春の二十四節気、五番目は「清明(せいめい)」です。春の日差しが強くなり、明るくすべてのものが生き生きする頃です。日本では4月に入学式があり、新しい環境が始まる出会いの季節。渡り鳥のツバメが日本にやってきて巣作りを始め、自然界もにぎやかです。子どもと楽しめるおでかけ場所や旬の食材で作る献立もご紹介します。
二十四節気(にじゅうしせっき)って何?
みなさんは二十四節気という言葉を聞いたことがありますか? 約半月ごとに一年を二十四等分、つまり季節ごとに六つに分けて美しい名前をつけたのが二十四節気(にじゅうしせっき)です。江戸時代まで使われていた旧暦では、暦(こよみ)と実際の季節にずれが出ました。そのため生活するのに不便になり、本来の季節を感じる目安として二十四節気を用いたのです。日本には春・夏・秋・冬の四季があるので二十四節気を知っていると季節の変化を敏感に感じられ、暮らしが楽しくなりますね。
二十四節気
春分や秋分は祝日となっており、夏至や冬至は季節の変わり目の大切な日です。このように二十四節気は日常生活に密着し季節を深く知ることができます。そのため多くの行事が二十四節気をもとに行われています。
雑節
二十四節気は中国から伝わった考え方ですが、節分や彼岸など「雑節(ざっせつ)」と呼ばれる、より日本の生活に根付いた考え方もあります。
七十二候
さらに二十四節気に関連して、七十二候(しちじゅうにこう)があります。二十四節気のひとつを「初候(しょこう)」・「次候(じこう)」・「末候(まっこう)」と三つに分け、季節の移ろいを表現したものです。花鳥風月を用いた具体的なことばなので、季節をより鮮明にイメージできますよ。
【解説】春の二十四節気「清明(せいめい)」ってどんな日?
清明とは、清らかで明るいという意味の四字熟語「清浄明潔(せいじょうめいけつ)」を短く縮めた言葉です。雨水の時期に水分をたっぷり吸い込み目を覚ました新芽が、驚くほど早く成長するのが清明の時期です。
桜前線も北上し全国的に桜も満開に、草花はみずみずしく咲き誇ります。動物や昆虫の活動も活発になるのでお出かけが楽しくなる時期です。
また日本では4月に入園式や入学式があります。学生は新しい学年に進級したり、引っ越しなどで環境が変わる人が多いですよね。新しい出会いが増えるこの時期、清明の名の通りすがすがしく清らかな気持ちで迎えましょう。
【いつ?】2024年の清明は4月4日から
それでは2024年の清明はいつでしょうか? 清明は春分(しゅんぶん)から穀雨(こくう)の間で、春分から数えて十五日目頃にあたります。2024年は春分が3月20日だったので、今年の清明は4月4日から4月18日までとなります。
暦にはずれが生じるため、二十四節気は毎年固定の日ではなくその年により前後します。暦のずれについては、毎年2月に国立天文台が翌年の暦要項を発表しているので参考にしてください。
七十二候(しちじゅうにこう)で「清明」の季節を知る
それではより季節を感じられる七十二候で、清明の季節の移ろいを解説しましょう。
■ 初候/玄鳥至る(つばめ きたる)
渡り鳥のツバメが南からやってくるという意味です。玄鳥とはツバメのことです。ツバメは渡り鳥なので寒くなると南の国へ行き、暖かくなるとまた日本へ戻ってきます。
七十二候・第十三候(2024年4月4日~8日)
■ 次候/鴻雁北へかえる(がん きたへ かえる)
冬の渡り鳥であるガンが北国へ去っていくという意味です。南から帰ってきたツバメとは逆に、ガンは暖かくなってきたこの時期に程よく寒い北国シベリアに帰ります。
七十二候・第十四候(2024年4月9日~13日)
■ 末候/虹始めて見る(にじ はじめて あらわる)
はじめて虹がかかる頃という意味です。春は恵みの雨が多く降る時期。虹は太陽の光が空気中の水滴に反射してできるもので、大雨のあとほど美しい虹が見られます。虹の漢字に「虫」がついているのは、虹は神様が作った美しい蛇だと考えられていたからだそうです。
七十二候・第十五候(2024年4月14日~4月18日)
いかがですか?少しずつ春の深まる様子が鳥や自然を通して伝わってきますね。
【豆知識】文学からみた二十四節気「清明」
二十四節気は春の季語として俳句や短歌、手紙を書く際には時候の挨拶にも用いられています。清明の時期だと「清明の候」「ツバメが南からやってくる季節になりました」等、文頭に使ってみてもいいですね。
この季節をわかりやすく表現した俳句を一句ご紹介します。
【作者】鈴木真砂女(すずき まさごじょ)
清明の 水菜歯ごたへ よかりけり
引用元 : https://idea1616.com/seimei-haiku/
水菜を噛む音が心地よく清らかで明るい清明のころにふさわしい野菜である、という意味です。二十四節気を知ると、俳句の繊細な季節感がイメージできますね。
また春の季語「朧月夜(おぼろづきよ)」は春の夜を指します。薄い雲におおわれた月がぼんやりと見える様子で、しゃきっとした清明の時期にぼんやりとした朧月夜という趣ある組み合わせが風情があってよいですね。
旬な食べ物・花や鳥
生活環境が変わるこの時期、自然界も動きが活発です。本格的なシーズンはまだ先ですが、清明の頃になると潮干狩りができ、たけのこ堀りやいちご狩りなど春の味覚狩りは盛んになります。清明の時期に旬の食べ物や花鳥風月で、すがすがしい季節を感じてみましょう。
食べ物
果物 : いちご
魚 : かつお・さより
昆虫・生きもの
鳥・花
鳥 : 雁(ガン)、燕(ツバメ)
その年にはじめてとれた野菜や果物、魚のことを「はつもの」と言います。そして、はつものを食べると七十五日長生きすると言われています。清明の時期、冬を越えた後に初めて食べるカツオを「初ガツオ」と呼び、江戸時代の人々は縁起物として好んで食べたそう。初ガツオは戻りガツオと違い、脂が少なくさっぱりとしているので「カツオのたたき」がおいしいですよ。ぜひ旬の食材を意識して取り入れ、元気に暮らしましょう!
清明の時期の過ごし方
清明は晩春に入り雨が多い時期ですが、草木の明るさからか気持ちが和みます。そんな時期におすすめの過ごし方をご紹介します。
・春の歌を歌おう
ツバメがやってくるこの頃はツバメのさえずる声やウグイスの鳴き声など、鳥たちがまるで歌うように鳴く声が聞ける時期です。春の歌には「春が来た」「春の小川」「さくらさくら」「朧月夜(おぼろづきよ)」はママパパも歌えるのではないでしょうか。子どもと一緒に歌詞の意味を考えながら歌ってもいいですね。
・野山へ遊びに行こう
大昔の中国では、清明の季節になるとみんなで野山に遊びに行く風習があったそうです。この頃には道端の草花もかわいらしく青い小さな花が咲く「オオイヌノフグリ」や「レンゲソウ」「オオバコ」など身近な草花の名前を図鑑で調べても楽しいですね。
清明に関連した催し「御清明(ウーシーミー)祭り」
沖縄県の「御清明(ウーシーミー)祭り」をご存知でしょうか。沖縄のお墓参りのことで「清明祭(シーミー)」とも呼ばれます。お盆やお彼岸のようなとても大切な伝統行事で、清明の時期に行われます。
もともとは18世紀ころに中国から伝わった風習です。中国の「清明節」は国民の祝日である大切な日で、その前後含めて連休になります。古来よりこの時期にお墓参りやお花見をする風習があり、これが沖縄に伝わり清明祭となったと言われています。清明の頃には雨が多くなるので、それに備えて1年風雨にさらされたお墓の周りの掃除やメンテナンスをし、ご先祖様にご加護と平和を祈ったという説もあります。
また清明祭は沖縄の三大行事のひとつとも言われる大切な先祖供養の行事です。親戚全員が集まりお墓参りのあと、みんなで宴をして過ごせるようにお墓の前には広いスペースが設けられています。まるでピクニックのようだと言う人もいます。地域による違いもありますが、ウチカビと呼ばれるあの世でのお金やお線香、お菓子やお餅やお節料理のような重箱に入った料理をお供えします。そして肉や魚を蒸したものを食べながら酒を飲み、沖縄の三線(さんしん)という楽器を弾いて歌ったり踊ったりします。
清明の時期にある行事「花祭り」
4月8日は「花祭り」です。これは仏教の開祖であるお釈迦様の誕生日を祝う行事で「灌仏会(かんぶつえ)」とも呼ばれています。仏教系の幼稚園や学校では大切な行事として親しまれています。花祭りの日はお寺の境内や本堂に花で囲まれた「花御堂(はなみどう)」が作られ、中央に置かれたお釈迦様にひしゃくで甘茶(あまちゃ)をかけて祝います。
お釈迦様の像は右手で天を左手で地をさしていますが、これは生誕の時に「天下唯我独尊(てんげゆいがどくそん)」つまり“命あるものはすべて、それぞれに価値があり、大切にされるべきである”と言ったからだと伝えられています。そして甘茶をかけるのは、“お釈迦様が誕生した時、龍が天から降りてきて、甘露(かんろ)と呼ばれる霊水(れいすい)をふらせて産湯(うぶゆ)をつかわせた”という伝説からきています。
花祭りは参加しやすい仏教行事で、東京都・池上本門寺や福井県・永平寺などが有名です。神奈川県の川崎大師では毎年4月1日から8日までを「花まつり週間」としてお釈迦さまのお誕生をお祝いします。期間中には参詣者に甘茶が接待されるので行ってみてはいかがでしょうか。この日は近所のお寺をのぞいてみるのもよいですね。
清明の時期に開催される催し「春の高山祭(山王祭)」
岐阜県高山市では毎年4月14日、15日に「春の高山祭(山王祭)」が行われます。立派な屋台がねり歩き、たくさんの人が訪れます。屋台に仕掛けられているからくり人形の動きが細やかで、重要有形民俗文化財および重要無形民俗文化財に指定されており、全国から人が集まる人気の催しです。
高山祭は16世紀後半から17世紀が起源とされ、春の「山王祭」と秋の「八幡祭」の2つの祭をさす総称です。岐阜県にたくさんある桜の名所でもちょうどこの時期に見ごろを迎えます。それもあり「山王祭」は高山に春の訪れを告げる祭と多くの人に親しまれています。
子どもと楽しむ清明
二十四節気はその季節がどんな時期かという目安です。せっかく四季のある日本で暮らしているからこそ、それにちなんだ知育や子育てにつながる取り組みをおうちでも行ないたいですよね。清明の時期に子どもも楽しめるような、食べる、作る、体験するアイディアを紹介します。
清明に旬の食べ物でつくろう、食べよう!
昔から旬のものを食べると健康に暮らせるといわれています。清明の時におすすめの、旬の食材を使った献立はいかがでしょうか。
啓蟄の献立
今回は子どもと簡単に作れる「いちごプリン」の作り方を紹介します。卵を使わずにゼラチンで固めるので、手軽にできておすすめです。
「いちごプリン」
<材料・2人分>
・ゼラチン 5g / 牛乳50ml
・いちご 4粒
・牛乳 100ml
・生クリーム 30ml
・飾り
いちご、ミント、いちごジャム、フルーツなどお好みで
<作り方>
1)ボールにいちごをいれてフォークでつぶす
2)1)に牛乳、生クリーム、砂糖を加えて混ぜる
3)耐熱ボールに牛乳50mlをいれてレンジで50秒くらいかけ、温まったらゼラチンを加えてよく混ぜる
4)2)と3)をよく混ぜ合わせてカップに移したら冷蔵庫で冷やし固める
5)お好みで飾りつけをする
参考:https://www.morinaga.co.jp/recipe/detail/1049
本当に簡単なので小さな子どもも一緒に作れ、火を使わないので年長さんくらいならひとりで作れそうですね。いちごジャムは手作りして添えてもおいしいですね。
ペーパークラフトで作ってみよう!
清明の七十二候にもある虹、虹を見ると幸せな気持ちになります。そんなレインボーカラーの気球のペーパークラフトを作ってみてはいかがでしょうか。また入園式や入学式の記念写真で思い出のスクラップブックを手作りするのも素敵です。お友達に写真だけプレゼントするより、スクラップブックにしてプレゼントしたら喜ばれそうですね!
ペーパークラフト(気球 ミニ) – Canon Creative Park
スクラップブック(入学式) – Canon Creative Park
季節を感じにおでかけをしよう!
暖かくなってきたら人間だっておでかけしたくてうずうずします。春の花が咲く公園に行ったり、道端の草花を図鑑で調べたり、春の味覚狩りをしても楽しそう。
・たけのこ堀り
春の園の行事でたけのこ堀りに行ったり、八百屋さんには皮付きのたけのこが出回り始めます。たけのこの成長は早く、ほんの二か月で竹に成長します。そのため4月初旬から4月中が旬だと言われています。名古屋市にある大高緑地は無料でたけのこ堀りができますが、入場料を払って収穫体験ができる施設もあり、こちらは道具の貸し出しもあるので便利です。限られたこの期間に子どもと収穫の喜びを味わってみませんか?
・いちご狩り
いちご狩りのシーズンもピークを迎えます。農林水産省の作物統計によると、栃木県、福岡県、熊本県、静岡県、長崎県の順にいちごの生産量が多いそうです。東京の世田谷区にもいちご狩りができる農園や横浜市には「東京ストロベリーパーク」という一年中いちご狩りができる施設もありますよ。とれたてのいちごはおいしいですし、ミツバチを放して受粉する様子も見ることができるかも!
参考:http://kisetsumimiyori.com/ichigoranking/
・草花の図鑑
子どもに尋ねられても、道行く草花の名前は意外と知らなかったりしませんか?名前を知ると季節を感じるきっかけにもなるので、草花の図鑑をもって散歩に行くのも楽しいですね。
【まとめ】春の二十四節気「清明」は春の活動が始まる頃
いかがでしたか?清明が少し身近に感じられたかと思います。まだ春の雨や春の嵐もありますが、草木の色が鮮やかになり心も明るくなる季節。もし二十四節気に興味を持てたら、こんなかわいい本もありますよ。
啓蟄の次の節気は「穀雨(こくう)」です。ちょっぴり気まぐれな春の雨が降る頃。穀雨までの期間、おすすめの清明の過ごし方を参考に楽しい春休みをお過ごしください!