子どもの学校生活がはじまると避けては通れないPTA活動。頭を悩ませている保護者も多いと聞きますが、イギリスのシステムではどうなのでしょう?ちょっと気になる海外の学校事情をイギリスに的を絞り、イラストと文でお届けする【イギリス学校便り】連載第6回目です。
イギリスの小学校のPTAってどんな感じ?
イギリスにもPTAってあるのでしょうか?答えは、ズバリ「あります!」
呼び方はいろいろあって、PTA(Parent-Teacher Association)と呼ぶところもあれば、学校のイニシャルや名前を使った独自の呼び名で呼ばれることも。ですが、活動内容や参加方法などの詳細は違えど、ほとんどの公立の学校では、似たようなシステムがとられているようです。
まず、PTAの役員・メンバー決めについて。学校に入学した時点で、保護者は自動的に「PTAメンバー」という扱いになります。しかし、役員というわけではなく、このメンバーの時点では、義務も特定の役割もありません。
次に、PTAで話し合いをして物事を決めたり、決定事項や告知を保護者へ発信するメンバーがPTA役員です。こちらは立候補して加入します。筆者の通う公立の小学校では、役員は6名、会長・副会長・セクレタリー(秘書)などの役職があります(学年ごとではなく、全校合わせてそのメンバーで活動)。
その他の保護者は、PTA役員としての活動をしない代わりに、PTA主催で行われるイベントにお手伝いをするという方法で貢献します。
たとえば、ケーキを校庭で売るイベントをする際、ケーキ作りが得意な保護者は、ケーキを焼いてそれらを寄付する方を選択。ケーキ作りはイマイチ……という保護者は、子どもをお迎えに行ったときに、ケーキを購入する側として貢献します。もちろん、ケーキを売る役割も必要なので、これに参加するのもありです。
苦手だったり、時間の関係でできない仕事をイヤイヤするのではなく、自分が得意なこと・できることを保護者が選んでPTA活動に参加できるなんて、とても良いアイデア!と、ここでも合理的なイギリスを感じます。
ところで、「PTA役員が見つからない年度ってないのだろうか?」と素朴な疑問が……。役員さんに質問したところ、「ありがたいことに、立候補者が今まで見つからなかったことはありません。みんな忙しいから、負担にならないように工夫しています。たとえば、話し合いはなるべくメッセンジャーを活用するとかですね」とのことでした。
また、イギリスはボランティア活動に参加することが日常生活の中に根付いているので、誰かのために活動することに抵抗がないことも理由の一つではないでしょうか。
PTA会費ってあるの?資金集めはどうしてる?
日本の学校では「PTA会費」がありますが、イギリスではPTA会費に該当するものはありません。
その代わり、PTA主催のイベント(サマー・フェアやクリスマス・フェアなど)や、母の日や父の日のプレゼント販売、夏の間には金曜日の放課後にアイスクリームを買うことができる「フローズン・フライデー」という日が筆者の娘が通う学校にはあり、その売上金額が資金として貯金されていく仕組みです。
サマーフェアなどのイベント開催前には、子どもたちが私服で登校できる「ノン・ユニフォームデー」が設定されていて、そのときに各自1ポンド(約150円)を学校に持参して募金したり、チョコレートバーなどのお菓子を持っていき寄付します。それがイベント当日のくじ引きの景品になるのです。
このように、子どもが楽しみながら気持ちよく寄付できるシステムなので、資金集めはとてもスムーズ。なかなか上手いなぁ……と感心せずにはいられません(笑)。
PTA活動の最大の目的とは?
「PTA活動の最大の目的はなんですか?」と、役員さんに聞いてみたところ、「それは、やっぱり資金集めです。PTAで集めた資金で購入・出資できるものはないか?と学校からリストが来るので、その中からどれを選ぶか役員間で話し合います。最近は、ノートパソコンやiPadの購入、校庭のカゼボ設置に出資しましたよ」とのことでした。
その資金集めのために、今年はどんなイベントや校内販売を行うかを年間通して話し合うのだそうです。
ところで、イベント開催時に保護者に人気の食べ物があります。それは、クリームティーのセットです。クリームティーとはスコーンと紅茶のセットのことなんですが、これが毎回よく売れています!
子どもたちがアイスクリームなどを食べている横で、大人がスコーンと紅茶でマッタリ……。とってもイギリスらしくて、この光景が大好きです(もちろん資金集めとしても大成功していますよ!)。
PTA以外にもボランティア参加で学校と関わります
PTAとは直接関係ないのですが、保護者が学校・クラス活動が手伝うために募集されるボランティアがあります。それが「ペアレンツ・ヘルパー」です。
これは、音読リーディングや工作の時間、その他の学習時間に子どもたちをお手伝いするというもの。毎週決められた時間に継続して通うものもあれば、単発でお手伝いをするものもあります。
イギリスの学校は教科書を使いませんし、授業参観というものもありません。ですから、学校で子どもが一体何をしているのか?と気になることもしばしば……。
このボランティアに参加すれば、わが子の学習内容や学習態度を見ることもできるので、普段お仕事をしている・していないに関わらず、ボランティア活動の時間が合えば、参加する保護者の方も多いです。
学校と親との関係にストレスがないのが魅力!
義務的に強制されて大変……という印象がなく、「できることを、できる人が、できるときに、できる方法で」関わっていく考え方が根底ある、イギリスのPTA・ボランティア活動。
この「無理はしないけど無関心ではない」姿勢は、忙しい現代にも合っているように思います。PTAの最大の目的である資金集めは、子どもたちの教育環境をより良くするために行われており、そのために効率よく、そして気持ちよくどう保護者が関わっていくかという工夫が見られたのが印象的でした。
取材・文・イラスト:いしこがわ理恵
在英13年目の2時の母、ライター兼イラストレーター。武蔵野美大卒。現在は英国で日本語教育・日本語子ども会活動にも従事。海外生活・育児経験を活かした記事を執筆中。
※いしこがわ理恵さんのイギリス漫画レポートの過去記事はこちら↓↓↓