入試間近になると、勉強に熱が入り過ぎて、深夜まで頑張ってしまうお子さまも多いです。睡眠時間5時間程度で学校に登校して、授業中に居眠りしてしまうこともあるでしょう。
学習効果と健康を考えると、睡眠時間を削ることは得策ではありません。寝る間も惜しんで勉強することは、かえって学習内容の定着率を下げてしまいます。
適切な時間に、十分な睡眠を取ることが学習効果を高め、成長ホルモンの分泌を促進します。
また受験本番が日中であることを考えれば、早寝早起きの生活をしておいた方が良いでしょう。また睡眠時間をたっぷりとっていたとしても「遅寝遅起き」は体内時計を狂わし、結果的に試験本番の脳のパフォーマンスが下がってしまいます。
ベストな睡眠時間は低学年であれば10時間、高学年は9時間。ただ受験直前の数カ月はどうしても、根を詰めてしまうので難しいかもしれません。それでも8時間の睡眠は確保したいところ。
早寝早起きをしつつ、睡眠時間を8時間以上キープするにはどうしたら良いでしょうか?
この記事では、現在私立中高一貫校1年生の筆者の娘(塾なし&小6からの受験勉強)が、受験直前にはまった「遅寝早起き、昼間眠い生活」から、いかにして脱却したかをご紹介いたします。
受験直前の生活リズムの調整に役立つ、睡眠サイクルの整え方、睡眠時間の確保方法、睡眠による学習効果についても解説します。
頭が良くなる睡眠時間とは?「幼児~小学生の子の”脳力”を育む生活サイクル」
【体験談】過去問をやるほど不安に!就寝が23時過ぎに
娘が中学受験を決めたのは小学6年生の2学期。遅過ぎるスタートのため、詰め込み学習は避けられませんでした。
塾には行かず(ギリギリ過ぎて入塾できず)、オンライン家庭教師の指導の元、ハイスピードで6年生の全単元と4教科の中学受験テクニックを身につけました。当然、オンライン家庭教師の宿題は多く、学校の宿題と合わせると1日4時間くらいかかりました。11月中旬時点では就寝時間が23時前になる日が多かったです。
そして過去問を解くことの増えてきた11月後半~12月上旬は23時過ぎに。
学校がある日の起床時間は7時なので、8時間未満の睡眠時間となっていました。
受験日が近づくにつれ就寝は午前0時過ぎに
年が明けて、1月に入り「受験のため」学校を自主欠席する日が出てくると、就寝時間はさらに遅くなりました。
入試が近づいてくると、志望校の過去問をひたすら解く日が増えます。娘は過去問を解くほどに、苦手・弱い分野を見つけてしまい、不安が募っていきました。
特に算数は入試年度によって、得意な分野が出た年と、そうでない年があり、点数が安定しません。
わからない問題はオンライン家庭教師の先生や、私が教えていたのですが、焦りと疲れで「理解することができない日」もありました。大抵数時間続けて、根を詰めていると、娘曰く、脳が「今何をしているのかわからなくなる瞬間」があるそうで、簡単な計算ができなくなったり、国語の解説文の読み取りに集中できなくなったりしていました。
しかし、娘はわからない所はその日のうちに解決しないと気が済まないタイプ。
難しい過去問で、22時位につまずいてしまうと就寝時間が午前0時を回るようになりました。
学校のある日は遅寝早起き、ない日は遅寝遅起き
1月~2月は学校に行く日と行かない日がランダムにありました。
そのため
【学校のある日】 午前1時就寝:起床7時(睡眠時間6時間)
【自主欠席の日】 午前2時就寝:起床9時(睡眠時間7時間)
という、小学生にあるまじき睡眠サイクルとなっていました。
私が早く寝るように言っても、寝室にテキストを持ち込んで勉強してしまいます。電気を消して、無理やり寝かせても、勉強が気になるようで起きてしまっていましたね。
そのため睡眠時間が削られて、朝起きることが非常に辛そうでした。学校がある日は、無理やりに起こしていましたが、正直かわいそうでした。
その反動で、自主欠席の日は寝坊を許していました。
どちらにしても、必要な睡眠時間には足りていないために、日中眠そうになる時間帯がありました。
1月中旬時点で「このままでは受験日をベストコンディションで迎えられない」と感じ、何とかして娘の生活リズムを整えようと考えました。
生活リズム改善のきっかけは早起きから
受験追い込み期の娘は、不安のあまり志望校3校の過去問を1日中解いていました。
毎晩「今日こそ早く寝なさい。明日やれば良いよ。頭が働かなくなっちゃうよ。」
と声がけしましたが、就寝時間はやはり午前1~2時。
夜早く寝かせるのが難しいのなら、朝早く起こしてみようと思いますが、小学生の眠気は非常に強いので簡単には起こせません。
どうしたもんかと思案していると、1月下旬休日に娘を早起きさせるイベントがあったのです。それは娘の親友Kちゃんの誕生日。彼女はお菓子作りが得意でママと作ったお菓子を、私たち親子によくプレゼントしてくれました。
娘はKちゃんの誕生日に、プレゼントと一緒に手作りクッキーもあげることにしました。
Kちゃんは誕生日当日が、朝からおでかけの予定。誕生日プレゼントを渡すなら「朝8時までにして欲しい。」(Kちゃん宅は我が家から徒歩10分)と言われたそう。
子ども同士の約束の上、朝早くの来訪は迷惑なのでは・・・と思い、Kちゃんママに確認したところ、「かえって申し訳ない。うちなら大丈夫。」と言っていただけました。
当日朝5時に起きてクッキーを焼くことに。無事クッキーは完成し、プレゼントと一緒に渡すことができました。
その後、勉強をはじめた娘は17時ごろ、かなり眠くなっていましたが、追い込まれていた彼女は昼寝をしませんでした(セーフ!)。
そして21時前。自分から寝室に行き、ぐっすり眠ってしまいました。次の日は7時にスッキリ目覚めていました。奇跡。
友達のため早起きすることが、早寝のきっかけになりました。
ジョギング、バドミントンでリフレッシュ&熟睡
今後もこの睡眠サイクルをキープしたかった私は、早朝に娘の好きなことをすることにしました。
受験を決める前まで、放課後は外で遊んでいた娘は元々活動的。受験勉強のせいで運動不足になっていたことは否めません。
しかし、日中や放課後に遊ぶ余裕はなし。
早起きの習慣のために、朝6時に起きて、娘の好きなバドミントンをしたり、会話をしながらのスロージョギングをしたりしました。30分程度の運動ですが、効果はてきめん。21時から22時の間に就寝できるようになりました。なかなか寝付けず、テキストを開いて起きていることもなく、ベッドに入ったら10分くらいで入眠。朝まで熟睡できていました。
1日8時間以上眠った日は集中力と正答率が高かった
睡眠時間が8時間~9時間になった1月下旬からは、日中の学習効率が上がりました。それまでは、1日1校~2校の過去問に取り組んでいましたが、算数と社会が制限時間内で解き終わらないことが多かったです。正答率は国語90%、算数70%、理科90%、社会70%という感じでした。また22時以降は「なんでできないの~」と半ベソをかきながら、辛そうに取り組んでいることも多かったです。
しかし、睡眠を十分とってからは、4教科すべて時間内に解き終わり、正答率も全教科90%になりました。しかも解き直し、テキストの確認も集中してできるようになり、同じ時間でも勉強量が増えました。
不安やイライラを口にすることも劇的に減り、より勉強に集中できるようになりました。
受験生の「早起き」が生活リズムを整える
お子さまの睡眠サイクルを整えるなら「早く寝かせるよりも、早く起こす」ことです。夜に早く寝るように言い聞かせるよりも、簡単に睡眠サイクルを整えることができます。
早く起きることで、自律神経が整い、食欲が出て、排便もスムーズに。精神が安定し、意欲的になることで日中活動的になります。脳や身体を十分に使うことで、起床後14,15時間後には自然な眠気が感じられるように。
また起床後3時間は、一日の中で脳がもっとも活性化します。苦手科目は午前中に取り組むと集中しやすいでしょう。
学習効果と成長のために必要な睡眠時間
中学受験は将来の選択肢を広げるための大きなチャンス。そして心身が急激に発達する大切な時期です。極端に睡眠時間を削って、受験勉強をすることは、学習面、身体面両方に悪影響となります。
適切な時間、しっかりと眠ることで日中の学習内容を脳に定着させます。勉強はもちろんですが、運動・スポーツの動きの習得も含みます。
睡眠は浅い眠り「レム睡眠」と深い眠り「ノンレム睡眠」の繰り返し。この繰り返しによって日中の学習内容を整理し、定着させていきます。
深い眠りの時には知識、浅い眠りの時には論理的思考力、中くらいの深さの眠りでは運動、楽器、絵画などの技術の習得が行われているとされています。
参考資料:菊池洋匡『小学生の成績に最短で直結する勉強法』実務教育出版,2020
また骨や筋肉の成長や代謝機能に関わる成長ホルモンは、眠ってから1~2時間後に分泌のピークを迎えます。
この就寝後1~2時間に、熟睡できていることが、十分な成長ホルモンの分泌のために必須だそうです。
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熟睡のコツは起きてすぐの日光浴
人間の体内時計は25時間。1日24時間よりも1時間長めなため、睡眠のリズムがずれてしまうのは不思議な事ではありません。しかし多くの人が規則正しい生活を送れているのは、日光を浴びることで体内時計をリセットしているから。
子どもが朝スッキリと目覚めない、寝つきが悪い場合は、起床と同時に日光に当たらせると良いでしょう。カーテンを開けて、朝日を浴びさせると目覚めも早いです。
可能であれば、そのままベランダなどに出て、5分ほどぼんやりしましょう。
例えば7時起床であれば、日光浴をすることで、21時くらいには自然と眠くなるはずです。
眠気を感じる時間の目安は「小学生:起床後、約14時間後、大人:起床後、約16時間後」です。
日中に外で体動かす機会をもとう
受験勉強中は遊ぶことに、罪悪感を持つお子さまも多いかと思います。しかし勉強に集中すべきこの時期こそ、遊びが大切。特に体を動かして遊ぶことは記憶力や集中力を高める効果もあります。またじっと動かず勉強を続けていると、血流が悪くなり、筋肉も固まってしまいます。心身のリラックスのためにも、外遊びはおすすめ。
バドミントン、フリスビー、軽いジョギング、散歩、縄跳び・・・15分でも良いので、日光を浴びて、体を動かしましょう。その後の学習効率もアップします。(ゲームも適度であれば良いのではないでしょうか。)
睡眠時間も受験勉強の一部
勉強した後は良く寝ることが学力定着のコツ。「寝る間も惜しんで勉強」することは、頑張った感はありますが効率的ではありません。
2007年、ハーバード大学のジェフリー・エレンボーゲン氏が行った実験では、
「睡眠を挟むことでテストの正答率が上がる」ことがわかりました。
学生たちを2つのグループに分け、一方のグループは午前中に勉強し、12時間後の当日夜にテストを受けます。もう一方は夕方に勉強して、夜の睡眠を挟んだ12時間後の翌朝にテストを受けます。
その結果、同じ12時間後でも睡眠をとらなかったグループの正答率は69%、睡眠を挟んだグループの正答率は93%となりました。
参考資料:菊池 洋匡『小学生の子の成績に最短で直結する勉強法』P.149 実務教育出版,2020
眠ることは「学習内容を整理し、定着させる」上で欠かせない”学習”であることがよくわかります。
計画していたスケジュール通りに勉強が終わらない場合は、無理して深夜まで勉強するよりも「明日に繰越す」方が効率的かもしれません。
就寝前のスマホ、ゲームは控よう
受験勉強中は気分転換が必要。
運動、読書、ゲーム、スマホ・・・お子さまが楽しめる、リラックスできる息抜きがあることで、長期間の受験勉強も乗り切れます。
その中でもスマホ、ゲームが息抜きというお子さまも多いでしょう。その場合は就寝1時間前には、やめさせます。ゲーム、スマホ画面の光により興奮してしまい、寝つきが悪くなるからです。
「暗い寝室でスマホを見ながら寝落ち」は脳のリラックスにならないのでやめさせましょう。
受験生親子が悩む、夜食は食べてよいのか?問題
夕食後3時間くらいすると、空腹を感じるでしょう。9時~11時くらいに夜食を食べる場合は、胃への負担が少ないものを少量食べるようにしましょう。
糖分・油分が多いものは避けましょう。
娘も10時過ぎに、お腹が空いて集中できなくなっていました。
我が家では玉子スープ、ミネストローネ、野菜の味噌汁のような汁物やヨーグルトをローテーションで出していました。
おにぎりをつけることもありましたが、満腹で眠くなってしまっていました。あくまでも空腹を抑えるために軽く、が原則。
受験日1週間前までには早寝早起きにしておこう
入学試験は日中です。午前の試験であれば、自宅を出るのが早朝になることもあります。就寝時間が遅く、睡眠時間が足りていないと、頭も体もぼんやりした状態で受験することになってしまいます。
試験時間中に脳の活性をピークに持っていくためには、普段から早寝早起きの生活をすることです。
体内時計を修正し、自律神経を整えて、日中の脳と体のパフォーマンスを高めましょう。
遅くとも受験日1週間前までに、早寝早起きの習慣をつけておくことをおすすめいたします。