みなさん、こんにちは、そして、はじめまして。上松恵理子です。
こちらで数回に分けての連載として、これからの子どもたちに必須なスキルの話をしたいと思います。今回は「メディア・リテラシー」と「生き延びる力」について取り上げます。
上松恵理子
プロフィール& 略歴
博士(教育学) 早稲田大学ビジネススクールEMBA(Executive MBA )コース修了
東京大学先端科学技術研究センター客員上席研究員(現任)
早稲田大学情報教育研究所招聘研究員(現任)
新潟リハビリテーション大学特任教授(現任)
<アドバイザー、理事、顧問>
教育における情報通信(ICT)の利用活用促進をめざす議員連盟有識者アドバイザー(2016~現任)
総務省プログラミング教育会議委員
文部科学省委託事業欧州調査主査 和歌山県ICT教育アドバイザー(きのくにICT教育アドバイザー:現任) 魚津市ICT教育アドバイザー(現任)
Asuka Academy 理事(2014~現任)
情報通信政策フォーラムICPF理事(2020~現任)
株式会社スノーピーク社外取締役(2022~現任)
COCOAS株式会社(2023~現任)
「情報」とは生きていくために必須なもの
情報化社会において情報(information)は必須なものですが、現代に限ったことではありません。例えば、人類が言葉を使用するようになった理由はいくつかありますが、その 1つに危険を伝えるというものがあります。
例えば川が増水して洪水がありそうな時に、 いつどこでどんな規模かを言葉で示す必要があればそのような情報を言語で伝えなければなりませんから言葉がどんどん増えてきたのです。
今年の元日に能登半島地震がありましたがこんなエピソードもありました。90歳の高齢女性が地震で部屋の花瓶が倒れ、後片付けを必死にして、テレビもラジオもつけないでいたため、なんと大津波警報が発表されていることを知らなかったのだそうです。たまたまその場所には来ませんでしたが大津波警報が発表されていた場所でした。
このエピソードでもわかるように、情報とは生きていくために必須のものです。
子どもの育ちにおけるメディア・リテラシーの重要性
今、世界では戦争も起きています。情報が無いことが自分たちの生死を分けることもあるのです。合わせて、その情報が本当のものなのか、嘘なのかを見極めることも大事になってきています。
メディア・リテラシーとはメディアに対応することのできるスキルや教養とも言えます。 literacy(リテラシー)とは「読み書き能力」と一般的に言われていますが、これは literate(リテレイト)という言葉から来ています。
Litelateはもともと「教養がある」とか「博識」という意味で、文字の読み書きができない人がたくさんいた時代では「識字能力がある(字が読めること)」ということから来ています。道を歩いていて「この先危険」と書いてあっても文字が読めなかったら大変なことになりますね。
つまり情報が無いこと、literacyが無いことは大変なことに直結します。地震では学校もすぐに再開しないこともありました。
例えば、ウクライナから日本に避難した小学生は、 日本に居ながらにしてオンライン授業に参加し学び続けたのでした。それは日頃から学校にコロナなどで参加できなくてもオンラインで授業をする機会があったからです。
学びが止まってしまわないためにも、インターネットは危険なものとして情報を遮断することなく、インターネットから正しい情報を得ることこそが、生き抜くために必須です。
このようにテレビやインターネットなどのメディアが情報を運んでくる時代、今では文字の読み書き能力にプラス、メディアのliteracyも必要となってきました。
これからの社会に必要なのは「生き延びる力」
2000年に入ったばかりの頃、21世紀型スキルが大事だという声がありましたが、それから20年以上経ち、 現在ではOECD[1]ではEducation 2030[2]を提唱しました。
フランスのOECDに行って驚いた事は、「生きる力」ではなく「生き延びる力」という 言葉が提唱されていたことでした[3]。
私は早速、いち早く提言を日本語訳にまとめました [3]。
Education2030には、地球温暖化による災害や国際紛争などあらゆる危機に対応するために、正解の無い答えを導き出す必要があるとも記載されています。
情報を得るだけでなく、テクノロジーを活用するためのカリキュラム改革もメディア・リテラシーを醸成する上で必要となってくるでしょう。
これからの社会はメディアリテラシーが生き延びる力に繋がる大切なものだということを再認識することが必要です。
注 [1] OECD(Organisation for Economic Co-operation and Development )とは経済協力開発機構。ヨーロッパ諸国を中心に日・米を含め38ヶ国の先進国が加盟する国際機関。
[2]Education2030とは、OECDが2015年に立ち上げたプロジェクト(OECD Future of Education and Skills 2030 project)のことです。教育とスキルの未来を2030に照準をあて、 予測が困難な2030年の時代を生き抜くための必要なスキルや力は何か、そしてそれをどの ように育成したら良いかを検討するものです。
[3]教育家庭新聞記事 日本語で初めてEducation2030が紹介された記事(2018年3月5日) 当時は武蔵野学院大学准教授として紹介した。 https://www.kknews.co.jp/post_ict/20180305_1b