イギリスはペットを飼育している家庭が人口の半数以上ということを聞いたことがありますか?また、犬を飼っている家庭は日本の2倍にもあたるそうです。それくらいペットと密接な生活をしているイギリス生活において、我が家もついに犬をお迎えすることになりました。
犬の飼育は私と子どもたちにとって初めての経験。(夫は子どもの頃に飼ったことがあり経験者ではありましたが、子どもの頃のことなので覚えていないことも多々あるようでした。)生活面や経済面などで大きな変化になることは明らかで、犬を飼うかどうかは大きな決断でした。
そんな我が家が、運命の犬と出会うまで&出会ってからの生活や子どもたちの変化について、レポートしていきます!
犬を飼うまで、まさに『紆余曲折』ありました!
ペットブームの裏にある問題
犬を飼いたいと子どもが願いだしてから数年、私が犬を飼いたいと切望してから数十年(!)の年月が経っていた我が家。
その間にコロナやロックダウンがあり、ロックダウン中にペットブームが起こったことから、イギリスでの犬の値段は2~3倍に跳ね上がり、信じられないような値段が続いていました。現在、値段は少しずつもとに戻りつつありますが、まだまだペットブームは続いているようで、悪徳な繁殖業者が増えたり、ペットブームの裏で手放されるペットも増えたりと、ペットを取り巻く事情は厳しくなっています。
イギリスにはペットショップで犬を飼うことはできないので、ブリーダーさんから子犬を譲り受けるか、シェルター/個人で里親募集を見つけて引き取る方法が一般的です。とはいえ、信頼できるブリーダー探しはなかなか大変で、有名なウェブサイトを利用していても、その中に詐欺まがいの売り手が紛れ込んでいることも多々あります。とても巧妙なので、ウェブサイトの書き込みだけでは判断は難しく、直接相手と連絡をとってみてだんだん「何かおかしい」と気づいた出来事が実際に数件ありました。
また、我が家はゴールデンレトリバーを探していたのですが、人気がある犬種らしく、一番早く見学に行ける日にちを予約していたにもかかわらず、その直前に他の方が飛び込みで先に手付金を支払ったため、見学自体がキャンセルになったケースも数件ありました。犬を飼っている周りの知り合いからは「絶対に犬を実際に見るまでは、手付金は払わない方がいいよ!騙されてお金をとられたり、実際に犬やブリーダーに会わないとわからないこともあるから。」と同じようなアドバイスをいくつも聞いていたので、「まずは犬に会ってから」という姿勢は崩しませんでしたが、まずもって犬に会いに行けないという状況が続いて、心が折れそうになりました。
アドバイスを聞いておいて良かった
何件もの予約がキャンセルになったり(見に行く前に犬に買い手が見つかってしまったり、詐欺まがいだったり)で、もしかしたら、まだしばらくは運命の犬との出会いはないのかもしれないと悲しみにふけって約10か月経ったころ、ある出会いがありました。ブリーダーさんも信頼できる方で、犬をとても大切にしているのが伝わってきました。とんとん拍子で見学の日も決まり、子犬と母犬に会いに行けることになりました。
会いに行った先では、子犬が可愛いのはもちろんのこと、ブリーダーさんからのたくさんのアドバイスをいただき、ぜひこの方から子犬を譲り受けようと家族で全面一致の賛成となりました。
イギリスでは子犬の心身の健康の面から、新しい飼い主に引き渡すのは生後8週になっていなければなりません。この子犬の見学から、まだ数週間は待たなければならず、ちょうど夏休みの日本里帰りをはさんでいたので、帰国後すぐにお迎えをする予定でした。
しかし、日本を満喫していたころ、ブリーダーさんから連絡が。決めていた子犬に健康上の問題が見つかったとのこと。写真つきで状況を説明してくださり、「子どもさんたちが心待ちにしているのを知っているから、本当に申し訳ない」と謝罪してくださいました。ブリーダーさんのせいでも子犬のせいでもないので、仕方のないこと理解はしたものの、子どもたちは気持ちの整理がつかないようで、しばらく落ち込んでいました。(このブリーダーさんと、この子犬ちゃんとは今でもSNSで繋がらせていただいていて、この子犬の成長記録を見せてくださっています。健康上の問題があるので、ブリーダーさんご自身で大切に育てることに決めたそうです。)
このように、とても真摯に犬と向き合うブリーダーさんに出会えれば良いのですが、中には健康状態や問題を隠して引き渡すケースもあるそうです。そういった情報も聞いてから選んだブリーダーさんだったので、今回は最終的にご縁がなかったものの、ちゃんと信頼できる方と出会えて本当に良かったと思った経験でした。
犬を飼ってからの子どもの変化
子犬お迎えまで
そんなこんなで、子犬の譲り受けまであと2週間というあたりで、話が白紙に戻ってしまった我が家。またまた子犬探しが始まりましたが、やはり一筋縄ではいかず、ストレスを感じる場面も多々ありました。
そんな中、以前一度連絡をとったことがあったブリーダーさんのことを思い出しました。ある事情から、その方の子犬には決めなかったのですが、ふと、もう一度連絡をとってみたほうがいいような気がして、メッセージを送ってみました。すると、その方から返事があり「私もちょうど、あなたがた家族のことを思い出していたところなの。もしよかったら、一度見に来てみない?」という話になり、急遽その翌日の夕方に見学をさせていただけることになったのです。それからは、とてもスムーズに子犬が決まり、その週末に無事に新しい家族をお迎えすることができました。白とミルクティー色の混ざったゴールデンレトリバーの女の子です。名前はエミリーに決定しました!
子どもの変化
子犬をお迎えしてからは、我が家の子どもたちにも、いろいろな変化がありました。まず一番変わったことは、子どもたちが「暇」という言葉を言わなくなったことです。特に、もともとインドア派の長女は、読書やゲーム、絵を描くことが好きなのですが、以前はよく「暇だからYoutubeを見ていい?」「タブレット使ってもいい?」とモニタータイムが多めになっていることを心配していました。さらに、散歩など外に行くこともあまり好きではなく、散歩に誘っても機嫌が悪くなることもあって、手を焼いていました。
しかし、犬を飼ってからというもの、率先して犬の散歩についてきてくれるようになり、私が忙しいときにはエサをあげたり一緒に遊んだりと、犬と過ごす時間をとても楽しんでいるようす。そんな姉(長女)の姿を見て、次女もいい意味で真似をしてくれるようになり、2人とも学校に行く前に犬と遊びたいので、早起きができるようになり、宿題も早めに終わらせられるようになりました。
また、(必要な場面では)犬を優先させることができるようになりました。今までは、まずゲームを遊んでから、自分がしたいことが終わってからという優先順位だったことも、犬がお腹を空かせているから(エサの時間)、手伝いが必要だからと、犬を優先させる優しさがみられるようになったのは、親として嬉しい成長です。『人間は好きな時に好きなことをしたり出かけたりすることができるけれど、犬はそういうわけにはいかない』ということを話し合ってからお迎えしたのが、心に響いたようでした。
犬を通して広がる世界
人間関係
犬を飼っている家庭が多いので、犬を通した出会いも必然的に増えました。今までは付き合いがなかったような年齢層の方とも知り合う機会が増え、犬の話題を通して家族ぐるみのお付き合いになったご家庭もあります。私自身もたくさん学ばせていただいていて、とてもありがたい関係であるとともに、子どもたちにとっても、自分の親や祖父母ではない、他の大人の方と時間を過ごすことで、マナーを学んだり、相手からいただいた思いやりを通して今度は自分たちに何がお返しできるかを考えてみたりと、犬のことのみならず、子どもたちの世界が広がっていくのを感じています。
食育にも!?
他にも、犬が食べられるもの・食べてはいけないものを通して、子どもたちの食への関心が高まり、食育にもつながっているのは興味深いことです。人間には栄養価が高いけれど、犬が食べると毒になってしまうものもあったり、犬も人間もどちらも食べられるものを見つけたりと、食べ物のいろいろな特徴を知るのがおもしろいようです。最近では、自分では食べたことがなかった食わず嫌いのクリームチーズを、私が犬にあげたことから「私も食べてみたい」と次女が試食して以来、好物になったというできごとがありました。
犬が拾い食いをすると危険な食べ物もあることを伝えると、テーブルからボロボロと落とさないように気をつけて食べられるようになったことも、掃除をする母としては、とても助かっています(笑)。今までは何度注意しても適当な態度だったのに、大切な犬を守るためなら頑張れるものなんですね。(あれ?母の威厳は…!?)
大変なこともあるけれど…
子犬だけではなく、生き物を買うことは命を預かることだと思います。思いつきで犬を迎えるようなことは決して良くない事ですが、家族でよく話し合って合意ができたのならば、子育て中に犬を飼うことはプラスになることが多くあるように感じます。子ども達は特に『相手の気持ちを思いやることの大切さ』を犬との生活の中で実感しているようです。それが犬でも人間でも、相手の気持ちを「想像」してみる、そういった小さな行動からも、子ども達には学ぶことがたくさんあります。子どもの情緒面・感情の発達面でもメリットが大きいです。
もちろん、犬を飼うことはメリットだけではありません。長期の旅行がしにくくなったり、出費が増えたり、子犬の頃はトレーニングがうまくいかずに育児ノイローゼならぬ育犬ノイローゼのようになる話も聞きます。私も責任もってしっかり育てなければと気負いすぎたため、初期の頃にはストレスを強く感じた期間もありました。それでも、毎日くるくるの目で一生懸命慕ってくれる犬と関わっていたら、「まずは、自分にできることをひとつずつやっていこう。」と少し肩の力を抜くことができるようになりました。犬と楽しそうに遊んだり笑い合っている子どもたちの姿を見るのも、本当にかけがえのない瞬間です。
我が家の犬エミリーのようすは、インスタグラムからも発信中♪
■いしこがわ理恵さんのイギリス漫画レポートの記事はこちら↓↓↓