「ハーバード卒、IT企業管理職」というようなバリバリのキャリアウーマンが、突然仕事をやめ専業主婦へ。そんな「会社に使われない生き方」を選ぶ女性が増えています。アメリカ発の話題の本から世界中に議論を巻き起こしている「新しい主婦のかたち」について考えてみましょう。
新しい生き方?「ハウスワイフ2.0」とは
著者 :エミリー マッチャー(著)/森嶋 マリ(訳)
出版社 :文藝春秋
「ハウスワイフ」とは「主婦」のこと。「2.0」とは「新しいバージョン」を示す言葉です。従来の主婦「ハウスワイフ1.0」に対応する概念が「ハウスワイフ2.0」であり、エミリー・マッチャーの書いた『ハウスワイフ2.0』から世間に広まった言葉です。
この本には、エリート大学を卒業後、官公庁や一流企業でバリバリ働いていた女性が、ふとしたきっかけで仕事をやめて専業主婦として新しい生活をはじめる……そんな実例がたくさん掲載されています。
家政婦じゃない!「人生を楽しむ選択」としての主婦
「ジャムをつくり、編み物をするなど田舎暮らしを満喫する」
「SNSやブログで情報発信し、ワークシェアや起業にトライしている」
「家事・子育てのすべてを自分でやるのではなく、夫やシッターと分担する」
などなど。
古くからある専業主婦のイメージとは異なる、積極的に人生を楽しむ姿がうかがえますよね。
「肩の力を抜いて生きる」というスタイル
そうした姿勢は、見方によっては大量消費社会に対するアンチテーゼといえなくもありません。しかし彼女たちは、それを社会に向かって声高に主張するようなことはしません。
「わたしは自分の生活を楽しむためにこういう生活を選んだのよ」と、あくまでも個人的な人生の選択の結果としての「ハウスワイフ2.0」であることを自覚し、のんびりと楽しんでいるんです。
「ハウスワイフ2.0」は「フェミニズム」の表れ?
この点は「ハウスワイフ1.0」と決定的に違うところです。価値や情報を他者と共有し、その活動が収入にもつながるという生き方は新しい価値観の表れにも思えます。
でも『ハウスワイフ2.0』の著者は「これは新しい価値観ではなく、フェミニズムの表れだ」と考えています。昔のフェミニズムは「男性社会における女性のキャリア獲得」という意味でした。現代では「自由な選択の結果としてキャリアよりも主婦を選んだ」ことが、女性の権利拡張をうたうフェミニズム思想にぴったりだというのです。
「仕事か家庭か」ではなく「人生を楽しめるか」
というのも、フェミニズムは「女性の権利を広げよう」ということがテーマですが、『ハウスワイフ2.0』に登場する女性たちは、「主婦業を選んだという自分の選択は正しいのか?」という価値判断に思い悩み、苦しんでいるわけではないからです。
むしろ、「どうすれば主婦業を、人生を楽しめるか?」ということに彼女たちの関心は移っているのではないでしょうか。みなさんはどう思われますか?