2017年8月17日 公開

【第3回】量の意味:「大きい」のと「小さい」のがある!

小学校に上がる前に、数学的な思考力を育て、発達させるため、親子で楽しく取り組めるアイディアやポイントを伝える連載の3回目です。今回は「もつ」「さわる」「のばす」という動きを通して、「重さ」「広さ」「長さ」などを親子で一緒に体感していきましょう。

6歳までに身につける!数学的思考力のつけ方【全8回連載】

数学的思考力をつけるために、大人がキャッチしたい、子どもの【動き】とフィードバック、その後のアプローチの仕方を毎回3ステップでお伝えします。子どもが【同じ】を発見し、その【理由】探しができることをねらいとしています。

子ども発の「動き」をキャッチ~親が意識すべき発達との関係

子ども発の「動き」をキャッチ~親が意識すべき発達との関係
子どもは、無理やり何かをわからせようとするとなかなか自分から動かないもの。自分で面白くなると動き出すのです。そして自分から動かないとその子の発達にはならないのです。日常生活の中で子どもに考えさせたり、発見させたりする習慣をまずは親が意識し、身につけるためにまず知っておいてほしいことを立教大学・黒澤俊二教授に語っていただきました。

シリーズ第3回:「量」の意味に気づく!

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Alexandr III / Shutterstock.com
今回のテーマは「重い、広い、長いって何?どういうこと?」から考えはじめる【量】そのものが何かという問いと学びです。

「もつ」「さわる」「のばす」という【動き】を通して、「重さ」「広さ」「長さ」を体感し、【量】の意味を味わうことがねらいです。

注目する動きと数学的意図

●取り上げる【動き】:「もつ」「さわる」「のばす」
●数学的体験内容:「量感」「幅」「大小」「長短」「軽重」「~さ」

量には外延(がいえん)量と内包(ないほう)量がある

量は、物理学的には外延(がいえん)量と内包(ないほう)量の二つに分けられます。

外延量とは長さ、重さ、広さなど、足し算できる量のこと。内包量は、ふたつの違った量で作る量。例えば、時間と距離でできる「速さ」は内包量です。

小学校に上がる前の子どもたちにも、この違いがあることを味わっておいて欲しいのです。

ちなみに中国では内包量をさらにふたつの種類に分けています。「率」と「度」です。

例えば、野球のうまさをはかる「打率」や、銀行のお得さをはかる「利率」など、同じ種類の外延量の割合で表すことができるのは「率」です。「出席率」「混雑率」などがあります。

また、1平方mあたり何人が住んでいるか表す「人口密度」。「面積」「人数」という、異なる種類の外延量で表す内包量は「度」です。明るさを表す「照度」などがあります。

この違いまで理解するのはちょっと高度ですが、違いがあることを意識できると面白いですね。

STEP 1:とにかく「もって」「さわって」みる!

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Pavel L Photo and Video / Shutterstock.com
まずは、さまざまな種類の外延量を体感するために、直感や五感を大事にすること。

とにかく、なんでもさわってみることです。そして、子どもはなんて言うかに耳を傾けてください。

量を言葉で表現する

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Photo by Mie.S
長いことを「ういーん」「びよーん」、重いことを「ずしーん」と言うなど、抽象的で感覚的な表現があります。

大人の役割は、そういう子どもの言葉を一緒に繰り返しながらも同時に「これは長いね」「重いね」と伝える、言葉の往復運動をしましょう。この、感覚と言葉を繋ぐ作業が大切です。

まずは、「大きい」「小さい」でしょうか。「大きさ」は長さや高さ、広さも含みますが、この段階では混同していても大丈夫です。次に、長さ、広さ、重さを表す言葉をたくさん使いましょう。

「高(低)いね」「太(細)いね」「熱(冷)いね」などと、五感に訴える言葉、「かさばる」「たっぷり」「たくさん」など量感を伝える言葉をかけ、表現の幅を広げてみましょう。
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Martin Novak / Shutterstock.com

内包量も体感しよう!

4〜5歳くらいでも、内包量も体感して欲しいですね。

「この電車混んでいるね」、「このカルピス濃いね」というのは、内包量です。普段は量として意識しにくいものも、量としてみて欲しいのです。

電車の混み具合は、広さと乗車人数という外延量同士で、カルピスの濃さは水と原液の外延量の組み合わせてはかれる内包量です。

少し高度ですが、この外延量と内包量の違いに気づけたら最高です。「この部屋明るいね!」と子どもが言った時、「明るさってなんだろうね?」って言うだけでも良いのです。「照度」という内包量があることに気づきやすくなれるからです。

鉛筆などの色の濃さも内包量です。「この靴、ちょっと黒っぽいね」など「ぽいね」なんて子どもが言ったらチャンスです。こんなの【量】?と思うでしょう。ところが量のはじまりとしてみて欲しいのです。

どちらにしても、生活の中で、偶然に出てきたもので学べた方が、定着が深そうですね。

STEP2:くらべて、対立・対極に気づく

Photo by Mie.S (56273)

via Photo by Mie.S
量は変化します。ここでは【だんだん】がキーワード。「だんだん大きくなる」という変化を見せたいのです。

まずは「大きいのと小さいのがあるね」という発見から、「重いと軽い」「広いと狭い」「高い低い」「早い遅い」ものがあるね、というの発見ができるといいですね。

この「対立」するもの量の発見を、言葉の往復運動をしながら親子で楽しんでいきましょう。

対立する内包量まで意識する

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Rob Hyrons / Shutterstock.com
ここでも「速いね」「遅いね」などの内包量の違いまで意識できるといいですね。

触らせたり、見せたりする他に、動かしてみせるのも良いでしょう。

大きさの違う器をくらべてみて、「こちらの方がたくさん入るね」「こっちの方が大きいね」と発見することもあるでしょう。「こっちが大きくてたくさん入るから、体も大きいパパママ用だね」などと【量】同士の関係にも気づいていけるかもしれません。

また、ゴム紐や粘土など「のばす」と長くなりますね。これで量の変化に気がつけます。

そして、のばしてみると長さの量が変わるのに、重さの量は変わらないことがわかると、「量の保存性」や「質量保存の法則」まで見えてきます。未就学児のうちに、ここまで感覚的に理解できたら最高ですね。

ご飯を食べる時、店で商品が大きさ別に並んでいる時にも、この違いを意識しやすいものがたくさんありますよね。ぜひ声がけしてみてください。

STEP 3:ひとつのものの中には、いろんな量が入っている

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stockcreations / Shutterstock.com
この段階では、ひとつのものも多種の要素で構成されていて、関係し合っていることに気づいて欲しいのです。世の中に、ひとつの量だけで存在するものはないのでしょうか。

ひとつのものの中にも、いろんな【量】が入っているのです。同じ大きさの形でも、素材が違うものを触ると質の違いに気がつけます。

【量】には対極があり、それが内在されていてしかも変化するということです。
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Soda Productions / Shutterstock.com
例えば、ひとつのボールにも「大きさ」「重さ」がありますし、「硬さ」などさまざまな量が包括され、内在しています。

量の種類は、触っているだけではなく、動かしてみるとさらに見えてくることも。また、子どもはよくやりますが、投げてみるのもいいですね。

そして、この、いろんな量は、さらに他のものと「くらべる」と見えてくるのです。これが次回の連載でお伝えする「測定する」につながってきます。

ただ、この段愛ではただ「大きいもの」と「小さいもの」があるということ、ひとつのものには多種の量が含まれていて、関係し合っていることに気づいて欲しいのです。

<箱の中身当てゲーム>

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Odua Images / Shutterstock.com
ダンボールの空き箱などに何かを入れ、「箱の中に手を入れて触ったものを説明する」というゲームも良いですね。視覚にとらわれず、触ったり、その中で投げたりしてみることで、異なる【量】を意識できるかもしれません。

この時に、親も構えすぎずに、一緒に楽しんでくださいね。そして、あまり意図的に学習させようとするより、遊びながら、または生活の中の体験で、偶然に出てきた方が望ましいです。

物事の本質を把握できるようになるために、今意識して欲しいこと

【量】には「方向性」「包含性」「本質性」「保存性」の「四つのほ」があります。

しかし、【量】とは何かを説明できることを将来的な一つのゴールとすると、実はなかなか難しいことです。

物事の本質把握は「感覚」、「観念」、「概念」の三つから成り立ちます。この全てを理解していて、はじめて「わかっている」といえるでしょう。

「大きい」「重い」と感じる「感覚」は、個人のものです。きちんと定義を説明できなくても、他の人々の間でも共通理解でき、わかり合えるものが「観念」です。性質や定義を説明できるのは「概念」です。

小学校に上がれば、授業で「概念」を教えられるようになります。だから、未就学児のうちには、「感覚」を味わい、それを「観念」まで高める意識を持って欲しいのです。

感覚だけが鋭くても観念を意識しておかないと、感覚も深まりません。どちらが先でもいいのですが、だからこそ「言葉の往復運動」をしてほしいし、言葉のキャッチボールもしてほしいのです。

また、小学校入学後の勉強が観念や概念だけを高めるものになり、体験を伴わず、感覚が深まっていない上に積み上げても、表面だけの理解になってしまいがちです。

本当の理解とは、体験を伴い、感覚、観念、概念を言語で表現できることです。

正しいバランスで感覚、観念、概念の三つがわかる人間を育てよう、ということが狙いなのです。

だから、子どもたちには未就学児のうちに、感覚的な体験を充分に積みつつ、それを観念まで高めながら、その後、就学してからゆっくり概念を学んで欲しいのです。周囲の大人はそこを意識して欲しいですね。

次回は…

次回の第4回目は……子どもが「なぜ大きいと思うのか」という疑問と、その理由に着目することで、「測定」の持つ意味に気づく過程に注目します。大小をくらべるには、いくつかのくらべかたがあること、「くらべる」「重ねる」動きから、「較べる」と「比べる」の違い、「測定の4段階」などについてもお伝えしていきます。

(取材・文/志田実恵)

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この記事は執筆時点のものですので、最新情報は公式サイト等でご確認ください。

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WRITER

黒澤俊二 黒澤俊二  立教大学文学部教育学科教授。「かず・かたち図鑑」の監修をはじめ、子ども向けの算数の書籍を多く手がけています。幼児教育や教育心理学に関する講演も日本各地で行っています。