2018年6月20日 公開

幼児期のアートの大事さと取り組み方。絵画教室「アトリエ5」を取材!

3〜6歳頃の子どものお絵かきについて、東急東横線の元住吉駅近くで30年以上、絵画教室「アトリエ5」を主宰されている辻さん、講師の山田さんにお話を伺いました。子どもが絵を学ぶことについての知識や理解を深め、親の声がけの仕方、さらに作品の保存や飾り方の重要性までお伝えします。

絵画教室「アトリエ5」

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川崎市中原区、東急東横線の元住吉駅から徒歩5分に位置する「アトリエ5(ファイブ)」。

”5”は視覚や聴覚など五感を生かした表現を表しているそうです。例えば、食べ物など季節の自然のモチーフをよく観るのはもちろん、触ったり嗅いだりして理解を深め、表現することをとても大事にしています。他にも空想画、音楽を聴いて描く聴想画、抽象画や、粘土や工作など、総合的な造形活動を行っていらっしゃいます。

代表の辻 悦子さんは、京都精華大学美術学部造形学科 卒業後、公立高校の美術科講師を経て、絵画教室を主宰。幼児から大人まで、絵画や工作、デッサンなど多数のクラスを開催されています。

今回は、主に未就学児の3〜6歳頃から小学生にかけての子どものお絵かきについて、辻さんと、幼児クラス講師を担当されている山田稔子さんに、お話をお伺いしました。

アトリエ5のこども美術コース

月1回、年少(3歳〜)とそのパパママ対象の「親子クラス」、年中〜年長対象の「幼児クラス」(木・金)、小1〜6年生の「小学生クラス」(月〜水)などが開催されています。こどもたちの感じ取る力、創造する力、その時々の心の動きを大切に、自分で考えて表現する力を養うクラスを展開。画材に出会い、道具を使いこなし、色についてなどの知識も深めることができます。

お絵かきや造形遊びが幼児期に大切な理由

川崎市中原区の絵画教室アトリエ5 | 東横線元住吉・武蔵小杉・日吉駅から徒歩圏内 (102790)

アトリエ5の幼児クラス。
ーーお絵かきや造形遊びが幼児期に大切なわけを最初に教えていただけますか?

辻さん:子どもは、いろいろな画材に触れて手を動かす楽しさ、またそれが色や形になって現れることに大いに好奇心を刺激されます。何でもはじめてのことが多いこの時期に、やってみよう、もっとやりたい、という体験を繰り返すことが、探究心や主体的な学びを促してくれるのです。

子どもの表現活動は長いスパンで考えると良いと思います。絵はその時見たことや自分の考えを素直に確かめる行為です。白い紙に自分の線を堂々と描くことで、可能性を限定せずに挑む楽しさを知り、自らを肯定できる人になります。人格形成の大事な時期に、目先の目的ではなく、純度の高い表現活動で、感受性と思考力を養うのは大切なことですよ。

絵の発達のプロセスも、自分で工夫する、クリエイティブな回路を切り開いていく経験はとても大事です。誰でもできちゃうようなメソッドでその興味を奪うのはもったいないです。

「絵の具する」「クレパスする」というのも、実は「ご飯を食べる」と同じくらい、子どもにとって大事な動詞だといえるくらいの楽しさと重要性があることを、もっと世の中に広めたいですね。

子どもの絵を見た時の親の声がけの仕方でベストな方法とは?

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アスパラガスをモチーフにした作品の制作過程。「補色を組み合わせていることや真っ黒に塗ることを心配する親御さんもいらっしゃいますが、たまたまそうなった場合や、かっこいいからと思っている場合などいろいろあります。みんな実にいい顔をしていました」と辻さん。
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ーー「上手だね」「色がきれいだね」くらいしか声かけの仕方がわからない、上手か下手かもわからない、という親が多いと思います。どんな感想を口にして、どんなことを子どもに聞いて、どんなことをメモしておくと、その後の気づきに良いかなどのアドバイスがあれば教えてください。
辻さん:あまり不安になりすぎず、心配しすぎず、本当の自分の言葉で誠意を持って接すればそれで良いのではないでしょうか。わからなかったら、わからないでいいんですよ。素の自分に真剣に向き合うことです。その時、その場で思ったことを言えば良いと思います。

山田さん:子どもの絵にまっすぐ向き合ってみること、評価ポイントを探すのではなく、こちらがわからないままでも、存在丸ごとを受け入れるような心持ちが大切なのかなと思います。

ーーさらに、山田さんからは具体的なアプローチとしては以下を提案していただきました。

何を描いたかを探るより、色や形をそのまま受け取る

気づいたことをポジティブな言葉で表現すると良いのではないでしょうか。また、「色がきれいだね」でも良いですが、どんな心地がする色か考えて、五感で捉えてみると、具体的な言葉にしやすいかもしれないですね。

「上手」と言わない

「上手」ってそもそもなんでしょうか。教室では上手という褒め方はしません。発想やチャレンジなど、その子なりの表現や、その子らしさを見つけることが大事です。

「私はここが好き」を率直に伝える

具体的な言葉があると、なお良いですね。ステキだなあと思ったら飾るというのも一つの伝え方だと思いますよ。

絵を習うと上手になるの?

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「おおきなかぶ」の絵本のさし絵を手がけたことでも親しまれている、彫刻家の佐藤忠良さんが小学校の図工の教科書に寄せた文章が「アトリエ5が目指す美術教育」として教室に貼られています。
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ーー子どもの絵には、パターンやノウハウで上手く正解を導き出さないことに意味があるような気がしています。上手に見えるテクニックを身につけるよりも大切にしたいこと、幼少期にしかできない表現や良さがあるような気がするのですが…。
辻さん:そもそも上手ってなんでしょうか?教室で、子どもたちがうまくなるのはある意味当然です。でも、上手を目指させるのではなく、結果としてそうなるのです。思ったものを思ったように表現できるようになるから、と言えるでしょうか。私たちは「上手な絵の描き方」ではなく、その子自身の直感から生まれた表現が大切だと考えています。

子どもたちが描きたくなる、ワクワクするテーマを設定し、教室で過ごす時間が子どもたちにとって濃密な時間になるように全力を尽くします。そして、画材や道具の扱い方をしっかり身につけることは指導します。

子どもたちは、必死で真剣にテーマと向かい合い、常に私たちが思うよりも大きく作品を展開してくれます。そのエネルギーや尊い時間に感動して、思わずもらい泣きしてしまうこともしょっちゅうです。
山田さん:良い絵というのは、一般的には、丁寧な絵(はみ出さない、塗り残しがない)と捉えられがちで、技術的な面しか見られていない事があります。

自分で方法を考え、探る時間も必要です。そこでの挑戦や葛藤、失敗を経験することにも価値がありますし、自分の感じ方や表し方が受け入れられることで自信がつきます。また、自分とは違った感じ方や考え方を認められる経験にもなります。

また、幼少期は想像力の豊かさや感受性の純度の高さ、身体的、直感的、ライブな表現などこの時期ならではの表現があります。

子ども作品の保管はどうしたら良い?

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「アトリエ5」を主宰する辻 悦子さん。
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ーー子どもの絵や工作を取っておいて、時折眺めること、親子で見返すこと、おじいちゃんやおばあちゃんなどにプレゼントしてあげることの意味について教えてください。
辻さん:1年ごとにポートフォリオ(作品ケース)にまとめたり、季節ごとに額装して飾ったりできるといいですね。アトリエ5では、成人してからもご家庭で季節ごとに飾り続けていただいているケースも多く、ご家族としての歩みを支える役割を担っているようで嬉しいです。

わが家でも、息子が小学校1年生の頃に木炭で描いた絵を飾っていますが、家の景色の一部になっています。立体作品などもあちこちに飾っていますが、ただそこにあるだけでも、もう成人して家を出ていますが、息子の存在を感じます。子どもの時の絵というのは、今の自分にエールを送ってくれることもあるような気がします。昔の自分に恥ずかしくないようにありたい、と思えるそんな不思議な作用もありますよね。

写真に撮って、アルバムにしてまとめるのもとてもステキだと思います。数年間に渡る成長を感じられるようにするのも良さそうですね。
山田さん:子どもにとって、作品は自分の分身です。それを大切にされているということ、家族が自分の絵を気に入ったから飾ってくれているというのは、自分の存在が家族を喜ばせているという喜び、自己有用感を得られます。

また、作品集などにして見返すことができれば、成長の自己確認ができ、今の自分を実感できますね。幼かった自分を思い返す役割もありそうですね。

ーーありがとうございました!

最後に

一般的に子どもを絵画教室に通わせるというと「お受験のため?」「描き方を学んでおくのは大事よね」「完成度高い絵を保証してくれるってこと?」と言われることがあります。確かに、子どもは習わせなくても家で絵を描きますし、幼稚園や保育園にもお絵かきの時間がありますので、月謝を払って絵や造形を学ばせることに対して、そのような言葉が出てくるのもわかります。

しかし、より自由にのびのびと表現することを身に付けるには、適切な機会と場所、親の関わり、周囲の刺激も必要であるのではと思います。自分の一部を解放したり、発見する時間を幼少期から、大切にし続けることはとても大切なことかもしれませんね。
この記事は執筆時点のものですので、最新情報は公式サイト等でご確認ください。

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WRITER

志田実恵 志田実恵  エディター/ライター。札幌出身。北海道教育大学卒業(美術工芸)。中高の美術教員免許所持。出版社でモバイル雑誌の編集を経て、様々な媒体で執筆活動後、2007年スペイン留学、2008〜2012年メキシコで旅行情報と日本文化を紹介する雑誌で編集長。帰国後は旅行ガイドブック等。2014年6月に娘を出産。現在は東京で子育てしながらメキシコ・バスクの料理本の編集のほか、食、世界の子育てなどをテーマにwebを中心に活動中です。