身近な存在を亡くしたときなど悲しみに直面した際、お子さまに「死」についてパパママが伝えることは難しいものです。そんなとき絵本の読み聞かせで、親子で一緒に考える機会を作ってみてはいかがでしょうか。柔らかい表現で、ときにユーモアを交えながら生命の大切さや死について、あらたに気づいたり伝えられることがあります。そんな絵本を紹介します。
おじいちゃんがおばけになったわけ
著者:K・F・オーカソン(文)、E・エリクソン(絵)、菱木晃子(訳)
出版社:あすなろ書房
亡くなったはずのおじいちゃんがエリックのもとに戻ってきました。なんと、おばけになって…。でも、どうしておじいちゃんはおばけになってしまったのでしょうか。
おじいちゃんは孫のエリックに、若いころの出来事やエリックとの思い出を語りながら、おばけになった理由を思い出そうとします。
我が子とおじいちゃんとの別れ、自分と祖父母との別れに思いをはせ、読み聞かせながら涙があふれてしまうパパママもいるでしょう。
小さな子どもにとって難しい「死」。しかし、おじいちゃんとエリックの会話を通じて、自然と死について理解することができます。ユーモラスな雰囲気で表現されているので、小さな子どもにもぴったりです。
わすれられないおくりもの
著者:スーザン・バーレイ(作)、小川仁央(訳)
出版社:評論社
ある日年老いたアナグマが亡くなり、森の動物たちは悲しみに暮れていました。しかし、動物たちはアナグマさんとの思い出を語り合ううちに、気持ちがいやされていくことを感じます。
おじいちゃんやおばあちゃんなど近しい身内の方が亡くなる経験は、小さな子どもにとって大変なことです。中には「死」を受け止めきれず、大きなショックを受けてしまう子どももいます。
この絵本の中で語られていることは、「身近な人を失ったとき、どう乗り越えるとよいのか」ということ。大人にとっても重たいテーマですが、温かいストーリーとやわらかなイラストで優しく表現されています。
大人が読んでも心にジーンとくる作品です。
悲しいだけじゃなく優しい気持ちになれる絵本
著者:ハンス・ウィルヘルム(作)、久山太市 (訳)
出版社:評論社
「ぼく」の愛犬のエルフィーが亡くなりました。ぼくはとっても悲しい気持ちになりますが、エルフィーのことをとっても愛していて、その気持ちをいつも伝えていたからか、いくらか気持ちがラクだったのです……。
おうちで犬や猫など動物を飼っている方は多いのではないでしょうか。しかし、動物と生きていく以上、死別は避けられません。子どもにとって、おうちで飼っている動物の死はとても悲しいものです。
また、動物だけではなく人間もいつか必ず亡くなります。そのときに後悔しないため、全力で愛し気持ちを伝えることが大切なのだと教えてくれる絵本です。
悲しいテーマを扱っている作品ですが、読み終えた後はほっこりと優しい気持ちになれますよ。
死を前向きに考えられる絵本
著者:ヨシタケシンスケ
出版社:ブロンズ新社
おじいちゃんの死をきっかけに、「ぼく」は死ぬということについて考えます。そんなときおじいちゃんが書き残したノートを開いてみると……。
重くなりがちな「死」というテーマを、ヨシタケさんらしい明るく前向きな語り口で表現しています。
「死は怖いもの」ととらえるのではなく、「精一杯生きよう!」と前向きな気持ちになれる絵本です。子どもが「死」について考えはじめたときに読んでみてはいかがでしょうか。
絵本で考える生と死
命について子どもに伝えることは、とても難しいテーマですが、やはり大切なことです。
死は非日常的なことと大人の私たちはとらえがちですが、子どもの日常生活には案外身近に死が存在します。飼っていた魚が死んでしまったり、遊んでいた拍子に虫をつぶしてしまうこともあります。また、何気なくみているテレビのニュースでも死についての報道は多いものです。
特に家族や自分にとって身近な存在の死に直面した際には、子どもの心のケアも心配です。とはいえ、生と死について子どもと向き合うのは、とても難しいことと感じます。
パパママが自分自身の言葉で子どもに生と死について伝えるのも素晴らしいことですが、絵本を通じて親子で一緒に考えてみる、というのも良いのではないでしょうか。
今回ご紹介した絵本は、どれも重くなりすぎず、生と死について大切なことを優しく伝えてくれるものばかりです。親子で読んでみてください。