小さい子どもが集まると、頻繁に起こるおもちゃや物の取り合い。まだ自分のものと他人のものの区別がつかない頃によく起きるトラブルです。でも、泣いたり叩いたり……にハラハラしますよね。おもちゃの取り合いが起きたとき、親がどのように関わればいいのでしょうか?
おもちゃの取り合いがはじまるのはなぜ?
生後半年くらいまでは、おもちゃを取られても、目の前から無くなったことを悲しく思っても、自分のものだという所有意識はあまりないそうです。でも、その後「自分の物」という意識が強くなり、さらに、自分の物と他人の物の区別は2〜3歳頃までつきません。
気になる物や欲しい物は、すべて自分の物だと思い、遠慮なく使おうとするものです。「貸して」という言葉も意味もまだよく知らないのはもちろん、貸した後に戻ってくることも理解できないので、おもちゃの取り合いは仕方のないこと。
ほとんどの子どもが通る道であり、子どもの成長の一過程で、心が育っている証拠ともいえますね。
すぐに介入せず、まずはできるだけ見守ろう
でも、問答無用で無理やり自分の子どもからおもちゃを取り上げて相手の子どもに渡すことを優先したり、取りに行く行動を無言で抑制したりすると、子どもは理由もわからないまま気持ちが無視されたように感じるかもしれません。それではわが子の心の成長にもなかなかつながっていきませんよね。
お互いの保護者同士のコミュニケーションがとれていて、歩調が合っている場合が望ましいですが、できればまずは、何もせずに見守り、お互いの欲求を表現させてみてはいかがでしょうか。
筆者の長男も、よく他のお子さんとおもちゃの取り合いをしていました。取られてしまうことが多かった長男ですが、相手はママ友やベビーマッサージ仲間のお子さんたちだったので、「またはじまったね」「取られないようにガンバレ!」などと、声をかけあう程度で、できるだけみんなで見守っていました。その後、結局機嫌が悪くなって大変になってしまうときもありましたが(笑)。
ただし、親も子も初対面同士の場合は、とりあえず早めに介入した方が良いケースもあるでしょう。また、手が出たりなど、取り合いがエスカレートしそうな場合は、まずは距離を取らせるなどして早めに止める必要があります。
子ども同士で解決しない場合……大人の対応策は?
心の声を拾って代弁する
「お友だちのおもちゃ、おもしろそうだね。○○ちゃんも使いたくなったの?」「お友だちに使ってもいいか聞いてみようか?」など、言葉にして気持ちを探ってみましょう。
おもちゃを渡したくない場合も、その気持ちを確認して、「ごめんね。まだ使っていたいから、貸してあげられないの」と相手に説明してあげるのもいいですね。
逆に、イヤと言えず、いつもおもちゃを取られて泣いている子どもには、「イヤだと言っていいんだよ」と、気持ちを伝えていいことを教えてあげましょう。
「貸して」という言葉の意味やそれに対して「どうぞ」「ありがとう」というやり取りのルールを教えるチャンスでもあります。
「お友だちのおもちゃを使いたいときは、”貸して”っていうんだよ」「いいよ、”どうぞ”、と言われたら、使ってもいいんだよ。そのときは”ありがとう”って言おうね」など、声かけをしましょう。
約束やルールを作る
この場合、双方がその約束やルールに納得する必要があるので、大人がうまく調整を手伝ってあげられると良いですね。
また、自宅にお友だちを招いて遊ぶときなら、「お友達に触ってほしくないおもちゃは片付けておこう」と話して見えないところにしまっておけば、お友だちと上手に遊べる可能性がさらに高まりますね。
他のおもちゃや違う遊びを提案する
しかし、物への執着が強い場合や、機嫌や体調、その時々の気分で上手くいかないことも多々あるもの。その場合、さらに一工夫して、パパママが他のおもちゃで楽しく遊んでいる様子を見せることで、少なくとも片方の子に興味を持たせることに成功する場合もあります。
お互いの気持ちを考えさせる
また、おもちゃを取られて泣いてしまった場合は、「もっと遊びたかったのに悲しかったね」と、まずは子どもの気持ちに寄り添うことがポイントです。
その上で、「遊び終わったら、貸してね、と言ってみようか」「遊び終わるまで、ママと楽しい遊びをして待っていよう」と、子どもが前向きな気持ちになれる提案をしてみられると良いですね。
おもちゃの取り合いで得られる効果
おもちゃを奪って相手が泣いた顔を見て、悲しい気持ちになることがわかります。何度も繰り返すうちに、どうすればいいのかを考えはじめ、手より先に「貸して」「どうぞ」の言葉が出てくるようになっていきます。
おもちゃの取り合いは、人間関係をうまく築くための社会性を学べるチャンスなのです。いつも親が先回りしてばかりでは、社会性は育ちません。
そのためにはまず、子どもの様子を観察し、気持ちを受け止めてあげることが大切です。まずは自分の欲求が満たされていないと、相手を思いやることはできないからです。
お互いに納得して気持ち良く遊べると楽しい!
ただし、相手の髪をひっぱったり物で叩いたり、お友だちに痛い思いやケガをさせる場合は、早めに介入した方がいいでしょう。危険な行為は、してはいけないこともきちんと教える必要があります。
その上で、対応の仕方を双方の気持ちに寄り添いながら教えることも重要です。そうした経験を通して、自分もお友だちも両方が納得して仲良く遊べた方が楽しい、ということもどんどんわかってくるものです。
筆者の次男は、長男とは違い、お友達のおもちゃを取ってしまう方でしたが、あるときから相手の顔をうかがうようになりました。それからは少しずつ「貸して」や「どうぞ」を言えるように。
とはいえ、次男が7歳になった今でも、物の取り合いは起きます。我が家では次男と相手、両方の気持ちを言葉で表し、どうするのが良いかどうすべきだったのかを考えさせるように心がけて、子どもたちの成長を見守っています。
それぞれの発達や個人の特性もあり、何歳になったらうまくできるようになる、というものでもありませんが、親子共に学びながら、より良い解決の仕方を身につけていけると良いですね。