よく食べ、よく遊び、よく寝る。子どもらしく豊かな日々を送るために、親として大切にしなければいけないことは? 福岡県の高取保育園の一年を追ったドキュメンタリー映画「いただきます~みそをつくる子どもたち」には、子育てのヒントや気づきがたくさん詰まっています。
映画「いただきます~みそをつくる子どもたち」
給食は地元で採れた無農薬の野菜、魚、玄米などを中心とした和食に。園内でも園庭でも季節を問わず裸足で過ごす園児。園の外に出かけるときは、岩山などの自然の遊び場へ。よく食べ、よく遊び、よく寝るという、子どもが思いっきり子どもらしく生きる姿が高取保育園にはあります。
「いただきます~みそをつくる子どもたち」は、そんな高取保育園の一年を追ったドキュメンタリー映画です。制作されたのは2016年。西日本を中心に自主上映会を重ね、多くの反響を呼び、ついに劇場版として2017年10月7日(土)より渋谷アップルリンクをはじめとする全国で順次公開されることになりました。
毎月100㎏ものみそを仕込む園児たち
毎月のようにやってくるみそづくりは、イベントではなく、まさに“仕事”。誰かにやらされるわけでもなく、真似事をするわけでもなく、子どもたちは進んで自分たちの手でみそをつくるという責任を果たしていきます。
このみそづくりは、年長さんの仕事。毎年、時期がくると「みそ伝達式」を行い、下のクラスの園児にみそのつくり方を伝えます。こうして、高取保育園では代々みそづくりが受け継がれているのです。
和食の力で身体を整え、恵みを知り、感性を研ぎ澄ます
ある日の給食のメニューが映画の中で紹介されていました。
・切り干し大根の炒り煮
・玄米ごはん
・白菜のみそ汁
・納豆
保育園での給食は和食が基本。肉や牛乳は一切使いません。認可保育園として、自治体が定める栄養価基準をクリアするために、肉や牛乳に頼らず献立を考えるのは相当な工夫が必要です。高取保育園では、豆類や小魚、海藻を積極的に摂ることで、不足しがちなたんぱく質やカルシウムを補っているそうです。
給食を、巧みに箸を使っておいしそうに頬張る子どもたちの様子がとても印象的でした。みんなもくもくと、夢中で食べています。
野菜は根っこも皮もそのままいただくと言います。食事を作ることや食べ方で、食材を無駄にしないことを子どもたちは学びます。季節感あふれる彩豊かな食材、さまざまな食感、におい。食事の時間を通して、子どもたちの敏感な感性は刺激され豊かに育っていきます。子どものたちの生き生きとした姿から、そのことが伝わってきます。
パパもママも忙しい現代の家庭では、一から手作りした和食を毎日のように食卓に並べるのはなかなか難しいことかもしれません。実際、筆者宅では、夕飯はカレーやハンバーグという日もかなり多いです。筆者自身は肉や牛乳も含めて食材をバランスよく摂取することをよしとしてきましたが、映画にある「一生懸命食べる子どもの姿」に、園長の西福江さんが説く「家庭の和食力」の話に、日々の食事の大切さを改めて気づかされ、和食を中心とした食事を心がけたいと思いました。
子どもを育てるということは?
そんなパパやママにこそ、この映画を見てほしいです。
子育てには、躾や教育だけじゃない、もっと大切なことがある。それは、子どものために毎日の食事を心をこめて用意してあげること。身体にいい、おいしい食事をつくって、いっぱい動いて遊ぶための丈夫な身体をつくってあげることが、何より大事なのだと、この映画では伝えています。
おいしい食事を目の前にすれば、おのずと出てくる「いただきます」の挨拶。色鮮やかな野菜、できたての料理の香りでいろんな感覚を刺激し、お腹いっぱい食べることで満足感を得、ぐっすり眠る。そして、思いっきり遊ぶ。心身ともに健やかでなければ遊びも勉強も真剣に取り組めません。映画で流れてくる高取保育園の様子に、子育ての原点を見たような気がしました。
子どもを育てながら、子どもたちが生きる未来をより良きものに
子育ては、子どもが未来を元気に生き抜く力を与えること。その基本が食事をはじめとする、日々の生活にあります。この映画に出てくる子どもたちの笑顔はとてもまぶしかったです。わが子もこんな風に育てたい。素直に共感でき、子育ての悩みや迷いが晴れるような、そんな映画だと思います。劇場公開を機に、ぜひ鑑賞してみてください。
2017年10月7日(土)より、アップリンク渋谷ほか全国順次公開
【クレジット】
(C)イーハトーヴスタジオ