2019年9月9日 公開

学校選びの基準、英国の教育監査局Ofsted(オフステッド)とは?【英国すくすくレポ】

イギリスには、各教育機関が教育の質・生徒のニーズを満たしているか等を公正に評価する「Ofsted(オフステッド)」という監査機関があります。今月の英国すくすくレポでは、厳しい審査が有名で、学校選びにも大きな影響があるOfstedの制度についてご紹介します。

イギリス国内の教育機関は日本人学校も含め、全てが監査対象

イギリスの教育に密接に関わっているOfstedは、オフステッドと読みます。Office for Standards in Educationの略で、イギリスの教育水準監査局の呼び名です。Ofstedは、公的機関ではありますが、教育技能省から独立した準政府機関に属しています。1992年に設立され、イギリスにおける学校の教育充実度の公的指針となっています。

イギリス国内の教育機関は大学、中学・高校(セカンダリースクール)はもちろん、小学校・幼稚園や保育園等の幼児教育施設から、チャイルドセンターなどの子ども関連施設まで、すべてが監査の対象です。

イギリス国内にある日本人学校であっても、この監査を受けなければなりません。そのため、英国で日本人学校に通う際も、このOfsted評価が参考になります。

監査項目はさまざまです。生徒や教師の学習に関することや態度・質などはもちろん、学習設備からトイレに至るまで、学校設備もチェックされます。

Ofstedの監査対象は、学習達成度や学力だけにとどまりません。生徒の授業中の発言などに意欲や積極性が見られるかという生徒の能動的態度が学校の評価に結びつくこともあります。教師の指導や教育の質、教育課程の内容が基準を満たしているかなども見られます。さらに特徴的なのは、差別への取り組みや地域社会との連携性はどうかなど、多岐に渡った監査項目があることです。

監査期間は2日間程度。3年に一度の周期で行われます。また、保護者の学校経営への参画を目的とし、監査中は、保護者が匿名で学校に関する意見・要望・問題点をOfstedに伝えることができます。学校に保護者からの率直な意見を伝える良い機会でもあるのです。

短期間で改善できるような内容ではない監査結果が出た場合は、日ごろからのしっかりした学校運営や教育の向上心が求められる厳しい措置が取られます。

さらに監査の結果は公開され、オンラインで全世界から検索・閲覧することができます。次年度以降の入学希望者数にも大きな影響を与えるため、学校側としては気が抜けません。

Ofstedの評価は学校選びに欠かせない検討要素

筆者も長女の小学校入学年度が迫り、希望校を提出する際には、Ofstedのレポートを参考にしました。

同年代のお子さんを持つママ友たちとの会話にもOfstedの話題は必ず出てくるほど注目度・影響力は高いです。筆者も通学の可能性がある学校のレポートは必ず目を通して、見学会に行き、公の監査と自分の目で見た印象の両方を学校選びの基準にしました。

希望校提出は第一希望から第三希望まで書けます。Ofsted評価が「Outstanding」でとても良かったA校は、見学でも納得のいく学校(校風・設備・校長先生の印象など)だったため、第一希望に書きました。自宅のキャッチメントエリア(校区)であったB校も、良い点がたくさんあり、決して悪くはなかったのですが、A校の方がOfsted評価が上回っていたので、それだけの魅力があるように感じました。

我が家だけではなく、この年はA校への希望者が非常に多く、A校をキャッチメントエリア(校区)とするエリアに住んでいても入学することができなかった方が少なからずいたようです。

ちなみに公立小学校は入学テストはなく、学校の校区かどうか、兄弟が通っているかなどのある一定の条件を満たしている家庭から優先的に枠に入れるシステムです。

良い公立校に入学するために引っ越しまで?

知り合いの家庭の例ですが、ご長男が小学校高学年であと数年で卒業予定、その妹さんが翌年に小学校入学を控えていた時のこと。長男の学校が前回の監査でOfsted評価が下がってしまったので、妹はOfsted評価や評判の良い、別の学校に入れるべく、校区移動目的で引っ越しを検討したと話していました。少しでも納得のいく学校へ通わせたい、親の強い思いを実感したエピソードでした。

イギリスの公立学校では、そのキャッチメントエリア(校区)に住んでいるかどうかで入学の優先順位が変わるので、入学させたい学校の校区にわざわざ引っ越ししてから申し込みをするということも珍しくありません。Ofstedが高評価の学校がある地区は、家(土地含む)の価格も影響されて上がるのです!

学校の先生は胃に穴が開くような苦労も……

監査を受ける学校側のストレスは計り知れません。その結果によって、次の監査まで学校のイメージ・評判・入学希望者数などが左右されるのですから。

筆者が住むエリア近くのある学校では、校長先生が急に体調を崩されて業務遂行が不可能になり、急遽新しい校長先生が就任されました。それからまだ日がたたないうちに、Ofstedから訪問監査の通達が。

Ofsted監査の予告は通常、前日や前々日に届くので、校長をはじめ学校関係者は大慌て。こんなタイミングで監査に来るなんて、ちょっとアンラッキーすぎる気もしますよね。

案の定、まだ学校運営・業務に慣れていなかった校長をはじめ、新体制の教師軍は今までの高評価から評価を落としてしまう結果に。数年後の再監査の際には、努力の甲斐があって、きちんと評価を立て直すことができたようですが……。こうした裏事情を見聞きしていると、ちょっと同情してしまいます。

国内全ての教育機関が基準以上の質を保つために

イギリス国内のあらゆる教育機関が基準以上の質を保つためにもこの学校評価制度の仕組みは役立っているようです。

ただし、監査の内容が必ずしもその学校の姿を完璧かつ公平に映しているとはいえない場合もあります。しかし、見学に行っただけではわからない学校や教師・生徒の様子、取り組みや姿勢などがわかる貴重なデータであるのも事実。厳しい判断基準を経た公的な結果として公開されているので、学校選びには重要な役割を占めるのです。

将来、イギリスに留学をお考えの際にも役立つOfsted評価。オンラインで公開されていて、誰でも見ることができるので一度調べてみてはいかがでしょうか。
参考URL:Find an Ofsted inspection report
各教育機関のOfstedのレポート(監査結果)は、こちらから検索できます。
※いしこがわ理恵さんのイギリス漫画レポートの過去記事はこちら↓↓↓
この記事は執筆時点のものですので、最新情報は公式サイト等でご確認ください。

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いしこがわ理恵 いしこがわ理恵  在英11年目ハンドメイド好きの2児の母。武蔵野美術大学卒業。現在は教育に携わる仕事の他に、日本にルーツのある子どもたちを対象とした日本語子ども会活動・児童文庫活動も行っています。興味の範囲が幅広いので、常にいろいろな方向にアンテナをはりつつ情報収集が日課です。ハッピー子育てに役立つ情報をみなさまにお届けできれば嬉しいです。