2016年に米国で行われた国別ランキング調査「子育てしやすい国ランキング」で、デンマーク、オランダ、オーストラリアを抑えて、スウェーデンが首位になりました。子連れで日本からスウェーデンに引っ越してきて、筆者が実際に感じた子育てをしやすい理由をご紹介します。
子育てしやすい国ランキング1位に!
同様に駐在員を対象に行ったランキング調査(HSBC Expat Explorer Suvery調べ)でも、子育てしやすい国1位にスウェーデンが選ばれました。その主な理由としては、福祉国家ならではの「整った社会保障制度」と「子どもが安心して遊べる生活環境」が挙げられます。
子どもとの時間が確保できる社会保障システム
1.世界最長、16カ月の育児休暇
ママが前半、パパが後半を取ったり、1週間のうち3日はママ、2日はパパなど、仕事や学業の都合によって合わせられます。30日までなら、両親が同時に育休を消化することもできます。
育児休暇中は、月給の80%まで保障されます。この育児休暇が適応されるのは、子どもが8歳になるまで。また、育児休暇を終えても8歳までは、最大25%まで仕事を軽減することが認められています。
ちなみに筆者の場合、引越し当時、2歳と7カ月の子どもがいたので、住民登録をするやいなや、2人分の育児休暇をもらい、焦ることなく新生活をスタートすることができました。
安定的な収入もキープしつつ安心して1年以上のわが子と過ごせる育児休暇は、スウェーデンが世界に誇れるシステムです。
2.パパも育児参加しやすい
男女平等が深く浸透するスウェーデンでは、1974年、世界に先駆け、両親ともに有給で育児休暇を取得できる制度を導入。以来、男性が積極的に参加できる制度が組まれています。
480日ある育児休暇のうち、少なくとも90日は男性が取らなくてはなりません。現在、男性の育児休暇取得の平均は、約4分の1(120日間)。しかしスウェーデン政府は、さらに育児参加におけるジェンダーイクオリティ(男女平等)を推進すべく、両親が平等に育児休暇を取った場合にジェンダーイクオリティボーナスという給付金を支給します。
3.子どもの病欠でも安心して仕事が休める
子どもの看病が保障されるVAB制度
1年で寒さが1番厳しい2月は、児童の病欠も最多。VAB利用者も増えることから、2月=Februaryをもじり「VABruary」と呼ばれることも。
しかしながら、仕事と育児を両立する上でどうしても避けられないのが、子どもの病気。子どもが不調で学校や保育園をお休みとなると、もちろん親もお仕事をお休みしなくてはなりません。
そこでスウェーデンでは、子どもが病欠で仕事を休む際、政府が給与の80%を保障してくれる制度(VAB)が適応されます。
多くの企業や会社で実践されているので、VABで仕事を休むことになっても当然ながら、上司や同僚から理解や協力が得られます。女性のみならず、男性もこの制度を利用して子どもを看病することもしばしば。
この制度のおかげで、急な呼び出しで子どもをお迎えに行かなければいけないときも、気兼ねなくすぐに駆けつけられます。
子連れのお出かけが苦にならない
4.ベビーカー乗車は市内バス無料
その理由のひとつに、ストックホルムをはじめ多くの都市で「ベビーカーでの市バス乗車は無料」であることが挙げられます。ストックホルムの場合、市バスの路線や本数が充実しているので、目的地まで少ない乗り換え回数で利用できる点も魅力です。
通常、ベビーカーでの乗車時は、前方の乗車口ではなく、車両中央にある降車口から乗車し、ベビーカー専用スペースに止めます。ベビーカーでの乗車無料のもうひとつの理由として、専用スペースにベビーカーを放置したまま、料金を払いに前方運転席まで行くのは、発車時や急ブレーキの際に危険だからということもあります。
ただし、あくまでも運賃を払っている人が優先されるため、車内のベビーカー専用スペースが満員の場合は、バス停でベビーカー利用者は乗せてもらえず、次のバスを待つことになります。このように朝夕のラッシュでは不便もありますが、日中のお出かけであればバスは大変便利です。
5.子連れで使える施設が充実
ベビーカー用スロープが移動に便利
実際に子連れで街に繰り出してみると、ベビーカーや子ども同伴でも充実した時間を過ごせる配慮が至るところで見つかります。
まず驚くのは、移動のしやすさ。駅や公共施設、広場ではバリアフリーが徹底しており、エレベーターやスロープがすぐに見つかり、ベビーカーでも楽々街を歩けます。
天気が良ければ、遊具がそろった公園で子どもを遊ばせることができますが、冬が長い気候のせいか、屋内施設での子ども向け施設も充実。ショッピングセンターなどの商業施設の多くに、子どもが遊べる無料のプレイルームが設置してあり、子どもを遊ばせながら、ママ同士、買ってきたコーヒーを飲みながら談笑している姿もよく見かけます。もちろん、おむつ替え台や荷物を置けるロッカーも完備。
レストランやカフェでも同様で、必ずベビーチェアが置いてあり、小さなプレイルームやおもちゃコーナーも。チャイルドフレンドリーな環境で、パパママもリラックスして食事を満喫できます。
子連れや家族連れでは敷居が高そうな印象の図書館や美術館も、人形劇や探偵に扮して館内を回るツアーなど、遊びながら本来の趣旨に触れられるような展示ルームやイベントが随時開催されています。
大人が行く先には子ども向け施設あり。大人も子どもも楽しめる、お出かけが鉄則なのです。
6.身近な自然でアウトドアが楽しめる
思い立ったら、サンドイッチを作って家族でピクニック!というのも休日の定番の過ごし方。森を散策するほかに、夏は湖で泳いだり、晩夏から秋にかけてはベリーやきのこ狩り。雪が積もればクロスカントリースキーやそり滑り、湖上でのスケートなど、アウトドア・アクティビティには事欠きません。
なによりも近場でお金もかけずに、四季を通して外遊びが楽しめます。森の中で見つける動物や植物、大きな岩や倒木などは、子どもたちの遊び心を刺激して1日飽きずに過ごすことも。
子どもは自然の中で遊ぶのが一番と感じる瞬間です。
定着したワークライフバランス
国の将来を担う子どもたちに重点をおいた制度や家族優先の考え方など、充実した生活を送るために追求されたライフワークバランスのように感じます。「一人一人が幸せであることで、国も豊かになる」そんな一例かもしれません。