2024年04月05日 公開
海外の教育事例

こんなに違う!日本と海外の子どもの教育事例

「上松恵理子が語る!これからの子どもたちに必須なスキル」連載第2回は、「海外の先進的な教育事例」について取り上げます。日本と外国の教育の違い、そして日本で行われはじめた幼児教育の良い事もご紹介します。

海外の教育事例

海外と日本の教育は異なる点が少なくありません。教育とはその社会を反映するものなので当然のことと言えます。では特にどんな点が異なるのでしょうか。

「上松恵理子が語る!これからの子どもたちに必須なスキル」第2回では、個々の事例ではありますが海外の教育事例をご紹介します。

飛び級、オンライン講座… 選べる教育スタイル

海外の小学校教育

飛び級制度という言葉を聞いたことがある人は多いと思います。しかし実際には日本の公的な教育での飛び級はほとんどありません。私は海外の多くの学校を視察しましたが、視察した国で飛び級の無い国はありませんでした。飛び級というと1年生が3年生の授業を受けるというイメージがあるかもしれませんが、海外では教科毎の飛び級もあります。

個々に合わせた小学校教育の事例(米国 オクラホマ州)

ここで1つ、実例をご紹介しましょう。
私の友人は米国オクラホマ州在住ですが、お嬢さんは算数が得意だったため、小学校のクラス担任の先生が「数学だけ高校の授業を受けるように」とアドバイスを受けました。伸ばせる才能は徹底的に伸ばすという教育と、選択肢の幅が広いということで、個々に合わせた教育を受ける可能性が高いという事例です。
その際、担任の先生は多くの選択肢を提示してくれたそうです。公立高校、私立高校、無料の公的なオンライン講座、有料の企業のオンライン講座等々です。

オンライン講座を薦めた理由は、アメリカでは小学生は親が送り迎え必須であること。そして特に友人の場合、最寄りの高校は車で20分かかる場所だから送り迎えだけでも保護者の負担となるため、とのことでした。
公的なオンライン講座も複数あり、あまりの選択肢の豊富さに友人は驚いたと言います。

海外の幼稚園教育の事例

海外では日課的なものは少ない事例が見受けられ、カリキュラムが日本より柔軟に設定されていて探究のための時間や自由時間がより多く設けられています。授業時間は日本に比べて一般的にとても短いです。日本の幼稚園は、日課や時間割などを決め、体系化されたスケジュール設定があり海外と比べて授業日も多いです。

柔軟なカリキュラムの幼稚園教育の事例(米国 ボストン)

あくまでこれも一つの事例ですが、友人のお嬢さんがボストンの幼稚園に入っていました。そこでの幼稚園の授業料は年間約350万円だったそうです。日本に比べて高額なのに驚きましたが、友人は「昼には幼稚園から帰宅するし、夏休みはとても長くて3ヶ月以上あるし、春休みも冬休みもあるので休みが多い、もっと預かってくれないかな」などとつぶやいていました。

通園したら1人1台のタブレット端末を使った園生活は当たり前。園児のPC使用が当たり前のスタイルの幼稚園が存在する事に驚きました。休みには幼稚園が推奨するMIT[1]のロボットのワークショップに行ったり、アフリカのサファリやケンタッキーの農場に行って自然体験をしたりしたとのことでした。

日本の幼稚園教育も多様化する時代へ

ココアスキッズレッスン

海外の幼稚園では、常に自分の意見をはっきりと主張し表現する力を養う点が重視されます。クリエイティビティ、遊びから学ぶ、個性の確立なども教育内容に反映されているため、日本の協調性を大事にする文化とは異なった面もあります。

一方で日本の幼稚園は、家族だけの関わりから幼稚園という社会と関わるための基本的なマナーや習慣の育成に重点を置いています。これは核家族化する社会の中ではとても大切なことだと思います。

今では日本にも、海外の教育内容を取り入れた多様な教育内容を有し、日本の良い所と海外の良い所を同時に取り込むといった優れた幼稚園ができました。孟母三遷[2]で海外に移住して教育を受けるという必要もないくらいのケースもあるほどです。

日本に居ながらにして国際感覚を養える幼稚園もでき、海外だと家庭で担う体験活動も園でできるところもあります。自治体によって無償化の動きもあり、海外からみたら、この優れた内容で学ぶことのできる日本の幼児教育のコストパフォーマンスが高すぎると思われるでしょう。

注[1]MITとはマサチューセッツ工科大学(MIT: Massachusetts Institute of Technology)のことで、アメリカのエリート名門校の1つとされている。ノーベル賞受賞者は工科大学としては世界トップの受賞数となっている
注[2]孟母三遷とは子供の教育のために良い環境を選ぶことが大切と孟子の母が三度住居を移した中国の故事の教え。

▪️ライタープロフィール
上松恵理子

上松恵理子
プロフィール& 略歴
博士(教育学) 早稲田大学ビジネススクールEMBA(Executive MBA )コース修了
東京大学先端科学技術研究センター客員上席研究員(現任)
早稲田大学情報教育研究所招聘研究員(現任)
新潟リハビリテーション大学特任教授(現任)
<アドバイザー、理事、顧問>
教育における情報通信(ICT)の利用活用促進をめざす議員連盟有識者アドバイザー(2016~現任)
総務省プログラミング教育会議委員
文部科学省委託事業欧州調査主査 和歌山県ICT教育アドバイザー(きのくにICT教育アドバイザー:現任) 魚津市ICT教育アドバイザー(現任)
Asuka Academy 理事(2014~現任)
情報通信政策フォーラムICPF理事(2020~現任)
株式会社スノーピーク社外取締役(2022~現任)
COCOAS株式会社(2023~現任)

\ 手軽な親子のふれあい時間を提案中 /

この記事のライター

上松恵理子
上松恵理子

博士(教育学)の知見から、ICT教育に新リテラシーを取り入れることの研究と実践に取り組む。アジア各国より招待講演を受け、多くの海外で研究発表を行う。上松恵理子オフィシャルサイト