかもしれませんし、ストレスで子どもがノイローゼになったり、心身に何らかの身体の不調を訴えたりするような環境は、「教育虐待」にもつながります。高い能力があるからと、トップや進級を目指し、特定の技能を習得する訓練のため、睡眠や適切な食事が十分にとれない状態は明らかに行き過ぎの状態です。

また、一見本人が努力し、好んでやっているように見えても、親の高い期待に答えて「良い子」でい続けているだけかもしれません。自我の形成が妨げられ、思春期以降に問題を引き起こす事例もあります。

もちろん、子ども時代に、自然と親しむ体験を減らし、友達とのびのび自由に遊ぶ時間、創意工夫し、創造性を育む機会を奪うようでは本末転倒です。

早期教育をするなら、重要なこと

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「小学校以降の勉強に有利なように」「他の子どもたちから遅れを取らないように」と、周囲より早く優位に立たせることが目的だと、他の子どものレベルや周りの家庭環境との差を気にし、常に比べてしまうことになりがちです。

以下のような点に配慮すると良いでしょう。
子どもの成長にとってふさわしいかどうか。
短い時間で取り組め、苦痛がないか。
●子ども自身が楽しんでいて、充実しているか、能動性を発揮しているか。
●詰め込みや暗記のみではなく、創意工夫の余地があるか。

●子どもの気持ちをよく汲み取り、反応をよく観察する。
●子どもの主体性や自主性を大事にする。

大切なことは・・・・・・

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今回「早期教育」を考えるに当たって多数の文献や解説を読みました。「0歳からはじめる教育」「3歳までに○○をしないと○○は育たない」などいうメッセージを目にすると、「早期教育をしなければみんなに遅れてしまい、取り返しがつかなくなるのでは」と焦りを感じる親も多いと思います。

その一方で、子どもの将来や幸せを心から願っていて、ごく普通の子育てを目指しながら、その中でできるだけ質の高い選択をしているだけのつもりなのに、「警告!早期教育が子どもをダメにしている」などと全ての選択を否定されるのも辛いものです。

早期教育を行うこと自体に問題があるわけではなく、全ての早期教育が全ての子どもに悪い影響を及ぼすわけではありません。ただし、科学的根拠が無く、むしろ害になる可能性のある内容もあるので、冷静な判断と覚悟が必要です。

早期教育をどの程度、どのくらいやるのがいいか、量と時間の目安は、個人差もあるのでなかなか付けにくいですが、子どもの様子をよく観察して様子を見て調整するのが良さそうです。

少しでも早く、追いつく、秀でる、という気持ちではなく、親子で楽しく取り組めるようにできるとと良いですね。
参考文献:
『早期教育を考える』無藤隆(日本放送出版協会・1998年)
『早期教育をまじめに考える本』小宮山博仁(新評論・1999年)
『警告!早期教育が危ない 臨床現場からの報告』高良聖(日本評論社・1996年)
『赤ちゃん学カフェ vol.3 』日本赤ちゃん学会(ひとなる書房・2010年)
『その「英語」が子どもをダメにする 間違いだらけの早期教育』榎本博明(青春出版社・2017年)
『小児科のぼくが伝えたい 最高の子育て』高橋孝雄(マガジンハウス、2018年)
この記事は執筆時点のものですので、最新情報は公式サイト等でご確認ください。

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WRITER

志田実恵 志田実恵  エディター/ライター。札幌出身。北海道教育大学卒業(美術工芸)。中高の美術教員免許所持。出版社でモバイル雑誌の編集を経て、様々な媒体で執筆活動後、2007年スペイン留学、2008〜2012年メキシコで旅行情報と日本文化を紹介する雑誌で編集長。帰国後は旅行ガイドブック等。2014年6月に娘を出産。現在は東京で子育てしながらメキシコ・バスクの料理本の編集のほか、食、世界の子育てなどをテーマにwebを中心に活動中です。