冒険小説というジャンルの小説をご存じでしょうか。主人公が冒険を通し、困難を乗り越え成長する過程を描く小説です。冒険小説が子どもにどのような影響を与えるか、実際わが子に読ませてどのような変化があったかをおすすめの小説と合わせてお伝えします。
イギリスでは古くから親しまれている冒険小説
冒険小説はギリスでは古くから親しまれており、だれもが一度は読んだことがあるジャンルの小説です。ロビンソンクルーソー、ピーターパン、指輪物語、ナルニア国物語シリーズ、ハリーポッター、みなさんもご存じの小説が多いのではないでしょうか。イギリスだけでなく、フランスの児童文学にも良質な冒険小説がたくさんあります。海底二万里、宝島、十五少年漂流記、八十日間世界一周、どれも良書です。
海洋冒険小説や時空を超えるファンタジーなど多彩な魅力
冒険小説には、船で航海する冒険を描いた海洋冒険小説があります。イギリスでは大航海時代の影響もあり、海洋航海小説が身近です。十五少年漂流記や八十日間世界一周、宝島などがこれに当たります。船旅や海での冒険はたまらなく人をワクワクさせてくれますね。
また、時間や空間を超え異次元に迷い込んでしまうファンタジーの要素が強いもの、トムソーヤの冒険のように少年の日常を丁寧に描いたものなど多彩な魅力があるのも冒険小説の魅力でしょう。
主人公の冒険が子どもに与える影響とは
主人公と冒険を共に楽しむことにより、子どもに多くの影響を与えることができます。航海中船が難破し、無人島に降り立つことをイメージをすることで、予想外のことに工夫して対応しようとする力が身につくでしょう。
仲間と協力することの大切さにも気づかされます。サバイバル能力を身につける方法を学ぶことは、自然の摂理を理解し、理科や数学の知識にもつながるでしょう。
もちろん、実際の経験には劣りますが、小説を通してイメージするだけでも多くを学ぶことができます。具体的にどのようなことが学べるか、もう少し詳しくお伝えします。
理科、地理、歴史、算数、を生活の中でどう生かすか経験しよう
小説のなかで星空を見上げるシーンやヨーロッパの歴史を登場人物たちが語るシーン。これらを読むことで、学校の勉強とは違う角度から知識を吸収できます。
物語から知識を吸収することは子どもの知識に色彩や楽しさを与えます。また、文明社会から離れた場所では理科の知識が役立つことも理解できますね。小説を通して各教科の知識が身につくでしょう。
自立を促し、チャレンジ精神を身に着けよう
冒険小説の主人公は親から離れ、子どもだけで冒険に出かけることが多いです。主人公の冒険を読むうちに、大人の力に頼らず、自分の力で何かを成し遂げたい、やったことのないことにチャレンジしてみたいという気持ちが芽生えます。
大人に指図されることなく、自分の内側からやってみたい、と思う気持ちが生まれるのは素晴らしいことです。
仲間と協力することで達成することを学ぶ
主人公たちは仲間と協力し、冒険を続けます。自分一人ではできないことも、仲間と力を合わせることで成し遂げることができるでしょう。
時に意見が分かれたとしても、なんとか意見をまとめ協力する。これは大人になり働くようになっても必要な力ですね。
想像力がぐんぐん育つ
冒頭で述べた通り、冒険小説にはファンタジーの要素があるものも多いです。ライオンと魔女のようにクローゼットから異空間へ迷い込んでしまったり、ピーターパンのように子ども部屋から空を飛んで旅立ったり……。
奇想天外であればあるほど、子どもは目を輝かせて物語に夢中になります。楽しめば楽しむほど子どもの想像力は育つでしょう。
我が子にはどのような変化があったか
実際に多くの冒険小説を小学校中学年から読み聞かせていたわが子。どのような変化や成長があったでしょうか。
インドアからアウトドアへ、内気で慎重な性格からチャレンジ精神旺盛に
引っ込み思案で内気なわが子でしたが、冒険小説に親しむうちに外の世界へ飛び出すことに抵抗がなくなったようでした。今まで私から離れることを怖がっていたけれど、子どもだけで参加するキャンプに行ってみたいと言い出したのはきっと冒険小説の影響でしょう。
また、家族で旅行に行く際には自分で計画を立てたり、行ってみたい場所を選ぶようになりました。あまり興味のなかった大自然の中での遊びにも興味を持ち、海で遊ぶ際には「ツバメ号とアマゾン号」の主人公になりきってはしゃいでみたり。親子で自然に親しむことが格段に増えました。
長期休みの旅行を通して、さらに自然への興味が深まる
長い休みは本で得た知識を試す絶好のチャンス。大自然の中で星空を眺めたり、海で引き潮や満ち潮を見ることで、自然の驚異に目を見張ったり。
小説の中のことを実際の体験として感じていくことで、自然への興味がさらに深まったようです。冒険小説で知識や興味が深まったら、ぜひお子さんを大自然へと連れ出してあげてください。
冒険小説おすすめ7選
さて、子どもの成長に大きな影響を与えた冒険小説ですが、わが子に好評だった6冊を紹介させていただきます。
1.『ツバメ号とアマゾン号』/アーサー・ランサム(岩波書店)
1930年代イギリスの作品、シリーズ物で12作品あります。ウォーカー家の4人きょうだいは夏休みに子どもだけで帆船「ツバメ号」で無人島に向かいます。湖の中にある無人島で、テントをはり寝泊まりする生活。
子どもとは思えないほどの船の知識や自然の脅威への対処の仕方には目を見張るものがあります。やがて、「アマゾン号」に乗った自称海賊の双子が現れて……。
子どもたちを無人島へ送り出す、彼らの母親のおおらかさにも学ぶものがあります。口は出さないけれど、温かいまなざしで子どもを見守る、そんな姿勢が子どもを大きく育てるのでしょうか。
夏休み、無人島、冒険、帆船、海賊、テント、子どもだけの暮らし。ワクワクする要素がたくさん詰め込まれたキラキラした冒険小説です。
2.『ライオンと魔女-ナルニア国物語』/C.S.ルイス(岩波少年文庫)
映画にもなっているナルニア国物語はタイトルを聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。イギリスの洋館で暮らす子どもたちが、クローゼットから「ナルニア国」という架空の国へ迷い込んでしまう不思議な話です。
ファンタジー要素が強い作品ですが、子どもたちのキャラクターや成長がとても丁寧に描かれているので、リアリティーを感じます。異国のような「ナルニア国」に戸惑いながらも、生まれ育った世界の価値観と折り合いをつけながら柔軟に対応していく子供たち。
こんな力は将来海外で異文化に触れた時に役立つでしょう。シリーズ物なので、登場する子どもたちが大人になるまでの成長を一緒に見守ることがでます。
3.『ドリトル先生アフリカゆき』/ヒュー・ロフティング(岩波少年文庫)
医者のドリトル先生は大の動物好き。たくさんの動物と暮らしています。オウムのポリネシアから動物語を習ったドリトル先生は動物のお医者さんになります。そんなある日、アフリカでたくさんの猿たちが伝染病で苦しんでいるとの知らせを受け、アフリカへ出発することに。
ドリトル先生と動物たちの珍道中はとてもユニーク。はらはらわくわくの連続です。どんな状況もドリトル先生と動物たちの機転で乗り越えて行く様子は爽快です。先生の動物たちに対する温かい愛情と友情に感動します。人間同士だけでなく、他の種族とも愛や友情を育むことができる、そんなことを教えてくれます。
4.『トムソーヤの冒険』/マーク・トウェイン(岩波少年文庫)
ミシシッピー河のほとりで暮らすトムと親友のハックルベリーフィンやその仲間たちの日常がユーモラスに描かれています。子どもの目を通した世界観にかつての少年や少女だった自分を思い出し、大人も夢中になること間違いなし。殺人を目撃してしまったり、洞窟を探検して迷子になったり、冒険の要素もたくさん詰まっています。
5.『ハックルベリーフィンの冒けん』/マーク・トウェイン(研究社)
こちらは『トムソーヤの冒険』に出てくるハックルベリーフィンのお話です。飲んだくれの父親から逃げ出したハックは同じように逃げ出してきた黒人奴隷ジムと逃亡の旅に出発します。『トムソーヤの冒険』と比べると、当時アメリカの社会な問題が提示されており、テーマもより深くなっています。
6.『十五少年漂流記』/ジュール・ヴェルヌ(新潮文庫)
フランスの海洋冒険小説。あるアクシデントから15人の少年たちは無人島に漂流します。船に積まれていたものを駆使し、たくましく無人島で生活する子どもたち。自分たちの中から大統領を選出し、無人島を統治する生活は大人顔負けです。途中から新たな漂流者も加わり…。無事帰還するまでの生活がいきいきと描かれています。
7.『二分間の冒険』/岡田淳(偕成社文庫)
欧米の文学にも負けないほど素晴らしい日本の冒険小説「2分間の冒険」。多くの児童文学を出版されている岡田淳さんの名作です。
小学校から今いる世界とは時間の流れも違う異世界に迷い込んでしまう悟。クラスメイトかおりとよく似た少女と竜を倒す冒険が始まります。協力や協調性を学べる日本の小学校ならではの美点が詰め込まれています。仲間とは何か、愛と友情とは、そんなことが学べる心温まる名作です。
冒険小説は子どもを成長させ、大人もかつての輝きを取り戻す
冒険小説は子どもの成長に必要な知恵や学びがたくさん詰め込まれています。子どもだけでなく、大人もかつて子どもだった頃のわくわくした毎日を思い出すことができるのもおすすめポイント。
主人公と一緒にわくわくはらはらしながら冒険することで大きく成長してみましょう。親子で一緒に冒険小説を読み、楽しみながら成長する冒険の旅に出発してみませんか。