いつまでも寝ない子に忍び寄る鬼やお化け、また「悪い子はいねが」のセリフで知られる秋田のなまはげなど、しつけの一環として用いられる想像上の怖いキャラクターはさまざま。メキシコでは、いい子にしていないとこんな怖いモノがやってくるのです。
メキシコの子どもをたしなめるときに出てくるおばけとは?
筆者は「ココ」という語感で「ココドゥリロ=ワニ」を思い浮かべていたのですが、「エル・ココ」とは、昔からメキシコのパパママが、子どもをしつける際に用いる、悪い子をさらっていく怖いオバケのことでした。
エル・ココとは一体なに?
しかし「エル・ココ」は、メキシコだけではなく、ラテンアメリカ各国からイベリア半島まで広く言い伝えのあるオバケで、その原型はケルトの影響を受けている、という記述もありました。
かつてはハロウィンのかぼちゃのような、目と口の3つの穴をもったオバケのイメージで、ココナッツ(スペイン語でココ)は、ココナッツの実が熟すと、下記画像のように顔にも見える3つの穴を持つことから、オバケのエル・ココが語源となっている、と見る言語学者もいるようです。
Duérmete niño, duérmete ya, que viene el coco y te llevará.
(寝なさい坊や、もう寝なさい。さもないとエル・ココがきて坊やを連れていきますよ)
さらには、新月の日にだけ現れる、というバージョンもあるよう。こちらは、嘘つきの子どもの元にやってきて、子どもたちを袋に入れて「せっけん」に変えてしまうのだそうです。
共通したイメージがない不思議な存在
イメージを探してみると、スペイン人の画家ゴヤが描いた1枚の絵が出てきます。
そこで、メキシコ人の持つエル・ココのイメージとはどういったものなのか、と周囲に聞いてみたところ「影のようなもの」とか「これ、という何かがあるわけではないけれど、ただ怖い存在」という回答でした。
日本人にとっての鬼のように「目がぎょろっとしていて牙がある」といった、共通したイメージはないようなのですが、その分、個人の想像の中で膨らんで怖さも倍増、ということなのでしょうか。
エル・ココ以外にもいる、こんな怖いキャラクター
また、「サカマンテカ」という、ちょっとおどろおどろしい民間伝承もあります。直訳すると「脂肪を取る人」という意味です。若者や女性の脂肪から作った軟膏やせっけんを使うと、健康や美を保てると聞いた人間が、夜な夜な人をさらっては脂肪をとっていったという昔の都市伝説がベースです。
遅い時間まで子どもが外を出歩いていると、「サカマンテカに連れ去られるから早く家に帰りなさい」などとたしなめたようです。前述したエル・ココの新月に現れるバージョンは、サカマンテカの都市伝説の影響を受けたもののようですね。
イマドキの子どもたちにだって効果絶大
すると驚いたことに皆「もちろん!」と答えるのです。1人は9歳の息子さんがいるママなのですが、「だいたい小学校高学年までは怖がるから、まだまだいける」のだそう。
小さいころからスマホで、アプリや動画に触れ、現実とも仮想ともつかないようなリアルなイメージを目にしている現代っ子たちは、「エル・ココが来る!」なんていっても「古臭い」と思って怖がらないものかと思っていた筆者にとって、これは意外でした。
世界共通で、民間伝承で古くから伝わる「怖いモノ」の威力は、簡単には失われないものなのですね。
過度に子どもを脅かしてしつける必要はもちろんありませんが、こういった昔ながらの怖いキャラクターを使って、子どもに危ないこと・やってはいけないことを教えていくのも一つの方法なのかもしれません。