これからのAI社会を生き抜いていくためには、テストの点数だけでなく、自分で考え、生き抜いていく力「非認知能力」が必要と言われています。
この非認知能力は、遊びの中で養われるといわれますが、具体的にどんな遊びを取り入れればよい良いのでしょうか?
そこで今回は美大出身のイベントプロデューサーとプロの音楽家が企画に参加した、1泊2日の屋外知育ワークショップをご紹介します。プログラムはたくさんありますが、1つずつの遊びはシンプルなものですので、ぜひおうち知育の参考にしてみてくださいね。
非認知能力とは? 子どもの「生きる力」を伸ばすためにできること
子どもの五感を刺激するアクティブラーニング
残念ながら「これをすれば非認知能力が高くなる」という遊びはないのですが、子どもの能力を育むためのヒントは、たくさんの科学者・教育者から論じられてきました。
脳科学者・茂木健一郎さんの著書には以下のように書かれています。
・0〜5歳は脳の90%が完成するいわば「脳の一生の土台をつくる時期」
・この時期にやる気を高める脳内物質「ドーパミン」が出やすくなる「ドーパミン・サイクル」を完成させることが大切。
・ドーパミン・サイクルは大人になってからは作りにくい。
ドーパミンサイクルが完成することにより、好きなことに熱中し、描いた夢を実現させられる、本当のかしこさを持った子に育ちます。だから幼児期に好奇心を育て、夢中になれるものに熱中させることが大切なのです。
では、どうしたら好奇心を育てられるのでしょうか?
それには五感を刺激することが一番。五感を刺激するためには「本物の感動体験」が鍵を握ります。
親子クリエイティブキャンプとは?
今回ご紹介する「親子クリエイティブキャンプ」は、国内留学を提供するHANA’SACADEMIA合同会社(ハナサカデミア)が企画した、親子参加型ワークショップです。
・アウトプットを意識した五感体験
・好奇心と探求心をはぐくむアクティブラーニング
・達成感を得る「プロジェクト化」遊び
を意識し、本物の体験通じて五感を刺激するプログラムが盛り込まれています。
2歳〜小学生ごろの子供たちが、大自然の中で楽しむ収穫、楽器作り、ペイントワークショップなどを体験。非認知能力を養うのに適したカリキュラムを詰め込んだ、一泊二日のキッズ向けのキャンプです。
最後に全てがつながる、プロジェクト型ワークショップ
取材した「親子クリエイティブキャンプ」では、ただ受け身で体験するだけでなく、物事を体系立てて考えたり、感じたことをアウトプットすることに力を入れています。
①トウモロコシ収穫祭
深谷市といえば「深谷ねぎ」の知名度が高いですが、実は美味しいトウモロコシが採れることでも有名。トウモロコシ畑で、畑のオーナーであり、深谷市議会議員の角田さんから、とうもろこしの品種やもぎ方、注意事項についてご説明をいただきました。
トウモロコシは、小さな子どもでも採取可能。育ったトウモロコシを掴んで上から下へ引くだけ! 自分の手で農作物を採る、という経験は子ども達の印象に強く残ったようです。
②森のバーベキュー
収穫祭の後は、昼食タイム。会場を移動して、バーベキューを行いました。
通常メニューのお肉・野菜に加え、畑で採れたてのトウモロコシを焼いて食べられる、贅沢な体験です。トウモロコシは焼き、バターしょうゆ、色々とアレンジをして楽しめます。
でも、実はもぎたてトウモロコシは生でも美味しいんだとか! まるで果物のような甘味があり、とてもみずみずしいトウモロコシを、焼かずに食べる子どもたち。多い子は生のまま4本も食べていました。
③ペイントワークショップ
1日目のメインは森の中でのびのびと活動するペイントワークショップ。
壁面に貼られた紙やプラスチック板に、みんなが好きなようにペイントしていきます。道具は筆、ハケの他にスプレーやスポンジローラーなど多種多様に揃っており、好きに使ってOK。もちろん手で直接ペイントしても大丈夫です!最初は遠慮していた子ども達ですが、「今日は汚しても大丈夫だよ」と言われて徐々に大胆な遊び方になっていきました。子ども達がのびのび遊んでいる姿は最高ですね。
色を混ぜ合わせたり、微妙な色合い・濃淡を作り出し、多彩な色に触れ色彩感覚を養うことができます。また、直接絵の具を触ることにより、その触感にも刺激を受けるでしょう。
誰にも邪魔されず、ダイナミックな絵を描くことは、子ども特有の大胆な発想力を存分に発揮し、想像力や自主性を育みます。
※皮膚につける絵の具は、人体に害が少ない塗料を使用しています。
④宝探しツアー&楽器作り
ペイント遊びがひと段落したら、手が空いた子ども達は森の探検に出かけました。目的は手作り楽器の材料探し。みんなでペットボトルマラカスを作ります。
楽器作りといっても、森を歩き回って拾った宝物(小石や枝など)を入れていくだけの簡単な作業です。2歳くらいの小さな子どもでも、自分のペースで楽しめます。
小さい砂利をたくさん入れたペットボトルは、波打ち際のような音。大きな石を入れた時では、ボコボコボコ、と打楽器のような音。入れたもので音が変わることがわかり、子どもたちは目を輝かせながら遊んでいました。
同時進行で、小学生のお姉さん達はトウモロコシのひげや皮を使った衣装作りに挑戦。即興でヘアアクセサリーや洋服作りをしていましたが、少々苦戦する姿も。頭に浮かんだイメージを形にするのって、意外と難しいもの。こうした失敗と成功体験のサイクルも子供の成長に欠かせません。
ワークショップ以外でも森で遊んだり、楽器を演奏したり、好きなことをして遊べます。この日は、協力アーティストのみなさんが、リクエストに応えてさまざまなBGMを演奏してくれる贅沢な環境でした。
なお、たくさんのプログラムが組まれていますが、それぞれのワークショップに参加するかどうかは子どもの自由。全くやらなくても構わないし、途中でやめてしまっても問題ありません。子どもの「やりたい!」を一番に尊重してもらえるので、みんな自由に遊んでいました。
初日のワークショップ終了後は、バスでホテルに戻って解散。夜は無理をせず、家族でゆっくりと過ごします。
⑤森のリトミック
2日目は、ハープ奏者の山浦文友香さんプロデュースのリトミックでスタートします。本物のハープを近くで見られる経験は、滅多にないので子ども達も興味津々です。
ハープ奏者:山浦文友香さん
5歳よりピアノ、11歳よりハープを始める。東京音楽大学大学院修士課程修了。世界各地ソロやプロオーケストラなど演奏活動をする他、ハープ・ピアノ・西洋音楽史講師としても活躍する。
現在は音楽教室Salon dé Mario を主宰。
Instagram:https://www.instagram.com/ayuka_harp/
山浦さんはMESPOリトミック認定講師、音楽療法カウンセラー、子供心理カウンセラーといった資格も所持しており、音楽を通して子どもの教育にも力を注いでいます。今回はリトミックパートと、午後のコンサートパートを監修されました。
リトミックのプログラム中に、前日作成した楽器を使います。子ども達はそれぞれ自慢の楽器を使って楽しそうに伴奏をしていました。プログラム単体で参加しても楽しいけれど、他のプログラムと組み合わせていけばもっと楽しめるのが、プロジェクト型ワークショップの特徴です。
⑥ピザ作り
2日目のお昼はピザ作り!
子ども達も参加し、生地を広げて具材をのせるところから作りました。うれしいことに役作業まで自分たちの手で行えます。自分たちの手で作ったピザは、少し焦げても美味しいですね!
⑦一流の音楽家たちが集う「森の中のコンサート」
お昼休憩の後は、いよいよ最終プログラムの「森のコンサート」が始まります。
午前中のプログラムでリトミックを担当された山浦さんと、テノール歌手の出井さん、シンガーソングライターのケルトナさんも参加し、知育コンサートのスタートです。
テノール、カウンターテノール歌手:出井則太郎さん(写真:左)
東京藝術大学声楽科卒業。ドイツ、オーストリアに学んだ後、在日チェコ共和国大使館で行われたチェコ音楽コンクール入賞を機にチェコに留学。チェコ音楽、特にモラヴィア民謡を唄う唯一の日本人歌手として、全国のコンサートに出演する国際的な歌手。二児の父で、子どもの教育などにも関心を持つ。音楽を通じ子育て世代の応援活動に積極的。
Twitter:https://twitter.com/utautai_dei
作曲家、シンガーソングライター:ケルトナさん(写真:中央)
作曲編曲家、エンジニア、歌手、演奏家幼少よりギター、ベース、ヴォーカル、作曲を学び、小学5年生の時に作詞作曲を開始。現在、アイリッシュ系ポップスユニットThe Celt Gardenのメンバーとして活動し、都内のジャズフェスティバルや各地の公演に出演する。また、大手芸能プロダクションの所属タレントへの楽曲提供も行っている。
Twitter:https://twitter.com/celtna_vintage
子ども達がよく知っている音楽をピアノ、ギター、ハープで演奏。また、「世界の文化に触れてみよう」のコーナーでは、世界地図をみながら各国の民謡をみんなで歌います。
サプライズで深谷のゆるキャラ、ふっかちゃんも遊びにきてくれて、大盛り上がりでした。
今回は、途中で大人向けコンサートもはさむ贅沢ぶり。山浦さんの「お父さん、お母さんに今日連れてきてくれて、ありがとうをいいましょうね」という声かけや、その後に流れるオリジナルのママ応援ソングを聞いて涙されるママも……!
お昼ご飯も食べてたくさん遊んだので、眠くなってしまう子もいました。素晴らしい音楽を聴きながら、森の中でお昼寝なんて最高です。
⑧自然遊び
全日程を通して、基本的に「なにをしても良い」ので、ワークショップの進行にはこだわらず好きに遊んでOKです。遊具遊びあり、虫探しあり、なんでも自由だったので、子ども達にはこれが一番人気だったかもしれません(笑)
屋外ワークショップで、一番のメリットはやはり「自然と触れ合える」こと。
子どもの性格、生活スタイルによっては、屋外活動に戸惑う子もいましたが、すぐに慣れて会場を走り回っていました。
子どもたちは遊びを見つける天才。会場に置かれた丸太を横にしてバランス遊びをしたり、丸太の下にひそむ虫を探したり、何もないところでも数通りの遊びを生み出してしまいます。こうしてイマジネーションを鍛えられるのも、屋外ワークショップならではですね。
興味を持ったことに熱中させ、好奇心を育てる
興味を持ったことに熱中する機会が多ければ、子どもの好奇心が育まれます。それはゆくゆくは非認知能力を高める結果につながっていくでしょう。都会での日常は「あれはだめ」「これはだめ」という場面が多く、子どもが好奇心の赴くままに思う存分遊ぶことが難しい状況です。
時には、こうしたワークショップに参加してみると、お子さまだけでなく、ママパパも新しい気づきがあるかもしれません。また、おうちでワークショップ遊びを取り入れてみるのもいいですね。
子ども達が、表情を輝かせながら自由に遊ぶ姿は最高ですよ。
イベント企画・運営: HANA’S ACADEMIA合同会社
プロデュース: KAORI TANNO
会場: Natural Space GRIM