2019年05月14日 公開

過剰な負荷が子どもを壊す!?部活の全国大会が不必要だと思うワケ

習い事で親しんだスポーツや新たな運動に挑戦できる中学校の部活動。上達すれば、さまざまな期待や夢を抱くかもしれません。でも上を目指す余り、過剰な負荷をかけることは本当に必要でしょうか。中学校教諭時代に直面した問題から、親の皆さんに伝えたいことがあります。

習い事で親しんだスポーツや新たな運動に挑戦できる中学校の部活動。上達すれば、さまざまな期待や夢を抱くかもしれません。でも上を目指す余り、過剰な負荷をかけることは本当に必要でしょうか。中学校教諭時代に直面した問題から、親の皆さんに伝えたいことがあります。

昨今、何かと話題な運動部問題

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De Repente / Shutterstock.com
筆者は中学校の教員時代、卓球部顧問でした。が、親に「何もスポーツしてこなかったから、卓球部にでも入れば?楽そうだし」と言われたという子どもたちが、たくさん入部してきました。

「簡単で楽そう?」でも、入部してから本当の厳しさがわかるのが中学校の運動系部活動なんです……。

昨今、スポーツ界における不祥事やパワハラをはじめ、運動部における問題が、ニュース等で多く取り沙汰されています。特に中学校の部活問題は根深く、顧問教員の過重負担であったり、生徒の強制入部であったり多様です。

今回は、中学の運動部でNo.1を目指すことで起きうる弊害を中心に、子どもとスポーツについて取り上げたいと思います。

うちの子はどんなスポーツに向いている?

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スポーツの向き不向きは、努力によってカバーできる場合もありますが、子どもの成長に関するのびしろの範囲内に、その競技が必要とする条件が含まれていることが前提になります。

例えば、競馬の騎手は身長165cm以下、体重45㎏以下など、なりたくても既に条件が細かく規定されている場合があります。

また、例えばバスケットボールのように互いの体がぶつかり合うスポーツと、バレーボールのようにネットを間に挟んで、体の接触がないスポーツがあります。その子の性格に寄って、合う、合わないが分かれることも。

本人の外面と内面の適性をパパママがよく見る必要があり、わが子に向いているスポーツを見極めてすすめるのは、意外と難しいものなのです。

スポーツをはじめたばかりの子どもでも、本格的なユニフォームを買ってもらって着たりすると、気分はもうプロプレーヤー! しかも結構熱心に練習する子どもを見て、親は密かに「ひょっとしたら、プロになれるかも!」と期待したりして……。もし日本一になったら今度は世界一、次は……?と夢は膨らむ一方、なんてことも。

でも本当に、上・上・上を目指すことが、本人のためになるのでしょうか?

そのスポーツはいつまで続ける?どのレベルまで技能を高める?

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例えば、小学校から書道塾に通っていても中学生になると辞める子が多く、みんな師範格までは目指しません。

ではスポーツの習い事はどうでしょうか。野球なら小学校でジュニアまで続けた子は、中学校で野球部に入るかもしれません。では、その後高校で甲子園を目指しますか?

スイミングは、どのくらい上達したら辞めさせますか?ジュニアオリンピック選手まで?

どんなスポーツでも、夢中になって極めていくことで、子どもの平均的な骨格と筋肉の発達ではなくなります。また、テニスひじやオスグット・シュラッター病、陸上系のヘルニアなどの障害が発生する危険性も。

小・中・高校生で、リスクを負って、過剰に身体を酷使することは果たして本当に必要でしょうか?整形外科に行くと、身体を壊した子どもが治療を受けている姿をよく見かけ、なんとも悲しい気持ちになります。

No.1を決める大会の弊害とは

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甲子園球場を目指す、高校野球。素晴らしい技術やプレーを見せてくれ、その後のドラフト会議が楽しみという方も多いでしょう。

でも、地方予選を勝ち上がった代表チームの活躍が目立つ中、同じ試合数をこなしている高校があることに気がつく方は少ないのです。それは準優勝校です。

地方予選を5回勝って代表になるということは、最後に負けた学校も同じ5回戦を戦っています。どちらも、若いからと無理をして、過剰な負荷がかかっている可能性があることに変わりありません。

元巨人軍の投手・江川卓さんが、「今度投げたら選手生命が失われる」と言われても投げた話は有名です。

その後も身体を壊さず、プロに入って成功する人はほんの一握り。高校野球の晴れ舞台の裏側で選手生命を削り、大人になってから町内の草野球で投げたり、走ったりする将来さえも犠牲にして、甲子園を目指してきた元高校生は、何百万人いるのでしょうか。最近、各高校で複数のピッチャーの養成をして、連投に備えるという新聞記事を見ると、私は少しホッとします。

中学生が、試合優勝後に鍼灸をするほど体を酷使!?

私がこんなことを考えるようになったきっかけは、昔、私が出会ったある中学校の卓球部の女子生徒との出会いでした。

その女子生徒は、当時、人気卓球塾の一員。市の大会を優勝して閉会式が済んだあとのことです。驚いたのが、これから東京まで鍼を打ちに行くとのこと!15歳の女子が試合後に鍼を打たなければならないほど、体を酷使していたことにショックを受け、それがそんなに大事なのかと頭を抱えました。

幸いにもその子は高校卒業後、一般企業に就職。卓球漬けの生活を続け、その後オリンピックにも出場。福原愛ちゃんよりもっと前の選手ですが、今も幸せであって欲しいと願うばかりです。

彼女は幸せなケースかもしれません。でもあの優勝後の痛々しい姿を見て以来、成長期の子どもがそこまで体を酷使することに疑問を感じるようになりました。

成長期に、過度な筋トレは必要?

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また、こんな経験もあります。ある時、某高校の卓球部顧問から、中学生招待試合にわが校の生徒を出さないかと誘われました。その年の全国中学校大会の優勝校O中もその試合に出場すると聞き、私は頼み込んで、そのO中と試合をさせてもらうことに。わが校の生徒たちも、試合することを非常に楽しみにしていました。

しかし、試合前の選手整列で、目を見張る驚きの光景が見られたのです。わが校と同じ中学3年生だったのに、O中の生徒は、一人も身長が150cmを越えていませんでした。

一方で、うちの生徒は、みんな身長がバラバラ。体型もそれぞれで、ヒョロヒョロッとした子や大きい子もいました。対して、O中の生徒の上半身は皆、逆三角形で見事なくらいに筋肉がついており、打球の速さを想像できました。

対戦試合は監督としての予想通り、打球の早さについていけずに完敗しました。

試合後、子どもたちが興奮気味に「あんな風に強くなりたい!」と言っていたので、招待してくれた高校の先生からO中のウェートトレーニングの話を聞きました。そして、その過酷なトレーニングの話を自分の学校の生徒にも伝え、それでも強くなりたいかと聞いたところ、みんな複雑な表情をしていたものです。

大会から数日が経過して、保護者の方から手紙をいただきました。その手紙には、試合の夜に興奮気味で話をする息子と今後について話し合ったと書いてありました。親としてもできることなら強くなってもらいたいが、でも過剰な無理をしてまで練習を重ねることは、中学生のすることではない……という結論に達したそうです。その子も、もっと身長が伸びてカッコいい男になった方がいい、という気持ちに切り替わり、納得したようでした。

この出来事を機に、その年齢にふさわしい部活動の練習レベルがあるのではないかと、疑問を呈するようになったのです。

高校受験と部活の両立はなかなか難しい

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中学校の運動部で、常にNo.1を目指すことへの問題はまだ2つあります。

1つ目は費用の問題です。

「全国中学校◯◯大会」と題される全国大会の開催期日は、例年8月25日以降です。県・都大会は、7月下旬から8月上旬あたりで、関東大会は、8月のお盆のころになります。

全国大会の開催地は各県持ち回りで、県・都大会も同様です。当然、遠方になれば宿泊することが多く、子どもたちの旅費は、市や県の教育委員会が補助してくれるものの、それなりの費用がかかります。

そしてもう1つは、中学3年生の夏休みは、大会参加によって過ぎてしまうという問題です。大会を終えた後、彼らはすぐに高校受験の準備に入らなければなりません。それから受験勉強への準備が整うのか、中学校の担任としては、いつも不安でした。

中学部活の全国大会を目指すことで、高校受験という大切なイベントに、必要な力を備えられなくなる可能性があるのです。

子どもに無理がかかっていないか、よく見極めましょう

私は長年の教師生活を経て、中学校の運動部において、全国大会出場は必要ないという結論に達しました。過度な負担やトレーニングによって起こるスポーツ障害の弊害は余りに大きいのでは無いでしょうか。

私もどちらかといったらスポーツは素人の域で、監督や指導者としても、プロには程遠いレベルですが、子どもの成長や将来を潰してまで、その時期に上を目指して負荷をかける必要はないと感じるに至りました。

子どもにやる気があったとしても、過剰過ぎないか、本当にそれが大事なことなのか。親子でよく話をして、無理な目標設定ではなく現実的な目標を定めることを本人にも納得させることが大切ではないでしょうか。

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WRITER

HANA HANA